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シワに悩まない未来が、きっとある。

シワ。年齢とともに顔に刻まれ、数が増え深くなるのは避けられない…。しかし、今、「シワを改善する」という効果をうたう化粧品が相次いで販売され、大きなヒットとなっています。さらに化粧品各社は新商品に向けた技術開発を一段と加速。“人工皮膚”でシワを見えなくしてしまおうという研究も進められています。「いつまでも若々しくありたい」という人の気持ちが、化粧品を大きく進化させようとしています。(経済部記者 影圭太/寺田麻美)

“シワ改善”化粧品って?

梅雨明けしたばかりのこの時期、化粧品業界では早くも秋冬商品の発表が始まっています。

その中で注目を集めている商品が、化粧品大手「コーセー」がこの秋に発売する美容液とクリームです。注目されるわけは、“シワ改善”の効果をうたっているためです。

ビタミンの一種「ナイアシンアミド」という成分が、肌の角質層とその奥にある真皮層に働きかけ、シワを改善するとしています。価格は、百貨店向けの美容液が税抜き1万円、ドラッグストア向けのクリームが5000円程度で、会社としては幅広い年代に向けて売り出したいとしています。

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コーセーの“シワ改善”商品

執行役員の原谷美典さんは、「消費者にシワを改善したいという潜在的なニーズがあるのは明らかで、この商品をきっかけに新たな顧客の確保につなげていきたい」と意気込みます。

きっかけは医薬部外品としての承認

こうした“シワ改善”の商品が登場するようになったのは、きっかけがあります。

以前は薬事法に基づいて、化粧品には、決められた一定の結果が得られたものでも「乾燥による小じわを目立たなくする」という効能表現しか認められていませんでした。しかし、おととし以降、厚生労働省が、効果と安全性が認められた商品を医薬部外品として承認することになりました。これにより、承認を受ければ“シワ改善”を効果としてうたえるようになったのです。

これを受けて去年1月に「ポーラ」が国内で初めて“シワ改善”効果をうたう美容液を発売。次いで「資生堂」も去年6月に“シワ改善”クリームを発売し、今回3番手としてコーセーも参入したというわけです。

「シワ改善市場」が新たなフロンティアに

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ポーラの美容液

ポーラの場合、発売から1年余りで売り上げが121万個に上る異例の大ヒットとなっています。ことし6月からは台湾や香港でも販売を始めました。

資生堂は、“シワ改善”の効果にプラスしてシミ予防や美白効果をうたう商品も出し、9か月間であわせておよそ240万個を出荷しました。

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資生堂の美容クリーム

みずから多くの化粧品を試している美容ライターの中嶋教子さん(56)によると、こうした商品を実際に使ってみたところ、「久しぶりに会う仕事仲間からも、『シワが減ったんじゃない!?』と言われた」と効果を実感したと話しています。

そのうえで「女性のシワへの悩みも改善し、自分に自信が持てるようになる。今後は高齢化にともなって“シワ改善”への需要は拡大していくだろう」と指摘しています。「シワ改善市場」は、化粧品各社にとって新たなフロンティアになっているのです。

人工皮膚でシワ消し?

さらに激しくなりそうな競争の裏側で、実は今、その構図を大きく変えるかもしれないと言われる商品の開発も進められています。

資生堂が開発する「人工皮膚」を応用した化粧品です。シワやたるみの上に、人工的に作った皮膚をかさねて覆ってしまおうという発想で、肌に塗ることでシワを改善するというこれまでの化粧品とは全く違うものです。

しかし、人工皮膚ってどんなものなのでしょうか?。ことし6月、資生堂から許可を得て、その技術を見られる機会がありました。対応してくれたのは、新分野の研究開発を進めるグループの高橋秀企さんと福原和人さんの2人。残念ながらTVカメラでの取材はNGでしたが、人工皮膚を作り出すプロセスを見せてくれました。

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左から福原さん、高橋さん、筆者

数分で完成!?

人工皮膚を作るには、2種類のジェル状の素材を使います。具体的な素材については企業秘密とのことでしたが、まず1種類目のジェルを手の甲に塗り、その上にすぐもう1つのジェルを塗り重ねます。作業はたったこれだけ。すぐに化学反応が起こり、皮膚の上に薄い膜ができあがります。

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人工皮膚をはがす様子(提供写真)

「完成しました」と言われましたが、肌の色と変わらず、どこに人工皮膚ができているのかわからないほどでした。ここまでかかった時間はわずか数分。人工皮膚の感触を確かめようと板の上に貼られたものをはがしてみましたが、ぴりぴりと少しずつめくれ、日焼けした皮膚がむけていくのに近い感覚でした。

シワに悩まされない未来があるかも

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この人工皮膚の技術は、もともとは皮膚科学の世界的権威も参加して設立されたというアメリカのベンチャー企業が持っていたもの。この技術に将来性を見いだした資生堂の開発者のグループが社長に直接進言し、ことし1月にこの技術を買い取りました。資生堂では、この技術をもとに新たな化粧品の開発を進めていて、2020年までの商品化を目指しています。

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資生堂 高橋秀企さん

高橋さんは「人工皮膚の技術を活用すれば安心で即効性がある化粧品を実現できる。シワ対応はもちろん、美白や加齢対応、それにやけどや傷の跡を覆うことなど、いろいろな展開ができると期待している」と話します。

肌のさまざまな部分を人工皮膚で覆い、帰宅したらそれを剥がすーーそれはもう私たちがイメージする化粧品とは別物になっていくような気もします。多くの人の悩みを解消することこそビジネスにつながると、きょうも化粧品メーカーの開発は続いています。その先に、大きな技術革新があり、もしかしたらシワに悩まされることのない未来があるかもしれません。

影 圭太
経済部記者
影 圭太
山形局 仙台局をへて経済部
自動車や金融業界を担当
現在 日用品や素材メーカーを取材
寺田 麻美
経済部記者
寺田 麻美
平成21年入局
高知局をへて財務省を取材
現在 流通・食品業界を担当