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メルカリCEOはテック界の野茂英雄になれるか

インターネットを通じて利用者どうしが中古品などを売り買いできるフリマアプリを運営する「メルカリ」が、東京証券取引所のマザーズ市場に株式を上場しました。創業から5年、後発ながら事業を急拡大させた山田進太郎CEOがNHKのインタビューに応じ、今後の目標をテック業界の野茂英雄と銘打ち、アメリカ、さらには世界での事業展開に強い意欲を示しました。(経済部記者 野上大輔)

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山田進太郎CEO

1977年愛知県瀬戸市生まれ。早稲田大学在学中に楽天で「楽オク」の立ち上げを経験。卒業後、起業家として「ウノウ」を設立し、インターネットサービスを数多く手がける。2010年にアメリカのベンチャー企業「Zynga」にウノウを売却。2012年に世界一周旅行を経て、2013年2月、メルカリを創業。

山田進太郎氏が2013年に創業したメルカリは、運営するアプリの国内のダウンロード数が7100万件、去年1年間の国内の流通総額は約2900億円にのぼり、フリマアプリとしては最大手です。

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さらに、自転車のシェアリングや、語学学習や習い事のスキルのシェアリングサービスなど幅広い事業を展開し、日本では数が少ない、未上場で時価総額が1000億円を超えるいわゆる「ユニコーン企業」に成長し、今回の上場も投資家の高い関心を集めました。

Q:現在の成長スピードは想像していたか?

「最初は確信をもってやってきたわけではなくて、メルカリのアイデアは当たれば大きいけど、空振れば三振する可能性も高いモデルだと思ってやっていました。メルカリ登場前の中古品売買のネットサービスだと、パソコンを立ち上げて、サイト開いて、入札から購入まで数日間とか、時間をかけてやっていくスタイルでした」

「ただ、ちょうどスマホの普及が一気にきて、簡単に写真を撮って、出品できるようになり、買いたい人が早い者勝ちで買う仕組み作りにしたのが大きかったと思います。消費者の間で、中古品売買が増えて、シェアリングエコノミー(個人間の取り引き)の波にもうまくのっかることができて成長できたかなと思っています」

アメリカを制するものが世界を制す

メルカリは創業から間もない2014年9月からアメリカ全土で、去年3月にはイギリスでも事業をはじめるなど、グローバル化を目指しています。山田氏は月の半分をアメリカなど海外で事業の指揮をとっていて、上場で得た資金も主に海外に振り分ける戦略です。

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Q:今後の事業展開について

「いまはアメリカに集中していきます。ITでいえば、アメリカで普及していないサービスが世界的なブランドになるのは考えにくいかなと思っています。フェイスブックにしてもグーグルにしても、ソニーでもトヨタでも、アメリカで成功してからそれで世界的な認知にたどり着いています。アメリカは競争も激しい難しい市場でわれわれもまだ赤字でやっていますが、まずは、そこで受け入れられるか、この1点です」

「その先についてですが、会社としてはいわゆるアフリカや南米などの新興国まで個人間取り引きの市場をつくっていきたい考えはあります」

テック業界の野茂英雄に

Q:日本発でグローバルを目指すことの難しさは?

「私自身は日本で前も会社をやっていたし、インターネットサービスをどうつくっていくかでみると、すごくやりやすい環境はあったので、必ずしも日本だからダメってことはないかなと思っていますね。世界に進出するにはキッカケとか試行回数がいちばん大きいと思っています」

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「例えば、野球でいったら野茂英雄さん。はじめはメジャーリーグに通用するわけないと言われる中でアメリカに出ていって、成功をおさめた。そうすると、『じゃあ自分も!』って人が出てきて、いまでは大谷翔平さんみたいにアメリカでも驚きを持って迎え入れられるケースが出てきました。サッカーだって同じです。いまは海外のビッグチームで活躍するのは当たり前。いろんな日本企業がチャレンジして、成功するってことが増えてくれば、どっと増えてくると思っているのでそんなに悲観していません。自分たちとしてはかつての野茂さんのように、ITの領域でその先べんをつけたいと思っています」

迷ったら大胆に!

Q:さらなる成長に向けて気を付けていることは?

「バリュー(=価値)の浸透は気をつけてやっています。『Go Bold』=『大胆にやろう』というバリューを掲げて最も大事にしています。『どんな大胆なことをあなたはするんですか?』っていうのが社員の評価にも組み込まれていて、これを重視して評価の指標にしています。大胆にやってもらうので、もちろんそれに伴って現場に権限をどんどん委譲しています」

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Q:具体的には?

「例えば、仕事を進めていく上でA案とB案があって迷った場合は、必ずより大胆なほうを選ぶことを社員には徹底させています。大胆なほうをとって、それで失敗してもいいと。なにもやらないとか、普通のことやっても普通の結果しか返ってこないから、評価はしません。失敗してもいいし、会社のお金だろうが失敗したこと自体が資産だと思っていますので、より大胆なほうを選択するようにと。自分のためだけに仕事するかたは評価されない。この考えに合わないかたは他に転職することもあるし、そういった形で会社の文化的なものをつくっていきます」

次の「ゲームチェンジ」に向けて

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スマホアプリの競争は年々激しくなっていて、アイデアだけでは勝ち残れないとみられています。山田氏もメルカリがこの先、成長を続けるには、技術への投資を行い、テクノロジーによる差別化をはかることが必要だとしています。

Q:新しい技術の誕生、それに伴う次のゲームチェンジについていけるか?

「いまは本当に2年とか3年のスパンで新しいテクノロジーが出ていて、デバイスの変化もけっこう大きなトレンドなので、動向は細かく観察しています。VRとかARみたいな技術はショッピングの体験を変えるとか、出品の体験を変えるとか、われわれのビジネスに大いに関わる可能性があると考えています。われわれも大学の研究機関や外部の企業とも協力する研究開発の組織を去年12月に立ちあげました。今後はテクノロジーでイノベーションを起こして会社を成長させる会社にならなくてはいけません」

「検索だったらグーグル、SNSならフェイスブック、個人間取り引きならメルカリ、みたいな存在になるという野望を持ってやっていきます。そのためにはいかに優秀な人材を取り込めるかにかかっています」

先駆者になれるか

メルカリは外国人社員の採用にも積極的で、ことしはインド工科大学から30人を超える学生が入社する予定です。山田氏が目を向けるアメリカは中古品の売買で日本より10倍の市場規模を持つと言われ、競争が激化しています。そのアメリカで成功し、テック業界の野茂英雄として、この分野の日本発グローバル企業の先駆者になり得るのか、山田氏の経営手腕が問われることになります。

野上 大輔
経済部記者
野上 大輔
平成22年入局
横浜市出身
金沢局を経て
現在、情報通信業界を担当