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そのストロー、本当に必要ですか?

アイスコーヒーがおいしい季節となりました。お店で飲めばプラスチック製ストローが、注文しなくてもついてくると思います。ストローが無くても飲めるはずですが、あれば便利。そんなプラスチック製ストローを飲食店が提供することを全面的に禁止する動きが、アメリカの自治体の間で広がっています。スターバックスやマクドナルドなど大手チェーンも対応に大わらわ。なぜ禁止しなければならないのでしょうか。
(ロサンゼルス支局記者 飯田香織)

脱プラスチック

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カリフォルニア州マリブ。美しい海岸が広がり、国内外から大勢の海水浴客が訪れ、サーフィンポイントとしても知られます。

そのマリブ市が6月1日、全米の主要都市としては初めての措置に踏み切りました。 飲食店が使い捨てのプラスチック製ストローを客に提供することを全面的に禁止したのです。

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当日の朝、マリブ市内にあるスターバックスを訪れたところ、アイスコーヒーに添えて渡されたのは紙ストローです。プラスチックのスプーンやフォークなども禁止の対象で、仮に違反すると、1回目は100ドル(約1万1000円)、2回目は200ドル、3回目は500ドルの罰金が飲食店に科されます。

禁止の理由は、美しい海や砂浜の汚染を食い止めるため。
マリブ市のリック・ムレン市長は「知名度の高いマリブがプラスチック製ストローを禁止すれば、皆がこの問題に注目する」といいます。

心配するには理由があります。

地元のサーファーは「波乗りしているとストローなど、プラスチックのゴミのかたまりが浮いていて、最近、そのかたまりが大きくなっている」と話していました。
確かに砂浜を歩いていても、使い捨てられたストローを数多く見かけます。

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7月1日には、西海岸のワシントン州シアトルが同じようにプラスチック製ストローの提供禁止に踏み切ります。
サンフランシスコやニューヨークなどの市議会にも5月、市内の飲食店がプラスチック製のストローの提供を禁止する条例案が提出されました。

なぜストロー?

プラスチック製といえば、コップやテイクアウトのコーヒーのふたなどいろいろありますが、なぜストローが禁止の対象なのか? そのきっかけは、カメの鼻にプラスチック製ストローが刺さった動画が拡散したことでした。

動画12 秒

アメリカで消費されるプラスチック製ストローは毎日、実に5億本。国民ひとり当たり約1.6本という計算です(環境保護団体の試算)。
また、あまりに小さいため、リサイクルが進まず、海に廃棄されて海洋汚染を招いていると指摘されています。

パスタストロー

20年前からマリブの海岸沿いで営業しているカフェでは、市の禁止措置に先んじて4月からプラスチック製ストローの使用をやめました。

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代わりに使っているのはパスタ!
ブカティーニと呼ばれる、真ん中が空洞の少し太めのパスタをストローとして提供しています。ゆでると柔らかくなりますが、冷たい飲み物では4時間、しゃきっと形を保つということです。

カフェのオーナーのロバート・モーリスさんは「パスタのストローは、成分が分解されるので環境に優しい。ある日、午前3時に思いついたんだよ」と話していました。すでに6万本以上を提供し、お客さんにも好評ということで、イタリアからの輸入を増やしています。

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ほかにも、ガラス製、ステンレス製、竹製など、さまざまな”マイストロー”も出回っています。しかし、プラスチック製からの切り替えが最も多いのは紙でできたストローです。

うれしい悲鳴の紙ストロー会社

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マリブ市が市内の飲食店に数百本ずつサンプルで配ったのは、アメリカ中西部インディアナ州のメーカーが作っている”メイド・イン・アメリカ”の紙ストローと、隣国カナダにある会社が中国のメーカーに製造を委託している紙ストローです。両社とも、アメリカのレストランやバーなどから引き合いが強く、うれしい悲鳴をあげています。

取材のため、カナダの会社を訪れた際、ちょうど倉庫から最後のひと箱を出荷するところでした。

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オーナーのフィリップ・ジャコブセンさんは「この6週間で、それまでの6か月分の紙ストローが売れた」と驚いた様子でした。

トイレットペーパーの芯のように、紙をぐるぐる巻く作業に手間がかかるため、価格は、およそ1円のプラスチック製ストローに比べて3倍以上するといいます(カフェによりますと、パスタのストローは2~3円)。
それでも、お客さんから要望があった場合にのみ、ストローを提供すれば、飲食店の採算は十分、合うはずだと主張します。

イギリス全土でも禁止へ

プラスチック製ストローの提供を禁止する動きは、アメリカに限りません。

台湾はことし2月、来年からプラスチック製ストローを飲食店などが提供することを禁止すると発表しました。
さらにイギリスのメイ首相はことし4月、プラスチック製ストロー禁止の方針を打ち出し、ほかの国にも追随するよう呼びかけています。

企業も対応に大わらわ

企業も対応に追われています。
マクドナルドとスターバックスは、イギリスで5月から試験的に紙ストローを採用しています。アメリカのマリブとシアトルの全店舗でも対応。

ただ、自主的にどこまで踏み込むかは、企業しだいです。
5月24日に中西部イリノイ州で開催されたマクドナルドの株主総会。世界の約3万6000店舗で毎日9500万本が使われているとして、株主がプラスチック製ストローの禁止を求めました。「対応しないと顧客離れが進み、企業価値が毀損する」というわけです。

しかし、約8%の賛成しか得られず、認められませんでした。
それでも消費者からはマクドナルドに対して、アメリカでもイギリスと同様の対応をとるよう求める声が高まっています。

一方、ヒルトンは5月23日、世界650のホテルで、プラスチック製ストローを年内にやめると発表しました。条例や法律で縛られなくても、企業は消費者や顧客の視線を意識せざるをえなくなっているのです

反発も

もちろん、みんながプラスチック製ストローの禁止に賛成しているわけではありません。

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マリブでスムージー専門店を経営するカリル・ラファティさん。
スムージーはシャーベット状で、吸い込むのに太いストローが不可欠ということで、「市販の紙ストローでは強度が足りず、特別に注文するにはコストがかさむ」として反発しています。

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それでもしかたがないと、商品の値上げ覚悟で紙ストローを採用する予定ですが、6月1日には間に合わず、ストローなしでスムージーを提供していました。

カリフォルニア州議会では現在、「客から要請されない限り、飲食店はストローを提供してはならない」という法案が審議されています。
いわば”オンデマンド”方式で、現実的な手法として全米のほかの都市も検討中です。

店内に置いてあると、つい手に取ってしまい、大量消費、使い捨ての象徴にもなっているプラスチック製ストロー。日本でも飲食店で広く提供されていて、牛乳やジュースのパックについていることも珍しくありません。

そのストロー、本当に必要ですか?

飯田 香織
ロサンゼルス支局記者
飯田 香織
1992年入局
京都局、経済部、
ワシントン支局などをへて
2017年夏からロサンゼルス