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バーガー戦国時代 本場から進出続々

ハンバーガーといえば、ファストフードの代名詞…だったはずですが、いまやそのイメージは過去のものになったかもしれません。本場アメリカから人気チェーンが次々と上陸。こだわりの肉質、価格は1000円など、「安い早い」とは一線を画すバーガーが登場。これには国内大手も黙って見てはいられないと、デフレ時代の戦略を転換しています。 およそ20年ぶりの「ハンバーガー戦国時代」と言われる現場からは、今の世相もかいま見えてきます。
(経済部記者 長野幸代)

黒船襲来 続々と

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4月、東京・渋谷の駅前に新たなハンバーガーチェーンがオープンしました。アメリカ・ロサンゼルスに本社を置く「ファットバーガー」。世界20か国で200店舗余りを展開する人気チェーンです。

特徴はなんといっても、ボリューム。普通サイズのハンバーガーで肉の重さは115グラム。なんと、国内の一般的なハンバーガーの2倍から3倍の大きさです。しかも肉の量は、お客の要望に応じて、最大6枚=690グラムまで増やすことができます。

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一方で、オーストラリア産牛肉の赤身を使って、脂肪分を通常の半分程度の20%ほどに抑えているとして、「ヘルシーさ」も売りにしています。気になるお値段は、主力商品の価格帯が600円台から1000円前後と、500円以下の商品が主流の国内チェーンよりも高めです。

また、ビールなどのアルコールと一緒に夜の食事としても楽しめるよう、店内にはバーカウンターも設けられています。

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なぜ、いま日本への進出を決めたのか。 運営会社の遠藤洋取締役は「国内では肉をメインに打ち出したバーガーチェーンは実はあまりなく、需要がある。ハンバーガーというより、ぜひ肉を食べてほしいという思い」と話しています。会社では今後3年以内に10店舗を出店するとしています。

本場から進出続々

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このところ、海外のハンバーガーチェーンの日本進出が相次いでいます。

大きな注目を集めたのは、3年前に東京・港区にオープンした「シェイク シャック」です。ニューヨークで人気のチェーン店で、ホルモン剤を使わず、じっくり育てた牛肉を使用していることが特徴だとしていて、若い世代を中心に人気を集め、店舗の数は、当初の計画を2年前倒し、ことし中に10店舗まで拡大する見通しです。

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これだけではありません。同じく3年前に東京・自由が丘に初出店した「ベアバーガー」もニューヨークで人気のチェーン。放し飼いで育てた牛肉に保存料を使わないパン、さらに有機肥料で育てた野菜が売りのお店です。

2年前に東京・秋葉原にオープンした「カールスジュニア」は、カリフォルニア州発祥で、ここも150グラムを超える肉のボリュームが特徴です。

ロサンゼルス発祥の「ウマミバーガー」は、ナイフとフォークで食べる“ハンバーガーレストラン”をコンセプトに去年、東京・青山にオープン。日本の“うま味”をアメリカ人のソウルフードでもあるハンバーガーと掛け合わせたもので、昆布や醤油などでソースなどが作られています。

東京・港区にオープンした「ザ・カウンター」では、肉の種類やサイズ、パンやチーズにソース、野菜などのトッピングを客が自由に選べる“カスタムバーガー”が人気です。

いずれの店でも、1000円以上する高価格帯が主流で、ハンバーガーといえばファストフードというイメージが様変わりしつつあります。健康志向に対応したものや、彩りや見た目の迫力がいわゆるインスタ映えすることからも、これまであまりハンバーガーを食べていなかった若い女性にも食事としての人気を集めているのです。

バーガー市場は拡大か

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飲食店の情報サイトを運営する「ぐるなび」によると、ハンバーガーを取り扱う店舗の数は2年前と比べて1.6倍に増えているということで、すでに日本全国に浸透したはずのハンバーガーがここへ来てさらに市場を拡大させていることがうかがえます。

博報堂生活総合研究所の十河瑠璃研究員は「ハンバーガーが好きという人は男女ともにずっと増え続けている。昔はハンバーガーは手軽に食事を済ませたい時に食べるイメージがあったが、いまは見た目がおしゃれで野菜もたくさん入ってヘルシーなど付加価値があるものが多いので、人気が出ているのではないか。今後も出店競争は厳しくなるだろう」と指摘しています。

迎え撃つ国内勢は

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相次ぐ新顔の参入に、国内大手も黙ってはいません。
マクドナルドは、かつての低価格路線から転換する中、ことし3月から新たなサービスを導入しました。夕方5時以降、通常の料金に100円を追加すると肉の量が2倍になるというものです。

新規参入のチェーンが打ち出しているのと同じく、ボリュームを増やしつつ、朝食やランチに比べて弱かった夕食としての利用客を取り込むのが狙いです。プラス100円という手軽さもあってか、4月の売り上げは、前の年の同じ月と比べて10%の大幅な増加となったということす。

一方、全国に170店を展開するフレッシュネスバーガーは、大手外食グループの一員という特性をいかし、ほかの業態とのコラボ戦略を進めています。

たとえば、神奈川県川崎市の店舗では、ことし1月末から店内にベーカリーを併設。レジの横でおよそ40種類の焼きたてパンを販売しています。
その効果で店全体の売り上げは1.5倍に増え、相乗効果でハンバーガーの売り上げも伸びているということです。

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このほかにも、店舗の立地によってアルコールや生ハムなどのおつまみを提供する居酒屋や、クレープやアイスを販売するスイーツ店など、新業態とのコラボを次々と進めています。

フレッシュネスの船曵睦雄社長は「ハンバーガーを食べて育ってきた世代が40代、50代になり、市場はまだ伸びる余地があると思うが、ハンバーガーだけで昼も夜も来店していただくのは難しい。お年寄りも含めて幅広い客層を対象にし、他の業態のニーズも取り込みたい」と話します。

盛り上がるハンバーガー市場には、コンビニも目をつけています。
ファミリーマートは、今月から関東地方の一部の店舗で、自社のファストフードをパンに挟んだバーガーの試験販売を始めます。挟むのは看板商品のチキンにコロッケ、そして魚のフライの3種類。販売動向をみて全国展開も検討しているということで、本格参入するか注目されます。

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時代の変化を映す鏡に

デフレの時には、1個100円を切る「価格破壊」。
そして、脱デフレが見えてきた中での「ボリューム重視」や「健康志向」、「SNS映え」へのイメージチェンジ。

いまの状況について、専門家は「消費意欲が減り、節約志向が続く中でも、“きょうは少しだけ奮発する”ための対象として、ハンバーガーがちょうどよい位置づけにあるのではないか」とも指摘します。

何を挟むか、何に挟むか、そもそも自由なのがハンバーガーの良いところ。時代の微妙な変化に応じて、ハンバーガー自身も変化できるところが強みと言えます。世相を映し出す鏡として今後どんな方向に変化していくのか、頬張りながら追いかけてみたいと思います。

長野 幸代
経済部記者
長野 幸代
平成23年入局
岐阜局・鹿児島局をへて経済部
現在、流通業界を担当