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子連れオフィス どう思う?

あなたが働くオフィスの壁一枚向こうで、子どもが元気に遊んでいる…。今、子どもと一緒に通勤して働くことができる“子連れオフィス”を整備する動きが広がっています。

待機児童の問題は今も深刻です。なんとか保育所が見つかって、この春から、勤めに出られるようになって、とりあえず、ほっとしている人もいると思います。ただ、送り迎えをしながら「保育所がもっと職場近くにあったらよかったのに」と感じている人も実は少なくないのでは?
子連れオフィスは、仕事と子育ての両立を進めるカギになるのでしょうか。
(経済部記者 野口恭平)

丸の内に登場 子連れオフィス

JR東京駅や有楽町駅にほど近い丸の内にある「新国際ビル」。1階に、この4月、子どもと一緒に出勤して、子どものそばで働くことができる新たな施設がオープンしました。

0歳から2歳までの子どもを預かる「認可外保育所」と、パソコン作業などができるオフィススペースがセットになっています。オフィスと保育所の間には扉が一枚あるだけ。オフィスで仕事をしながら、合間に、ドアの小窓からわが子の様子を確認できます。昼どきには、子どもにご飯を食べさせることもできます。

作ったのはビルを管理する三菱地所。施設を利用できるのは、丸の内周辺にある三菱地所のビルに入居するテナント企業の社員です。企業が社員のために、「0歳児を1人分、1歳児2人分」などと保育所の利用を契約する仕組みです。

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500人の空き待ち! オフィス街の保育所不足

実はオフィス街の保育所ニーズ、高まっているそうです。丸の内や大手町で保育所を運営しているある会社に話を聞いてみました。

時期にもよりますが、多いときだと500人ほど空き待ちの申し込みが入っているということです。ほとんどの人は、丸の内や大手町の会社に通勤してくる人たち。背景には、共働き世帯の増加や、子どもの出産後、できるだけ早く職場復帰を望む女性が増えていることがあるそうです。自宅の近くで保育所が見つからないため、職場の近くで、なんとかならないかと申し込む人が殺到しているそうなんです。

新たな施設に、9か月の子どもを預けることにした会社員の女性も、そんな1人でした。「自宅近くの保育所はすべて落ちてしまい、遠くの保育所を探さなくてはいけないと思っていたところ、施設のオープンを知って利用を決めました。遠くの保育所に送り迎えする時間がかからないので、その分、仕事に集中できますね」と話していました

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「通勤ラッシュに子どもを連れて行くほうが大変なのでは…」と思う人もいるでしょう。ただ、勤務時間を自由に選べる「フレックスタイム制度」が普及しているので、ラッシュを回避することも可能なようです。

三菱地所プロパティマネジメントの須田準人さんは「人手不足が深刻になる中、企業はママやパパに働いてもらおうと子育て支援を強化しなければと考えています。子連れオフィスは、ビルそのものの魅力もあげることになると考えています」と話しています。

広がる子連れオフィス

事務所や工場などに保育施設を備える企業の動きは、今に始まったわけではありません。すでにさまざまな業界で広がっています。 例えば、セブンーイレブン・ジャパンは去年、コンビニで働くスタッフが利用できる保育所を、東京と広島の店舗の2階部分にオープンしました。大手コンビニで初めての試みで、利用状況を見ながら保育所の数を増やしていく方針です。

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また、大和ハウス工業は、この春、物流センターの中に保育所をつくりました。物流業界は人手不足が大きな課題です。働き手の確保につなげようという珍しい取り組みです。

こうした企業内にある保育所は「企業主導型保育事業」として、国も後押ししています。2年前に制度がつくられ、保育士の数など要件を満たす施設には、国が整備費用や運営費を補助しています。ことし2月の時点で5万4000人分の受け皿が整備され、今年度中に9万人分に増やすのが目標です。

”緊急避難”で子連れOKの動きも

保育所ではありませんが、子連れ出社OKという制度を始めた企業もあります。

住宅メーカーのタマホームは、満2歳から小学校卒業までの子どもと一緒に通勤し、仕事をすることを今年度から認めるようにしました。国内に238か所の事業所があるそうですが、多くはモデルハウスを兼ね、お客さん用のキッズスペースがあります。そこを利用できるようにしたのです。

保育所が見つからず待機児童になっていたり、小学校が休みの期間など、あくまで「一時的」「緊急避難的」な場合だけですが、上司に口頭で連絡するだけで利用できるそうです。

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このほか、不動産会社のザイマックス。東京都内などの3か所で子連れで利用できるサテライトオフィスを運営し、契約した企業の社員に場所を提供しています。ここも夏休みなどで学校や保育所が休みのときに、子どもを連れて、仕事をできるようにしました。

どうしても子どものそばにいなければならないとき、こうした臨時のオフィスが家の近くにあれば確かに便利ですね。

子連れオフィス広がるか?

子連れオフィスは、どこまで広がっていくのか。

企業内保育所の運営事業を手がけるママスクエアの新宮涼子さんは「必ずしも、すべての親が職場に子どもを連れて行きたいわけではないと思いますが、例えば、子どもが母乳しか飲んでくれないため、仕事を断念するママもいます。いろいろな事情で、子どものすぐ近くで働きたい、近くでないと働けない人がいるのも事実。日本はまだその選択肢が少ないのではないでしょうか」と話してくれました。

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取材を終えて

子連れオフィスを取材して、パパ・ママはもちろん、企業も仕事と子育ての両立をいろいろ模索していることが見えてきました。

私も去年、子どもが生まれ、「保活」に取り組みました。10か所近くに申し込み、なんとか受け入れてもらえました。自宅からバスなどを使って40分程度の距離にある認可外保育所です。預け先が見つかっただけで、良しとしなければならないのですが、送り迎えにかかる負担は小さくはありません。同世代の友人や取材先でも、そうした人は結構います。

待機児童の問題は深刻です。「預け先が見つかる」ことが、まず最優先の課題だと思います。でもあえて、ひと言付け加えて、「”働きやすい”預け先が見つかる」ことを、国や自治体、それに、企業が考えてくれれば、と思います。

野口恭平
経済部記者
野口 恭平
平成20年入局
徳島局をへて
流通・小売業界など取材
現在は国交省を担当