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久保利弁護士インタビュー

企業や団体が立ち上げる第三者委員会などの報告書を格付けする委員会。そのトップを務める久保利英明弁護士が語ったのは…。インタビューの主な内容です。

なぜ格付けが必要だと

ーーー格付け委員会の皆さんはボランティアで活動しているが、久保利さんご自身はどのような思いで活動していますか?

久保利:そもそもなぜ、第三者委員会のガイドラインを作ったかというと、実は、金融庁の方から「弁護士がいる第三者委員会というものがあるが、あれって本当に信用できるのか」と言われた。金融庁とか監視委員会とか、そういうところも第三者委員会がやっている報告書というものをしっかり見ている。

つまり、金融庁は金融庁で、場合によっては、彼らが出してきた有価証券報告書が間違っているというと、それに対して是正をさせなきゃいけないとか、ペナルティーを考えなきゃいけないということになる。したがって第三者委員会が信用できるかできないかというのは、自分たちの判断にも大きな影響があると。したがって、どうも僕らが見ていると、これは信用できないよねという事があって、確かにそうかもしれませんねと。

当時は、信用できない「不良第三者委員会」というものがあった。是正するためには弁護士会でちゃんとした指針を作らないと、弁護士さんの声望に関わりますよ、というアドバイスもあった。このため、日弁連の業務改革をやる委員会が、なんとかしましょうということで、その下部組織として、ワーキングチームを作って、「不良第三者委員会」に対する是正策としてこれをやっていた。

これでもう是正ができたと思ったら、実は出てきたのが、もっとお粗末なものもあったり、中には第三者委員会という名前を避けようとするものがあったり、いろいろなのがあったので、われわれは「格付け」をしなきゃいけないということになった。

同時に格付けをして厳しい事ばかり言っていてもよくないので、むしろいいものは褒めてあげようということで、プライズ委員会(優れた第三者委員会報告書の表彰制度)というものも、落合誠一氏(東京大学名誉教授)に頼んで作ってもらった。厳しく批判するところと、いいものはいいと言ってあげるところと2つ作りましょうということにした。

「落合委員会」の方はなかなか資金がないので、じゃあ分かりました、うちのホームページを使って下さいと言って、格付け委員会の方のページを使って、そこにアップしてきた。

私たちは、4年間活動してきているけれども、16の報告書を取り上げて、あまり褒めたのはないが、批判をしたのはずいぶんあるわけですね。それこそ、朝日新聞の第三者委員会の報告書もそうでしたし、東芝もそうでした。今度の神戸製鋼所もそうですけど、そういう点ではかなり厳正に、ガイドラインを冷静に考えて格付けを行ってきたという事は言えますね。

今の気持ちを言うと、今回の神戸製鋼の話しになってきます。せっかくガイドラインを作って格付けをしているのに、結局、格付け委員会の格付けを逃げようとしているねと。それは、声明(2月6日委員会公表)の中でも書きましたけど、結局は「名ばかり第三者委員会」というものであって、むしろ会社がコントロールをしてしまう。そういう東芝のようなケースみたいなものがありますね。

そして、第三者委員会という名前を使わないで、例えば東洋ゴム工業のように、いわば、コンサルタントという形で、危機管理委員会だということを言って、報告書は出すけれども実際は、コンサルタントとして仕事をする。こういう風に、第三者委員会という名を名乗らない、名ばかりというのは、まだ名を名乗っているんですが、名前も名乗らない。

今度のように神戸製鋼になると、もう(報告書を)出さない、公表しない、隠しちゃおうというやつが出てくる。ある意味でいうと昔の不良第三者委員会よりも、もっと巧妙、悪質になってきているというのが僕の考えですね。

せっかくわれわれが一生懸命やっているのに、もちろんいい報告書も出てきていて、きちんと評価はしているんですけど、どうも、巨大企業のやっているもの、メディアが関心を持つような大きな騒ぎになったものについては、どうも見るべきものはない、というのが実態ではないか。こういう感触を持っている。

したがって、隠蔽しちゃう、逃げちゃう、隠しちゃうという対応が、もし不祥事に対する対応策として、堂々と王道を歩んじゃうようなことになると企業の自助努力なんていうことはもうなくなってしまうのではないか。当然その事は日本の証券マーケットとしても大変困ることで、(日本取引所)自主規制法人が一生懸命、不祥事対応のプリンシプル(原則)を出したり、あるいは不祥事予防のプリンシプルを出したりしている。

要するに「もっとまじめにやれよ」ということを一生懸命メッセージで出しているわけですけれども、そのマーケットの要請とは違うことを、巨大企業がむしろ、そうしないように動いている。これは日本全体の劣化につながっているわけで、今、政府そのものも劣化していますけれど、自衛隊もそうだし、財務省もそうだし、要するにみんなが信用するような、してきたような組織と同じ弊害が企業の中でも起きている。

そういう点では、ローマ帝国の崩壊じゃないけれども、日本の企業というもの、日本の国家というものが同じ道を歩んでいるんじゃないかという危機感を僕個人としてはすごく強く持っていますね。

格付け委員会の狙い

ーーー格付け委員会の目的はホームページには、「第三者委員会等の調査報告書を“格付け”して公表することにより、調査に規律をもたらし、第三者委員会及びその報告書に対する社会的信用を高める」と書いてあるが、あえて優しく言い換えると?

久保利:優しく言うと、要するに第三者委員会って正直に本当のことを伝えます、おまけに事実はこうでしたと、本当のことを言ったうえで、何でこんなものが起きたんですかという本当の原因=真因、ルートコーズと言いますけど、その真因はどこにあるのか。

例えばトップがダメだったとかそういうことはどうでもいいことで、問題はではなぜトップがダメだったのか。ダメなトップがどうしてトップになれるような、そういう選抜システムがあるんですかと(いうことが重要)。あるいは内部統制が効かなかったということであれば、なぜ内部統制が効かないような仕掛けになっているのか、効かせるようなことはできなかったのはなぜですかと。こういうところに本当の原因があるわけですね。

だから、真因はこういうところだって指摘すれば、次の社長を選ぶときには、コンプライアンスがしっかりした、インテグリティー(高潔性)のある、誠実な人を選ぶということをやってこなかったのが、いちばんの原因ですね。そうすると再発防止策っていうのは、そういう次の社長を選ぶシステムというものを、ちゃんとやらなきゃいけませんということになってくる。

逆に言うと多くの第三者委員会の報告書で僕らがだめだと言っているのは、「研修しなさい」とか、「人員を変えなさい」とか、「悪い事したやつを変えろ」とか、そういうことは当たり前だと。

そういう人事配置、そんなもので改善するくらいであれば、話しは簡単で、もう(不正の原因は)個人犯罪じゃないですかということになる。ところが多くの不祥事は組織ぐるみなんですよね。組織ぐるみになっているものを「誰かが悪かった」と言って終わる話ではない。「Aさんが、そこのポジションにいたからだ」ということは真因ではない。しっかりとした第三者委員会は、本当の原因を突き止めろと。

第三者委員会の役割は3つあって、1つ目は、何が起きたのかという事実を客観的に追求すること。2つは本当のルートコーズ(真因)は何かという事を究明すること。そして、再発防止策を作ること。この再発防止策は、ほかの企業にも大変参考になる「公共財」だという風に僕らは言っていますから、そういう意味で、3段階がしっかりしている報告書というのは、社会的に非常に社会的な価値があるし、その会社の信用をむしろ高めることになる。

だから、「こういう会社は自分で身を清めることができるから復帰してもいいんじゃないの」と。「上場取り消しとか、そういうようなことにならなくていいよね」という話になるわけですよね。

僕の考えとしては、みんなが第三者委員会報告書を読むと、なるほど真実はこうだったのかということがわかる。そういう報告書がいい報告書。逆にいうとメディアも第三者委員会の報告書からエッセンスを取り出すことによって、多くの企業に対して、こういう事件だったんです、ここに問題があったです、こうやれば変わりますということを非常に簡潔に書けるわけですよ。そういう材料を提供するというのが第三者委員会ではないかと。

だけど、神戸製鋼の場合、(メディアは)なにも書けないですよね、ないんだから。あるいは名ばかり第三者委員会、東芝みたいなものはスコープ(調査対象)をみんな会社が決めて、新日本監査法人には触るなとか、ウェスチングハウスは触るなと、いちばん大事な問題が隠れちゃうわけですから、何が起きたかわからない。

何が起きたかわからなければ、本当の原因が何だったのかなんて書きようがない。再発防止もできない。だからそういう「名ばかり第三者委員会」というのは、気をつけなきゃだめですよということになるということですね。

なぜ多数決ではないのか

ーーー格付けの仕組みについて、ひとりひとり個別に評価しているのはどういう狙いか?

久保利:格付けするのは、組織でやるものだという考えもあると思います。だけど、その組織というのは、たとえばお金を頂いてやりますとか、あるいは国が認可を与えてやりますとか、そういう事があれば、そういう組織の威厳なり、あるいは組織である必要性っていうのがあるわけですけど、僕らは今、第三者委員会報告書格付け委員会って言っていますが、初めは「″勝手″格付け委員会」というふうに名乗っていたんですね。

だから、何の正当性もありませんよと。ただ、全部公表しますからわれわれのものを見てくださいと。組織として「勝手格付け委員会」という名前で出しちゃうと、実はその中に異論のある人もいるかもしれない。だから多数決でやらなきゃいけない。多数決でこれはFですとか、Aですというふうにやることになっちゃう。そうすると恐らく皆「一家言」のあるメンバーばかりですから、多数決でこうなりましたというと、「俺は納得できない」ということもあるでしょう。

逆に言うと、委員会がこの報告書は全然だめだと言ったときに、その責任を委員会という姿の見えない、法人でもなければなんでもない、任意団体みたいなもの(格付け委員会)が取れるのかと(いう問題がある)。

それでは、やっぱり個人の名前で出しましょうと。個人の名前でそれぞれが評価をし、理由をちゃんと説明をして、それであとはそれを読んで、委員の言っていることはもっともだとか、委員が言っているのはそうだなとか、委員が言っていることは、全然賛成できないねということでもいいから、そうやってみんなが企業の不祥事というのをしっかりと自分の頭で分析をする材料を提供したいというのがいちばん大きいですよね。

そうすると(意見に)バリエーションがあったほうがいいし、多様な意見があっていい。1本に統一はしない。そうしたら、今度は統一性がなさすぎてなんだかよく分からないという注文も来たので、毎回(資料の)1番トップに、こういうところが議論のポイントになりましたというものをお出ししました。そういうように、だんだん4年間やっているうちに変わった所もあるし、進歩したところもあります。

久保利さんがいちばん厳しい

ーーー久保利さんの評価は、16回の格付け中、9回が「F」評価でいちばん厳しい意見となっている。ご自身ではどう感じている?

久保利:そうなんですよね。僕がいちばん厳しくて、ただし僕が1人だけ「F」だったことはないんじゃないでしょうかね。常に誰か仲間が出てきたというか、ほかの誰かも「F」だと。僕はいちばん厳しいかもしれないけれども、ダメなものはダメ、というふうに委員長ぐらいは言わないと、社会に対して警告を与えることにならない。委員長というのはみんなから恨まれるためになっているので、褒められるためにやっているわけではない。

だからいちばん正直にやりましょうと。じゃあお前、こんな報告書かけるかと言われると、できるかどうかわからないけど、少なくとも客観的に中立・公正な立場で判断をすると、これはだめだよねと。ダメな理由は、それぞれあるわけですね。今回みたいに全く公表しないからダメと。

これ、比較的簡単な「F」なんですね。それに対して東芝とかいろいろありますけど、結局スコープ(調査対象)を自分で決めて第三者委員会が自分らでこういうスコープで調べましょう、このスコープはいらないし、こっちのスコープが大事だねということを、ちゃんと第三者委員会の中で議論をして作らない。

それは第三者委員会ではないという風に思うので、したがって「F」の理由というのはいろいろある。結果的には、いろんな立場があって、(評価が)優しい人もいるし、僕みたいに思ったことをそのとおり書いてしまう人がいるから、僕がいちばん「F」は多いかもしれませんけども、しかし、それはそうでしょうがないよねと。

あんまりおもんぱかったり忖度したりしない、ほかの委員は忖度はしていないんですけど、自分で第三者委員会の委員長とか、メンバーをやったことある人はなかなかそういうところで、事実が明らかにならないんだよねという悩みを持っている人も、もちろんいらっしゃるわけですね。そういう人は、自分も同じような苦労をして結果的にはあまりビシッと書けなかったんだけども、でもそれって分かるよなというような人は、場合によると少しワンランク上げてくれるっていう人もいるかもしれませんね。

どこまでを調査対象に

ーーー東芝について。第三者委員会はウェスチングハウスの減損問題を調査対象にしなかった。

久保利:(減損問題というよりは)ウェスチングハウスそのものですよね。要するに何であんなものを東芝が買ったのかとか、何をやっていたのか、すべてひっくるめて減損のベースになるところとか、なぜそんな値段で買ったのかっていうところも含めて、全く触っていないんですよね。

ーーー格付け委員会の報告書の中でも「自浄能力を否定した」「依頼企業の言いなりに限定されれば不祥事の実態が把握できない」と指摘されているが、仮に第三者委員会の報告書でウェスチングハウスを調査対象として、うみを出し切っていた場合にはどうだったか?

久保利:あれを出した時は、まだ、ウェスチングハウスの巨額の六千数百億円っていう損は、まだ出ていない時なんですよね。もしそこまでターゲットを絞ってやっていれば、2015年にこんな物件を買っちゃう、こんな会社を買っちゃいましたよと。これが、ウェスチングハウスの子会社みたいになってきて、これ何のために買ったんですかということは、もし第三者委員会で追及されていれば、多分そこは書かれたと思うんですね。

ウェスチングハウスにはこんな闇があります、ということは、第三者委員会の手によって暴かれたということは言えると思います。だけどウェスチングハウス全体を葬っちゃっていますから、そういう点では、なにも「そ上」には上がらないんですよね。だから逆に言うと、いちばん訳のわからないところ、アメリカの会社であって、しかもウェスチングハウスというのは、東芝よりも古い会社で、東芝よりも圧倒的に世界的な力がある会社。それをどう東芝がどうやってコントロールしていけたのか。ここがいちばん知りたいところなんですよね。

実際はできていなかったわけですけれど、そういうことを何も書かないで、「東芝の第三者委員会でござい」ということはないでしょう。いちばん“やばい”ところを書かない。監査法人にしたってそうですよと。どうしてこういうようなインチキな、バイセル(取引=経済用語)みたいに、部品を売って、また製品として買い取ってというところで、インチキをやるような、そういうものをなんでいいと言ったんでしょうか。

会計監査人としては何を見ていたんですか、と言いたいところですよね。監査法人の問題についても触れないということによって、これも隠蔽しちゃったわけですよ。結果的に見ると、東芝そのもので、この2つの大きな問題を除いちゃうと、実際は世の中的にはよくある小規模な粉飾にすぎないということだったのかもしれないですよね。決して債務超過に陥るなんていうほどのことは無かったのかもしれない。

ということは、いちばん肝心要の監査法人がどう動くかという話と、アメリカのウェスチングハウスは、しかも非常にえばってはいるのだけど、実際に30年間も原発を造ったことがないわけですよね。

そういうところが一体どれぐらいの業績・利益があるのか。本来だったら、もうそこで減損していなきゃいけないかもしれないというものをずっと抱えて、大事に持ってきたわけですよね。

それを暴くのが第三者委員会のはずなのに、その2つをターゲットにしなかったというか、調査対象に入れなかった。それは会社がそう言ったからだろうと(推測される)。それでは、第三者委員会ではないよねと。会社はそこに触らないでくれと言われても、「そこをやんなきゃ、あんたのところの姿がわからないから。そういうのを見ましょうよ」と言うのが本来の第三者委員会だ。

第三者委員会の本当の役割は

ーーーもし対象となっていれば、もうちょっと会社再生に向けて…。

久保利:むしろ早く、とんでもない損が発生するところがここにあります、「地雷原」がここにあるよと。ここが地雷だから、これ踏まないでねと。じゃあこれをどうやって処理していこうか。軟着陸もあるでしょうし、逆にこんなものは早くどっかに売ってしまえ。ウェスチングハウスを(東芝から)本当に切り離そうと、その時に思ったかもしれないですね。

爆発しちゃったあとで切り離すのではなくて、これは危ない、とてもじゃないけどもまずいんで、早く処理しましょうと。安くてもいいから処分しちゃいましょうということが、もしできていれば、たぶんあんな、とてつもない債務超過を負うことはなかった。

第三者委員会が正直にやればやるほど、基本的に会社は助かるんです。その時の経営者は大変かもしれないけれども。だから僕は自分でやっているものでは、いつもいちばん厳しいことを言って、そういう厳しいことに対して耐えられる経営者だけが僕を選ぶ、という結果になっちゃったんわけですよね。

だけどみんなそういう会社、復活していますよね。ゼンショー(牛丼チェーン「すき家」などを展開)だって今、景気がいいじゃないですか。NHKだってインサイダー(事件)があった時は大変な困りようだっだけれど、まあまあ、そこそこ復活してきている。

あるいはアクリフーズという、マルハニチロの孫会社ですけど、これが農薬を製品に入れちゃって、60数億円で回収したというときもある。これももう、マルハニチロはガバナンス体制が悪かったからマルハもニチロもアクリも全部で合併しましょうと。合併として統合してホールディングスをやめちゃったんですね。

みんな事業会社が一緒になって統合して、そこで品質保証部というのを大きくして、全社の品質保証をしっかり見る。そうすると水産関係のマルハと冷凍商品のニチロと、これを全部統合して監視する。あるいはお客さまセンターからのクレームを全部受ける。こういう大きな品質保証(の枠組み)を作ったわけです。

そういう意味で、正直に姿を見て悪いところを直そうと思えば、会社には直す力があるんですよね。言ってやらないから直さないんですよね。という意味で、第三者委員会が遠慮したり忖度したり、会社の言うことを聞きすぎたりしてちゃんとやらないと、いちばん、被害を受けるのは会社であり株主であり従業員であり、あるいはお得意さんである。

まさに「オールステイクホールダー(利害関係者)」が迷惑を被ると。こういう、すごく絶妙な組織体というか、これが第三者委員会なんで、これを大事にしないで、どうして企業がみずからの力で再生できようかと。これを(日本取引所)自主規制法人も、大きな問題であって、重篤な損害を被るようなそういうケースについては、ぜひ第三者委員会を作って独立性・中立性・専門性というのを生かしてくださいと言っているわけですよ。

報告書に書いてある事がすべて

ーーー東芝の第三者委員会の委員長を務めた上田廣一弁護士に電話で取材を依頼したが、正式なコメントとしては「報告書に書いてある事がすべてなので、お答えするつもりありません」というものだった。

久保利:書いてないことを聞いているのに、それがすべてだと言われたら、じゃあ、「本当にウェスチングハウスと会計士の問題は、確信を持って書かなかったんですね」ということばをお返しするしかないですね。

だけど人間を裁いたり、会社を裁いたりするときに、ここは書かないよと言って、外しちゃって全貌が分かったということになるんでしょうか。僕に言わせれば第三者委員会というのは、残念だけれども、それは、上田先生のためにもよくなかったし、東芝のためにもよくなかった。

逆に言うと、裁判官が「判決書がすべてです」とよくそういう答弁をするんですが、その判決書は事件の全貌、全容、背景まで書いてありますから、それを見てくれれば、それで私の気持ちは全部分かります、という場合なんですね。

今回は、大事なことが書いてないから「F」だと言われている。その人のコメントとしては非常にもの足りない。本当の第三者委員会の「ありよう」というのを理解していらっしゃらないなと、残念だけど僕は思いますね。

どうすれば企業再生に結びつく

ーーー今後に向けて。格付け委員会が丸4年。かなり厳しく指摘しても、なかなか内容的に厳しいとされる報告書が続いている。また、そもそも第三者委員会をつくらないというケースもある。どうすれば、格付け委員会の活動と、第三者委員会の改善や企業の再生に向けた動きを結びつけられると思うか?

久保利:結局、逃げて隠れる会社というのは、結局はまた(不正を)起こしますよ。三菱自動車が何べんもやったように、結局、真実と向き合って、悪いものは悪い。こう変えていくという事が言えない、勇気のない会社はまた起こすんですよね。

だからそういう意味では第三者委員会報告書、あるいは、それらしきものが出た、「もどき」が出たからといって、その会社が本当に自浄作用を発揮できるかどうかは別問題。しかもそういうものを出した人は、また起こす。現に、何べんでも起こしているところは、いっぱいあるんですよね。

そういう意味で、やらないならしょうないですよね。僕らは「F」をつけるだけだ。だけど「F」をつけられた会社、本当の真相を見ている人はみんな分かりますよと。やっぱり東芝の株を買わないでしょ。経営ガバナンスについてはみんな冷たい目で見るでしょ。

それをせっかく直す機会が与えられていたのに、神戸製鋼なんてもったいないことをした。そういうチャンス、苦しいけれどピンチだけど、そういう時こそ正直に、こう改めますというふうに言ったら、「おう、やるじゃん」という感じになってマーケットの株価も上がってくるかもしれない。

なんでそういう機会を見逃すのだろうか。やっぱり僕は真面目じゃないし、正直じゃないと思うんですね。だから正直じゃない会社、まじめじゃない会社は、また失敗すればいいし、「失敗しろ」とは思いませんけど、失敗は必然だと僕は思いますね。

ーーーつまりこれからもそういったものに対しては厳しく臨むことで…。

久保利:僕は常にそう思うし、(日本取引所)自主規制法人の今度の予防のプリンシプルというものもとにかく、真実を見極めろと、本当のこと、これをしっかり大事にして経営をしていけとか、あるいは、悪い芽は早く摘め、早く摘むには内部通報制度をしっかり充実しろ、という趣旨のことが書いてあるんですよ。それは当たり前の話だ。

ところが、多くの会社が隠そう、隠そう、隠蔽して無いことにして、みんな偽装しているから、データ偽装はいくらでも出てくる。それを誰も通報しなくなっていく。もっと悪くなるかもしれないですよね。

そういう点で、厳しいことをやるような第三者委員会を作ったり、ちゃんと公表したり、悪かったとちゃんと誠実に修正していく組織は強い組織だと思います。それを隠蔽したり、ごまかしたり隠したりする会社は、それで終わっちゃうんじゃないでしょうかね。やっぱりマーケットの見る目って厳しいですよ。

ーーーいいかげんな対応をすればマーケットが見ていると?

久保利:見ていると思いますね。株価が証明すると思いますし、本当にしっかりそれをまじめに受け止めれば、必ず復活できる。そういう点では、どうなんでしょうかね。たとえばオリンパスなんてまた何べんも失敗しているじゃないですか。また内部通報者をいじめたりして、結局そうやって、どんないい製品を作っていても、どこかでガバナンスがおかしいですよねと見ちゃうんですよね。せっかくいい第三者委員会を作ってオリンパスはあの報告書を出してもらったのに、それを結局受け継いでいる経営者たちが、ちゃんと深刻に受け止めていないんじゃないかなという気がしますね。第三者委員会って、報告書を出して解散しちゃいますからね。あとずっと面倒を見続けるわけにはいかないので、その報告書の精神に対してずっとやり続けるっという、持続する志というか、そういうものがないと持たないでしょうね。

「名ばかり第三者委員会」を無くすには

ーーー「名ばかり第三者委員会」をなくすためにはどうすればよいか?

久保利:僕らの格付けだけではなくならないかもしれないので、メディアなどが本当の批判をし続けたり、評価をする格付け会社とか、そういうところが、しっかり見続けていったりということが必要なんだと思うんですね。メディアも忙しいから、なんとかが終わると次はなんとかだとなるんだけど、そうじゃなくて、東芝問題なんていうのはずっと追い続ける価値があると思いますし、今度の神戸製鋼もこの後どうなるのか。

「秘匿特権(=事業者と弁護士との間のやり取りに関する秘密の保護)」だと言って隠したわけですから、じゃあその秘匿特権と言っていたその事件は、アメリカ司法省がやっている刑事事件は、どういう風に今後推移するのか…。

ーーー社外役員の重要性は、第三者委員会を作るにあたっても必要?

久保利:そのために独立役員なんているものですから。常務執行役員をやっている人というのは取締役では本当はないんですよね。取締役っていうのは、業務執行を見張っている監視・監督する係ですから。その人たち(社外役員)が「こんなことをやっていたのか、お前らは」と言って作らなきゃいけないのが第三者委員会なんですよね。

残念ながら今、日本では社外取締役の数ばかり言っていて、あるいは女性だ、男性だ、ということばかりこだわっていて、本当に腹が据わった立派なものを言う、辞表をいつも腹に持っていて言うべきことはいつも言う人間を選ぶ、社外取締役制度になっていないと思うんですよね。

だから逆に言うと取締役も責任っていうのはすごく重たいので、いい人が来てくれるような制度設計をしなきゃいけないし、逆になったならば、いつでも自分を言うべきことを言って腹切ってもいいんだと思うくらいの態度でいかなきゃいけなくて。本当は腹切られちゃ困るので、むしろ堂々とこういう問題があったので私はやめましたという説明をしっかりして、アカウンタビリティー(説明責任)をキープしていただけるような、そういう取締役、これがいちばん大事。

ただ、そういう意味では日本の中では、まだまだ社長なんてことばがあるんだけど、ダメですよね。会社でいちばん偉い人は、社長だったり、会長だったりするわけですよね。会長というのは取締役会会長というけど、取締役の中のいちばん、会長だからいちばん偉いだろうというふうに思われているわけだけども、基本的にはアメリカでは誰がいちばん偉いのかと言うと、「ボードメンバー」と言いますよね。

ボードメンバーってなに?というと、基本は社外取締役ばかりなんですよね。その人たちが実は会社でいちばん偉い。なぜならば、株主との距離がいちばん近いから。株主が選ぶんですから、株主の事だけ考えてやっている人たちが、それが取締役だと。

日本では要するに、従業員のなれの果てみたいな人が社長になって、それが次に会長になって。これがいちばん偉いということになっていますけど、そうじゃないんじゃないのと。要するにいちばん偉いのは株主なので、その株主のことをよく考えて行動を取る人、その人が第三者委員会を選んで、その第三者委員会にしっかりやってくださいねという風に言わないと、やっぱり独立性って出ないですよね。