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貯金がない!どうする新潟市

新潟市と聞いて何を思い浮かべますか?おいしいお米に淡麗辛口の日本酒。食に恵まれた豊かな地方都市というイメージでしょうか。ところがそんな新潟市のふところ事情は深刻で、貯金が底をつく寸前まで追い詰められています。新潟は本州の日本海側でただ1つの政令指定都市。いったい何が起きているのでしょうか。
(新潟放送局記者 氏家 寛子)

もう貯金に頼れない…

まずは新潟市の財布をのぞいてみましょう。

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市の貯金にあたる「基金」の残高は、ことし3月末(平成29年度)の時点で33億円。11年前の平成19年3月末(平成18年度)には362億円ありましたが、10分の1以下に減ってしまいました。毎年、お金のやりくりがつかず、貯金を取り崩してきたためでした。新潟市はとうとう「財政運営は危機的であり、持続可能な財政運営を行っていくには限界がきている」と表明しました。

そして平成30年度の予算編成で、およそ1200にのぼる事業を総点検。ほぼすべての事業費を減額して基金を増やすことになりました。とはいえ増えた基金はわずか2億円。貯金が底をつく寸前なのは全く変わりません。

異常さが際立つ新潟市

ほかの都市と比べると新潟市の異常さがよりはっきりします。

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市民一人あたりの基金の残高を調べてみると、新潟市は、去年3月末の時点で7100円。全国に20ある政令指定都市で最低です。トップの仙台は15万7300円で、実に22倍もの開きがあります。

総務省によりますと、地方自治体全体の基金の残高は、ことし3月末時点で総額21兆5000億円に達し、過去最高まで増えました。リーマンショックのころから、全国の自治体は将来の景気の悪化などに備えて基金をせっせと積み増してきました。新潟市の“じり貧財政”は全国にはっきり逆行する事態なのです。

なぜ“じり貧”に?

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新潟市

どうしてそんなことになったのか。新潟市は、高齢化で社会保障費が増え、税収が伸び悩んだことを主な理由にあげます。しかし、それは全国どこも同じです。新潟市だけが“じり貧”になった理由にはなりません。

そこで、平成14年から市のかじ取りを担う篠田昭市長に直接聞いてみることにしました。篠田市長は、基金が枯渇寸前となったのは、平成19年に政令指定都市に移行する際に行った大がかりな公共事業をあげました。政令指定都市にふさわしいインフラを、とふんぱつし、使ったお金は10年間で約2700億円。市内の区ごとに建設した大型のホールなど、「むだ」と指摘された事業も少なくありません。篠田市長は「地域との約束は守らなければならなかった」と弁明します。

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篠田昭市長

これが、どれくらいの大盤ぶるまいだと思いますか?実は、新潟の市民ひとりあたりの公共施設の面積(公営住宅除く)は、政令指定都市で最大なのです。

しかし、造ってしまったものには維持費がかかります。新潟市は公共施設の維持費が今後50年で1兆円を超えると試算。財政に重くのしかかるのは避けられません。「見通しが甘かったのではないですか」と尋ねたところ、篠田市長は「そのとおり」とあっさり認めました。「ほかの自治体と比べ、いけいけどんどんだったことは間違いない」という反省の弁も。

その一方で市長が強調したのは平成19年に起きた新潟県中越沖地震。地震の影響で企業誘致が進まなくなり、公共事業で景気を支える必要があったと説明しています。

政令指定都市にふさわしいまちづくりを進めるために無理をしていたところに、災害が重なって、じり貧”財政に至った背景がみえてきました。

ビジョンが定まらない新潟市

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新潟市役所

政令指定都市に移行した当初、新潟市が目指したのは、華やかで文化的な都市のイメージでした。いまや、その目標も揺らいでいます。

去年10月、新潟市は東京・丸の内で市債を引き受けてくれる投資家向けの説明会を開きました。新潟市はここで「ラ・フォル・ジュルネ」という音楽祭を紹介。「一流のクラシック音楽を気軽にはしごできる老若男女が楽しめる音楽祭」「新潟のゴールデンウイークに欠かせないイベントして定着」などと胸を張ってPRしました。

しかし、そのわずか1か月後に、ことし・平成30年は音楽祭の開催をやめることを決めました。新潟市は、公演の内容などをめぐって、企画会社と意見があわなかったためと説明していますが、財政問題が背景にあったのは間違いありません。

実際、今年度予算で、文化・芸術の事業の多くが見直しの対象になりました。小学生に本格的なオーケストラの演奏やプロの劇団の公演を楽しんでもらおうという教育事業も廃止となっています。“文化都市”の構想は軌道修正を余儀なくされています。

市民サービス切り詰めが続々と

見直しは文化・芸術分野にとどまりません。あらゆる行政サービスが切り詰められました。

例えば、自転車通学の中学生がヘルメットを買うときの補助がなくなります。ひとり親の家庭に、小学校の入学祝い品として贈られていた図書カードの配布も廃止。インフルエンザの予防接種を無料で受けることができる高齢者も絞り込まれます。また100歳を迎えたお年寄りに配るお祝い品も3万円分の商品券から6000円程度の記念品に変わりました。医療や福祉でも事業の縮小は相次いでいます。

あなたの自治体は大丈夫?

ひとたび貯金が底をつくという状況に追い込まれてしまえば、政令指定都市ですら市民向けのサービスを維持できなくなります。あなたが暮らす自治体も、ひと事ではないかもしれません。皆さんも自治体の財布の中身をのぞいてはどうでしょうか。

氏家寛子
新潟放送局記者
氏家 寛子
平成22年入局
水戸局、岡山局をへて、現在は新潟市政の取材を担当