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フェイスブック データ流出 ~あなたは大丈夫?~

好調な株式市場のけん引役だった巨大IT企業の株価下落の傾向が止まりません。その代表格がおなじみフェイスブック。年明けから株価は最大で15%以上下落し、影響はグーグルやマイクロソフトなどほかのIT関連銘柄にも及んでいます。

発端となったのが、フェイスブックの8700万人に上る利用者の個人データが不正に第三者に渡され、2016年のアメリカ大統領選挙でトランプ陣営の選挙対策に使われたとされる問題です。世界で21億人以上が利用するサービスだけに、個人データの集め方やプライバシー保護の在り方に批判が相次いでいます。

ザッカーバーグCEO(33)は、今週(4月10日と11日)、アメリカ議会の公聴会に出席し、証言を行います。この問題を受けて、フェイスブックをはじめとする”ITジャイアント”に対して、規制を強化しようという議論も出ています。

日本の利用者としても決して他人事ではありません。どう備えたらいいのか、問題の真相に迫ります。
(ロサンゼルス支局記者・飯田 香織)

流出した個人データ

そもそも問題になっている「個人データ」とは、何を指すのでしょうか。

実は氏名や電話番号といった情報よりもはるかに幅広いものです。例えば、「犬が好き」とか、「靴や旅行用カバンの広告をついクリックしてしまう」、「週末によくハンバーガーを食べている」といった利用者の好みや行動パターンを指しています。

フェイスブックやグーグルなどを使っていて、画面に突然、自分にどんぴしゃりの広告が出てきてびっくりしたことはありませんか? あるいは家族の誕生日の直前にぴったりのプレゼントを薦める広告が登場したことはありませんか?

こうした広告はすべて、あなたがフェイスブックなどを利用した際の個人データを使って表示されたものです。

個人データの不正流出が発覚

3月16日、米ニューヨーク・タイムズと英オブザーバーが「フェイスブックの利用者、5000万人の個人データが不正に第三者のデータ分析会社に流出」と報じました。元社員の話をもとにしていて、「2016年の大統領選挙でこの情報がトランプ陣営の選挙対策に利用された」とも伝えています。フェイスブックは釈明に追われます。

それによりますと、英ケンブリッジ大学の心理学の教授が2013年、クイズ形式で性格を診断するアプリを開発し、約30万人がダウンロード。アプリを利用した本人だけでなく、友人の情報まで気づかないまま流出したといいます。

この情報を教授が研究目的で利用するのは、その時点で問題ありませんでしたが、教授が金銭と見返りにこの情報を英データ分析会社「ケンブリッジ・アナリティカ」に渡したことは規約違反にあたるというのです。さらに4月4日、流出したデータがなんと最大8700万人に上ると発表しました。

ザッカーバーグCEOは電話会見で、「データ保護対策が十分でなかった。これは私の責任だ」と陳謝しました。フェイスブックは、再発防止策をとったことで今回のような問題は再び起きないと説明していますが、個人データはきちんと守られているのか、利用者の懸念が一気に噴き出しています。

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高まる批判

フェイスブックのとった再発防止策とはどのようなものか。

これまで20か所に分散し、「わかりにくい」と指摘されてきたプライバシー保護の設定画面を1か所にまとめたほか、不正アクセスを防ぐためログインを2段階にしました。 さらに、フェイスブックが保存している利用者のデータを本人が確認し、必要に応じて削除できるようにしました。そのページはこちら。

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私はダウンロードするのに15分程度かかりましたが、この内容を見て腰を抜かしました。自分の投稿や友達とのやり取りはもちろん、何年も前にクリックした広告なども表示されたのです。どれだけのデータがフェイスブックによって吸い上げられ、長期にわたって蓄積されているかがわかります。

広がる規制強化の動き

一連の問題を受けて、アメリカ政府で消費者保護を管轄するFTC=連邦取引委員会は、フェイスブックの情報管理が適切だったかどうか調査に乗り出しました。フェイスブックは過去にもデータ保護が甘いとして、FTCに厳しく指導されています。

一方、ツイッターが大好きなトランプ大統領ですが、フェイスブックは利用していないのか、この問題について発信していません。

今後の焦点は、フェイスブックをはじめとする”ITジャイアント”に対する規制の在り方です。

フェイスブックをめぐっては、ロシア政府に近い団体が多くの投稿を通じて2016年の米大統領選挙に干渉したことも明らかになっており、「フェイクニュース」の拡大を止められなかったとして、厳しい批判を受けています。

このため、情報をのせる「プラットフォーム(場)」ではなく、広告主の公表を義務づけるなど「メディア」に準じた規制を適用すべきだという声が強まっています。また、サービスが広く生活に根づいていることから、電力会社のように「公共事業者」として規制すべきだという声もあります。

こうした規制強化の動きを懸念し、IT業界全体の株価は下落傾向にあり、今や好調だった株式市場の不安要因になっています。

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ヨーロッパでも規制強化へ

規制強化の波は、アメリカにとどまりません。EU=ヨーロッパ連合は、5月25日にGDPR=一般データ保護規則を施行します。

もともとEUでは個人データが厳しく保護されていて、例えば、写真上の人物を特定するフェイスブックの「タグ付け機能」は利用できません。

新たな規則では、利用者の位置情報なども保護すべき対象となり、データを集めて利用するには、原則として本人の明確な同意が必要になります。さらに、人種、政治、宗教などに属するデータや遺伝情報も取り扱いが禁止されます。

違反した企業には高い制裁金が科されるため、各社とも一斉に対応を迫られています。ザッカーバーグCEOは電話会見で、「GDPRのような規制を前向きにとらえている。ヨーロッパのみならず、すべての地域で同じような個人データの保護の設定をできるようにする」と述べました。

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どうSNSと向き合うか

とはいえ、好みや行動パターンなど利用者から集めた大量の個人データを武器に、一定の層を狙い撃ちする広告を表示することで企業から代金を得るのは、フェイスブックのビジネスモデルそのものです。実に売上高の99%が広告収入です(ツイッター88%、グーグル85%)

ザッカーバーグCEOは「関心のある物事の広告を表示してほしいという利用者が多い。フェイスブックが利用者の関心を把握できるのは、利用者が個人データをシェアするという選択をしたからだ」と述べています。さらに、どのようなデータを誰に提供するかといったプライバシー保護の条件を設定するのは利用者だと強調しました。

SNSの利用は無料です。それは広告収入でコストが賄われているからで、いわば、自分のデータと引き替えにサービスを利用していることになります。

多くの人にとってSNSとお別れするのはもはや難しいと思います。ただ、「あなたを漢字1文字で表すと?」、「顔の特徴からわかる、あなたに適した職業は?」といったクイズにクリックする前に、「この情報って何に使われるのだろうか?」と、1度立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。

飯田香織
ロサンゼルス支局記者
飯田 香織
1992年入局
京都局、経済部、
ワシントン支局などをへて
2017年夏からロサンゼルス