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意外な沿線が人気? 〜首都圏路線別 地価上昇率ランキング〜

全国の土地の価格を示すことしの地価公示。全体の上昇率が3年連続でプラスとなるなど、回復傾向が続いています。特に、都心部ではマンションが高騰し、平均的な収入のサラリーマンには、手が届きにくい状況になっています。一方、首都圏1都4県の住宅地の地価を鉄道路線別に分析してみると、これまであまり注目されていなかった意外な路線の沿線が人気を集めていることがわかりました。
(ネットワーク報道部 斎藤 一成/山本 智・経済部 渡邊 功)

首都圏路線別 地価上昇率ランキング

地価公示は、国土交通省が1月1日時点で調査した土地の価格で、ことしは全国およそ2万6000地点が対象となりました。

NHKでは、このうち住宅地について、首都圏1都4県(東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城)にある主な鉄道路線ごとに分析し、地価上昇率のランキングを作成しました。
(※データの分析方法は文末に記載)

ランキングの上位を見ますと、7位の都営 三田線、8位の東京メトロ 南北線、9位の都営 日暮里・舎人ライナー、12位の都電 荒川線など、主に東京の北部を通る路線が目立つことがわかりました。

逆に、ブランドイメージがよいと言われている、JR 中央線や京王 井の頭線、東急 田園都市線などは軒並み順位を下げています。

 

首都圏 路線別 地価上昇率ランキング

順位

路線名

H30平均(円/m²)

H29平均

上昇率(%)

前年順位

(スクロールするとすべての順位が表示されます。)

人気急上昇! 日暮里・舎人ライナー

特に、人気が急上昇しているのが、日暮里・舎人ライナーです。去年のランキングでは34位だったのが、一気にジャンプアップしてベスト10入りを果たしました。

日暮里・舎人ライナーは、JRの日暮里駅と埼玉との都県境に近い見沼代親水公園を結ぶ新交通システムとして、平成20年3月に開業しました。沿線は、古くからの住宅地ですが、かつては交通の便が悪く、「陸の孤島」とも呼ばれ、畑や空き地も目立つ地域でした。

ところが、開業後は宅地の開発が進み、マンションの建設も目立つようになりました。国土交通省によりますと、日暮里・舎人ライナーの朝のラッシュ時の平均混雑率は188%(平成28年度)と、都心の地下鉄並みの混雑となっています。

人気上昇の背景にあるのが、都心部のマンション価格の高止まりです。民間の調査会社 不動産経済研究所によりますと、東京23区で去年1年間に発売されたマンションの平均価格は1戸当たり7089万円と、平成3年以来、26年ぶりの高値となりました。価格の高騰でマンションを購入できる人が減り、ディベロッパーの中には、物件の供給を抑えるところも出ています。

こうした動きに後押しされて、都心に比べて地価が安かった日暮里・舎人ライナー沿線が、今、脚光を浴びているのです。駅ごとの地価上昇率をみてますと、赤土小学校前が6.01%、熊野前が6.00%など、すべての駅で東京都の住宅地の平均上昇率を上回っていることがわかります。

 

日暮里・舎人ライナー 駅別上昇率

駅名

H30平均(円/m²)

H29平均

上昇率(%)

地方でも回復傾向が鮮明に

地価の回復傾向は、地方にも広がり始めています。今回の地価公示では、東京・名古屋・大阪の3大都市圏を除いた地方圏の地価が0.04%と、26年ぶりにプラスに転じました。

全国を3大都市圏と9つの地方の12の地域に分類して、それぞれの地価上昇率をみてみますと、北海道、東北、九州・沖縄地方でもプラスになっているうえ、ほかの地域でも下落率が縮小していることがわかります。

また、リーマンショック直前の平成20年には、3大都市圏の地価上昇率が突出して高く、ほかの地域が軒並み下落していたのに比べて、今回の局面では、全国で、ほぼ満遍なく回復していることがわかります。これについて、国土交通省では、「近年は3大都市圏と地方圏の地価の差が大きくなる二極化傾向が続いていたが、全国的に和らいできている」としています。

地域別の地価上昇率

地方では再開発がポイント

地方で、地価を押し上げている要因の1つが、駅前などの再開発です。

3年前に北陸新幹線が開業した富山市。市内の住宅地の地価上昇率は0.1%と、4年連続でプラスとなりました。特に、富山駅から500メートルほどのところにある住宅地では、上昇率が5.0%と、今回、初めて県内で1位になっています。

地価を押し上げているのが、富山駅周辺で進む再開発事業です。マンションやホテルの建設が相次いでいるほか、駅の南北で分断されている路面電車の接続事業も進み、駅周辺の風景は大きく変わりつつあります。

地価公示の調査にあたった地元の専門家は「バブルのときは、とりあえず買って、値上がりしてから売るという動きが多かったが、最近は、再開発で新しい店舗が増えて、地域の魅力が増し、実際に住もうという人が増えてきている」と話しています。

しかし、こうした動きは、駅周辺に限られています。下の地図は、富山駅を中心に、市周辺のすべての調査地点をプロットしたものです。赤は地価が「上昇」、緑は「横ばい」、青は「下落」した地点です。2キロ~5キロ圏内では、ほとんどが緑か青になっています。

駅を中心に、距離別に地価の上昇率を分析してみると、駅から1キロ圏内の地価上昇率は3.22%、1キロ~2キロ圏内は0.66%、2キロ~5キロ圏内は0.06%と、駅から離れるにつれて、上昇率が鈍化していることがわかります。

地価の回復が全国に波及し始めているとは言っても、最寄駅からの近さなど、利便性による地価の二極化の傾向は、依然として、鮮明に残っていると言えそうです。

富山市の地価上昇率

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これから地価はどうなるのか?

今回の地価公示について、不動産の調査会社 東京カンテイの井出 武上席主任研究員は、全国的に地価の上昇がより鮮明になっているとしたうえで、「東京の不動産価格が高くなりすぎているとして、地方の大きな都市に不動産の投資マネーが流れ込んでいる。地方では、観光資源がどれだけあるのかや交通アクセスなど、人が呼び込めているかどうかで、地価の動きが大きく違う」と話し、地域によって地価に差が出てきていると指摘しています。

また、今後の見通しについては、「急に価格が上昇したり、相場から大きく外れたりしたエリアは、上昇率が鈍化する動きが出てくる可能性はあるが、現在の雇用や所得の回復傾向を考えると、地価の上昇はしばらく続くのではないか」と話しています。

渡邊 功
経済部
渡邊 功
斎藤 一成
ネットワーク報道部
斎藤 一成
山本 智
ネットワーク報道部
山本 智

<出典>

・鉄道データ、地価公示データ(国土数値情報:国土交通省)
・平成30年地価公示(国土交通省)
・白地図(国土地理院)

<分析方法>

※平成30年地価公示のデータには、調査地点に位置情報が付与されていません(27日時点)。このため、国土数値情報の平成29年地価公示のデータと紐づけることで、位置情報を算出しました。この結果、全調査地点(2万5988地点)のうち、評価替の227地点を含む408地点で、位置情報を取得できず、今回の分析の対象から外しています。
※データの分析、および、前処理には、QGIS 2.18、CARTO、EXCEL2011、OpenRefine 2.8を使用しました。

<首都圏路線別地価上昇率ランキング>

※国土数値情報の駅データを利用して、首都圏1都4県(東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城)にあるすべての駅の中心地点を算出し、各駅から2キロ園内にある住宅地の評価地点を抽出。抽出したポイントを路線ごとにまとめて平均価格を計算しました。
※鉄道路線の分類や区間は、国土数値情報の駅データを利用しています。ただし、路線名の表記はNHKの表記ルールに基づいて修正しています。また、路線のうち、上野懸垂線(上野公園モノレール)、ディズニーリゾートライン、東海道・東北・上越新幹線は、ランキングの対象から除外しています。