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紙おむつ 下水に流していいの?

お年寄りの介護や子育てに欠かせないのが「紙おむつ」です。でも使い終わったおむつの保管や処分に困っている人も多いですよね。そんな声を受けてインフラ官庁の国土交通省が動き出しました。「下水道」を利用しようというのです。いったいどんな方法なのでしょう? 去年、子どもが生まれた新米パパの記者が思いを込めて取材しました。
(経済部記者 野口恭平)

きっかけは女性の有志の会

下水道を使って紙おむつの処理を簡単にできないかー

アイデアを発案したのは、国土交通省や不動産会社、住宅設備メーカーなどで働く女性の有志の会だったそうです。高齢化がますます進む将来を見据え、これからの住宅にどんな設備や機能が必要かを議論しました。

会が2年前にまとめた報告書には、「体重計つきのトイレ」「壁や床が汚れてもシャワーで流せるユニットトイレ」といった実用的なアイデア。「自動運転でイベント会場に駆けつける移動式トイレ」といったユニークな提案もありました。このうちの1つが、紙おむつを燃えるゴミとして出さずに、下水道に流してしまうという発想でした。

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高齢化で増えるおむつのゴミ

使い終わった紙おむつの処理に困っている人は少なくありません。まずは、介護の現場の声を取材しました。

訪ねたのは東京都足立区の特別養護老人ホーム。入居者およそ100人のうち、9割のお年寄りが紙おむつを利用しています。施設では、1日4回、紙おむつを交換しています。感染病の予防やにおいを減らすため、使い終わったおむつは一つ一つ小袋に入れてから、大きな袋にまとめています。

職員にとっては手間のかかる、負担の大きい作業です。1日に出るおむつのゴミは200キロ以上になるといいます。水分を含んだおむつでぱんぱんになったゴミ袋は1つ20~30キロの重さ。私も持ち上げてみましたが、動かすのは、結構な重労働でした。

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おむつの業界団体「日本衛生材料工業連合会」によりますと、高齢化で大人用のおむつの出荷は急増しています。去年の出荷は枚数にすると78億枚。8年前の1.4倍に増え、今後も増えていきます。介護施設だけでなく、一般の家庭でも、おむつの処分が課題になっていくと見られています。

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子育てママも困ってます

子育て世代にとっても、おむつの処分はちょっとした負担です。新宿区の子育て支援施設でママたちの声を聞きました。

施設は0歳から3歳までの子どもが遊ぶスペースが整備され、賑わっていました。おむつの交換台もありますが、使い終わったおむつは捨てずに、持ち帰るよう求めています。ですので、ママたちはみんな、使い終わったおむつを入れる小袋を持ち歩いていました。

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「袋が破れたら、かばんの中に中身が漏れそうでちょっと心配ですよね」ー 多くのママがそう話してくれました。かくいう私も去年、子どもが生まれた新米パパです。外出先の商業施設や高速のサービスエリア、公園などさまざまな場所でおむつ交換台を利用しています。

おむつを捨てるゴミ箱があるところは少ないので、自宅に持ち帰っています。燃えるゴミの日まで、においが気になるので、家には専用のゴミ箱を備えました。やっぱり、子育て世代にとっても、おむつの処理は悩みの一つです。

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動き出した国交省

介護の現場や子育て世代の声、そして、冒頭の「女性の会」のアイデアを受けて動き出したのが国土交通省です。ことし1月、大学教授などでつくる有識者会議を設け、紙おむつを下水に流すアイデアを実現できないか、検討を始めたのです。

いくつか案がありますが、有力なのが、紙おむつを細かく切り刻む装置をトイレにつけて、下水に流す方法です。マンションや大きな介護施設などでは、大型の装置で、おむつをまとめて処理する方法も検討します。2018年度から、国土交通省の研究施設などで、実験を始める予定です。

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試作機の開発も始まってます

国の動きをみて、おむつを細かく粉砕する機械の開発を始めた企業もあります。福岡県中間市のメーカー「フロム工業」です。もともと、台所ででる、生ゴミを細かく刻んで、下水に流す「ディスポーザ」と言われる装置を製造・開発しています。

会社では、介護施設などで使う紙おむつの処理機を試作しました。例えば、2枚の大人用おむつなら約30秒で細かく刻み、水と一緒に流してしまいます。ただ、おむつには水分を吸い込む素材が使われています。下水の中で膨らんで、つまってしまうおそれがあります。会社では、おむつを完全に流しきる工夫を続けています。

会社の尾畑宇喜雄社長は「紙おむつをポイと下水道に流せるようにして、ママさんや介護関係者を助けてあげたい」と話しています。

2021年度に実現?

ただ、実現に向けては課題もたくさんあります。まずは設備。おむつを切り刻む機械の開発はもちろん、今の下水管は使えるのか検証が必要です。街の地下に複雑に張り巡らされた配管が詰まってしまうおそれも、有識者会議では指摘されています。

下水の処理施設のポンプなどに負担がかからないかも考えなければなりません。おむつの素材を見直す必要がないかも検討が必要です。設備を整備する費用の負担をどうするか、おむつを下水に流す場合の使用料をどうするか、といった点も課題です。下水事業を運営するのは自治体ですから、考えを聞く必要があります。

国土交通省では、こうした課題を検証して、2021年度に実現が可能か判断するといいます。その頃だと、私の子どもは4歳。さすがに、おむつはいらなくなっていると思いますが、どんな結論になっているか注目していきたいと思います。

野口 恭平
経済部記者
野口 恭平
平成20年入局
徳島局をへて
流通・小売業界など取材
現在は国交省を担当