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野菜の輸入 激増! 意外な理由

今、かつてなく野菜の輸入が増加しています。天候不順の影響で国内の出荷量が減っているキャベツでは、去年の同じ時期に比べて、なんと6倍。キャベツのほか、白菜やレタスも1か月の輸入量としては過去最高となっています。これまでも野菜が品薄になったことは幾たびもありましたが、これほど輸入量が増えたことはありませんでした。なぜ今、輸入が激増しているのか?その背景を探ってみると、天候不順や価格高騰だけにとどまらない意外な理由が見えてきました。
(経済部記者 佐藤庸介 加藤ニール)

キャベツが足りない!

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カット野菜の大手メーカー「サラダクラブ」が、3月1日に急きょ記者会見を開きました。萩芳彰社長が明らかにしたのは、「輸入キャベツの導入」です。ミックスサラダなどに使う千切りのキャベツが国産だけではまかなえなくなり、一部の商品を輸入モノに切り替えるというのです。

去年秋の台風や長雨それに冬場の低温の影響で、とりわけキャベツや白菜は小売価格が平年の2倍を超える高値となり、比較的価格が安定しているカット野菜がスーパーなどで人気となっています。この会社では生産量を例年の1.3倍に増やしていることもあり、需要に応えるだけの国産キャベツを確保することが困難になってしまったのです。

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ことし5月中旬までの緊急的な措置だとしていますが、輸入キャベツを使うのは平成11年のこの会社の設立以来、初めてだということです。「企業努力を重ねてきたが、キャベツの生産量や価格の回復が見通せず、安定供給のためには今回の対応を取らざるを得なかった」と、国産キャベツにこだわってきた萩社長は苦渋の表情を見せました。

かつてない輸入量に

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国産野菜の品薄感が強まる中、急増しているのが輸入です。東京税関のまとめによりますと、ことし1月に日本に輸入された野菜は、キャベツが去年の同じ月に比べて約6倍の1万3600トン、白菜が約8倍の2200トン、レタスが約2倍となる4900トンに上っています。1か月の輸入量としてはいずれも過去最高、まさに記録的な量になっています。

中国産の品質が向上!?

それにしても、天候不順で野菜が品薄になることは以前にもありました。ただこれまでは、キャベツや白菜はとりわけ鮮度が求められる葉物野菜だけに、これほど輸入が増えることはなかったわけです。

では今、輸入が激増しているのは、なぜなのか?関係者を取材してみると、まず聞かれるのが「海外産の品質向上」です。輸入されるキャベツと白菜の場合、実にその9割以上が中国産。その品質が向上しているというのです。

輸入を手がけている商社によると、中国で国産と同じ品種を栽培してもらうなど日本側の顧客の要望を取り入れながら生産していて、納入先からも「味は国産と変わらない」という評価を受けるにまでなっているということです。さらに、広大な大陸各地で生産していることから、注文に応じて臨機応変に必要な量を確保しやすいと商社の担当者は口をそろえます。

ライフスタイルの変化も

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もう1つの理由は、われわれ消費者のライフスタイルの変化です。あらかじめ刻まれて、袋から出せばすぐに食べられるカット野菜やサラダの人気が高まっていることが示すように、いわゆる中食や外食向けの需要が増えているのです。農林水産政策研究所によりますと、主な野菜の加工・業務用比率は2015年度に57%と、15年前に比べて6ポイント上昇し、すでに家庭向けを上回っています。

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家庭向けの野菜を扱うスーパーでは、生産量が少なくなって値上がりすると、野菜の大きさを4分の1や8分の1などに小さくして販売していて、販売量が調節されます。しかし、外食や総菜チェーンは、メニューが決まっていますから、何とか必要な野菜を確保しなければならず、国産が足りなければ輸入するしかありません。

輸入野菜 今後は? 見方分かれる

「海外産の品質向上」と「ライフスタイル変化への対応」。こうした要因が今の輸入激増につながっていることが見えてきました。ただ、輸入野菜の今後については見方が分かれています。

1つは、今の水準ほどではないにせよ、葉物野菜でも輸入が一定程度定着していくという見方です。その理由として、天候不順による国産野菜の生産量の変動が大きくなっているとして、安定調達のため輸入に頼る会社も増えてくるという考えです。

もう一方は、時期が来れば天候不順の影響もなくなり、供給量も増えるため、自然と輸入量も元に戻るという見方。そうすれば価格も平年並みに戻るし、外食では大手を中心に国産野菜にこだわっているチェーンが多いからという理由です。

野菜の自給率は生産額ベースで78%。ほとんどの品目で輸入が自由化されているにもかかわらず、高い自給率を誇る珍しい存在です。輸入が定着して自給率が低下していくことになるのか。今後こそその動向が注目されます。

佐藤 庸介
経済部記者
佐藤 庸介
平成13年入局
釧路局をへて経済部
現在、流通・商社を担当
加藤 ニール
経済部記者
加藤 ニール
平成22年入局
静岡局 大阪局をへて経済部
現在、流通業界を担当