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仮想通貨は“通貨”ではない!?

コインチェックで起きた仮想通貨の巨額流出やビットコインの価格の乱高下などで仮想通貨への注目度が一段と高まっています。市場が急拡大する仮想通貨は各国政府も看過できない存在で、規制を強化しようという動きも相次いでます。
こうした中、世界中から政財界のリーダーが集まった1月のダボス会議では「仮想通貨とどう向き合うか」が大きなテーマとなりました。ダボス会議での議論を通じて、仮想通貨の将来について考えます。
(経済部記者 小田島拓也)

仮想通貨 ダボス会議でもテーマに

スイスの山あいの街で、毎年、開かれるダボス会議。世界各国から政財界のリーダーや知識人が一堂に会し、世界経済や安全保障、環境対策など世界が抱える課題について議論します。

1月26日までの4日間の日程で開かれたことしの会議は、トランプ大統領に注目が集まりましたが、その一方で、大きなテーマとなったのが仮想通貨でした。

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仮想通貨は“通貨”なのか

「仮想資産バブル」と題して行われたセッションには、著名な経済学者やスウェーデン中央銀行の副総裁、ベンチャーキャピタルの共同創業者らが参加しました。

まず、議論となったのは、仮想通貨が、“通貨”たりえるかどうか。

パネリストたちは「価格が乱高下するため、給与の受け取りや納税などに使えない。資産とは呼べるが、通貨の基準を満たしていない」「支払いの手段としては適さず、通貨としてはかなりお粗末だ」という認識で一致しました。

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しかし、仮想通貨の将来性に話が及ぶと、大きく意見が分かれました。

ベンチャーキャピタルの共同創業者は、多くの新技術に投資してきた経験をもとに「仮想通貨が中央銀行という存在なしでも、信頼できることを示したのは驚くべきことで、これまで見てきたどの発明よりも大胆で意義深い」と述べて、解決すべき課題はあるものの、今後、さらに利用が広がっていくという見方を示しました。

これに対し、2013年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカ・エール大学のロバート・シラー教授は「おもしろい実験ではあるが、価格の根拠はあいまいで、永続的に私たちの生活で使われることはないだろう」と述べました。

シラー教授は、ITバブルの崩壊やサブプライム危機への警鐘を鳴らしたことで知られ、セッション終了後、NHKのインタビューに応じ、「価格の乱高下は、人々の感情に訴えかけ興奮させるが、すでにバブルの様相を呈しており、危険な投資であることを認識すべきだ。仮想通貨や仮想通貨を発行して資金を集めるICOについても、不正な投資や取り引きを野放しにしないため規制を導入すべきだ」と述べました。

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仮想通貨 規制の在り方議論

仮想通貨への規制をめぐっては別のセッションでも議論されました。

アメリカのムニューシン財務長官は「仮想通貨が違法な行為に使われていないか、確かめたい」と述べ、今後、G20財務相・中央銀行総裁会議などで、仮想通貨に対する規制で世界各国が協調できるかを議論したいという考えを示しました。

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また、IMF=国際通貨基金のトップを務めるラガルド専務理事も、IMFはすでに仮想通貨のリスクとメリットについて分析と監視を始めているとしたうえで、「仮想通貨の匿名性や透明性の欠如、それに、マネーロンダリングやテロリズムの資金源の隠蔽につながる事実は受け入れられない。監視し続ける必要がある」と述べました。

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フェイスブックが仮想通貨の広告禁止

企業の間でも対応が広がっています。アメリカのフェイスブックは、仮想通貨などの広告が「誤解を招きかねず、虚偽を助長する可能性がある」として全世界で禁止すると発表しました。また、イギリスやアメリカの大手銀行は、ビットコインなど仮想通貨の値動きが激しいことから、グループが発行するクレジットカードでは、顧客が仮想通貨を購入できない措置を相次いでとり始めています。

これだけ価格が乱高下し、市場が急拡大している中では、各国政府や企業が神経をとがらせるのは当然とも言えます。

仮想通貨をめぐる規制の動きが広がりつつあることについて、ダボス会議に参加した三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長は「決済の手段ではなく、投機の要素が強まり、バブルに近い現象が起きている」と前置きしたうえで、「仮想通貨を支えるブロックチェーン技術が大きな可能性を持っていることも事実だ。各国の当局は将来の可能性を摘み取ることなく、いかに安定的な仕組みをつくっていくかを考えてもらいたい」と述べました。

傘下の三菱東京UFJ銀行は、みずからが発行主体となり、ブロックチェーンの技術が持つ利便性を生かしつつ、価格の乱高下に対応するため、日本円との交換レートを固定する独自のデジタル通貨を発行する準備を進めています。

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仮想通貨の未来は?

政府・中央銀行のような確固たる管理者はなく、ブロックチェーン技術で通貨の偽造や取り引きの改ざんを防ぎながら、迅速かつ低コストでの取り引きや送金を可能にする仮想通貨。

その革新性・利便性への期待から市場が急拡大する一方、投機マネーの流入で価格が乱高下したことで、このところ仮想通貨の“危うさ”がクローズアップされています。

こうした中、日本では大手取引所「コインチェック」から巨額の仮想通貨が流出する問題が起き、金融庁は事業者への監督強化に動きつつあります。しかし、これについて専門家の間では、セキュリティー対策が不十分な取引所が狙われたもので、ブロックチェーン技術そのものの革新性は全く揺らいでいないという受け止めで一致しています。

利用者保護やマネーロンダリングへの悪用防止など、仮想通貨が抱える課題をどう克服していくのか。社会に大きな影響を及ぼす存在となった仮想通貨の正と負の両面にしっかりと向き合い、考える時期を迎えているとダボス会議の議論を取材しながら感じました。

小田島 拓也
経済部記者
小田島 拓也
平成15年入局
甲府局 首都圏をへて経済部
現在 金融担当