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海がないのにエビを養殖 できるの?

日本人が大好きなエビ。特に東海地方では「名古屋メシ」の人気メニューの1つにエビフライが入るほどのエビ好きです。大半のエビは、東南アジアや中南米などから輸入されていますが、エビ好きの東海地方でエビ養殖に挑戦する人たちがいます。それも海のない岐阜県で…。一体、どんな養殖なんでしょう?
(岐阜放送局多治見支局記者 小尾洋貴)

自分でエビ育てちゃおう!

日本人が食べるエビのほとんどは海に生息する「ブラックタイガー」や「車エビ」といった種類です。九州や四国などの海でも養殖されています。

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それを海のない岐阜県で始めた人たちがいます。岐阜県東部の瑞浪市にある農業法人「ハイランドファーム東濃」です。農業法人では今、60万匹のエビを養殖しています。

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代表の齋場直樹さんは「自分もエビが大好き。もっと手軽にエビを食べられる環境を作りたい、というのが養殖を始めた原点です」と話します。

海じゃないのにどうして育つ?

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最初に考えたのがどの種類のエビを養殖するか。選んだのは中南米原産の「バナメイエビ」。輸入エビとしてスーパーなどでよく見かけます。ほかのエビに比べて成長が早く、大量出荷に向いているのだそうです。

次に考えたのが水でした。養殖には大量の水が必要ですが、川の水を利用すると、台風などで大雨になった場合、大気中の不純物が混じって酸性度が高くなり、エビを育てにくくなるというのです。そこで齋場さんが目をつけたのが地下水。瑞浪市は豊富な地下水で知られています。

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地下500メートルからくみ上げる地下水は水質がよく、水温は夏でも冬でも20度前後で安定しています。バナメイエビの養殖に最適な水温は25度。地下水を加熱して水温を5度だけ上げれば済むのでコストも安く済みます。

でも、そもそも地下水でエビって育つのでしょうか? 齋場さんは、地下水にミネラルや塩分、そして独自に開発した栄養分を加え、5年かけてバナメイエビがよく成長する環境を作り出すことに成功したのです。

鮮度にこだわり

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さらに配送にも力を入れました。生で食べられる新鮮な状態で出荷できるよう冷蔵機能付きの車を購入。運送業者に頼まずに、顧客の指定した時間に合わせてエビを届けられるようにしました。実際に70キロ以上離れた大垣市のホテルから注文が入った時には、水揚げしてから1時間程度でホテルまで届けていました。

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ホテルの料理長も新鮮さに満足。「生食が可能なので『カルパッチョ』や『カクテル』でお客さんに提供することができます」と話しています。

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目指すはエビの特産地

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齋場さんの目標は、エビを海のない岐阜県の特産品に育てることです。今、養殖しているエビは愛知県や岐阜県など東海地方に店舗を持つ食品スーパーに出荷していくことが決まっています。ただ特産品にするためには、もっともっと生産を増やし、販路を拡大していくことが欠かせません。

市場で養殖仲間を

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そこで今、注目しているのが大垣市の「公設地方卸売市場」。野菜や魚などを地元の商店などに供給する流通の拠点です。ただ大型ショッピングセンターの進出で地元の商店が減り、市場で取り引きされる商品も徐々に減少しています。

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齋場さんは、この市場の主力商品をバナメイエビにしたいと考えています。このため市場に出入りする商店や問屋の人たちをエビ養殖の仲間に引き入れようとしています。養殖事業に必要な設備や人員、コスト、何匹くらいから養殖を始めれば成功しやすいか、齋場さんが試行錯誤の結果つかんだノウハウをすべてオープンにしているのです。

実際に市場の有力仲買人が養殖仲間に加わることになり、準備を始めました。地元の大垣共立銀行も資金面の手伝いをすることになっています。エビ養殖が広がれば、地域の新たな産業に育ち、雇用も生まれると考えています。齋場さんは、大垣市は名古屋はもちろん関西、北陸へのアクセスもよく、エビ流通の拠点になるのではと、夢を膨らませています。

海なし県で始まったエビの養殖、地方経済の活性化の代表例に育っていくでしょうか? 注目です。

小尾洋貴
岐阜放送局多治見支局記者
小尾洋貴
平成28年入局
地域経済を担当