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電気をどうつくる?議論再び本格化へ

私たちが使っている電気をいまどう発電しているか、日本の最近の内訳をご存じですか?分かりやすくスマートフォンを電池切れの状態から100%にフル充電するとして例えてみると、100%のうち、15%が水力や太陽光などの再生可能エネルギー、2%が原子力。そして残りの80%以上が石炭などを燃やす火力発電で賄われている計算になります。この割合を将来どうしていくのかは、国がエネルギー政策として「基本計画」という形でまとめていますが、これから来年にかけて計画の見直しの議論が本格化します。今回はその焦点を解説します。(経済部記者 大川祐一郎)

始まった議論

国の「エネルギー基本計画」は3年に一度見直され、今回の見直しはことし8月から始まっています。

現在の計画がまとまったのは、東日本大震災と福島第一原発の事故から3年後の2014年。原子力を安全性の確保を前提に「重要なベースロード電源」と位置づけるとともに、太陽光など再生可能エネルギーの導入を最大限加速化するなどとしました。

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ことし8月に開かれた会合

火力発電に大きく依存

そのうえで現在の計画に沿って、2030年度には、水力や太陽光発電などの再生可能エネルギーを震災前の2倍以上の「22%から24%」に、原子力は、震災前の約3割から「22%から20%」に引き下げ、残りの56%程度は火力発電という割合にするという目標を定めました。

しかし、現状は大きく違っています。

冒頭でスマホの充電に例えてご紹介したように、昨年度は再生可能エネルギーが15%、原子力は2%、残りの8割以上が火力発電でLNG=液化天然ガスや石油、石炭を燃やして発電する火力発電に大きく依存する状況が続いています。

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今回の見直しは、この割合の目標自体は変えずに、目標に近づけるためにどうすべきかが大きな焦点で、火力発電の割合をどのように減らし、再生可能エネルギーと原子力の割合をどう増やすかを中心に検討されます。

再生エネルギーの課題とは

太陽光などの再生可能エネルギーの割合は、震災後、増加しています。しかし、さらに増やすには、さまざまな課題が浮上しています。

その1つが、発電した電気を送る送電網の容量不足です。

風力が有望な東北地方などでは、送電網の容量が足りず、多額の費用をかけて送電線を整備しないと空きがないとされています。

また九州や四国では、大型連休など日中の電力需要が少ない時期には、太陽光が日中の発電の7割を占める日もあり、普及がさらに拡大すると、供給が増えすぎて電力を捨てないとトラブルが起きて、大規模な停電につながるのではないかという懸念まで出てきています。

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さらに日本では、太陽光などの発電コストの高さも課題です。

IEA=国際エネルギー機関によりますと、世界全体では、再生可能エネルギーへの投資額が年間30兆円にも上り、原発への投資額の2.5兆円を大きく上回っています。

巨額の投資に伴って世界的には太陽光発電などのコストは急激に下がっていますが、日本では太陽光や風力の発電コストはヨーロッパに比べ2倍程度という状況です。

何がコストを高くしているのか、送電設備の問題も含めて、今回の大きな論点になる見通しです。

原子力は?

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鹿児島県の川内原発

一方の原子力ですが、現在、国内で再稼働した原発は5基で、再稼働は進んでいません。

再稼働するための安全対策費用のコストが増大するとともに、立地自治体の同意を得ることも簡単ではないのが現状です。

こうした中、電力会社の中には、古い原発を再稼働してもコストが見合わないとして、原発を廃炉にするという選択肢も現実味を帯びるようになっています。

また、いわゆる核のゴミの問題も、依然として解決のめどは立っていません。

ただ政府は、現在国内に40基余りある原発の再稼働が最優先という姿勢で、30基程度が再稼働すれば、2030年度の目標の「22%から20%」の比率になると見込んでいます。

迫られる温暖化対策

政府が原子力発電を続ける理由の1つが、原発は温室効果ガスを出さず、地球温暖化対策に有効とされる点です。

一方で震災後、世界的な温暖化対策では大きな動きがありました。去年合意された温暖化対策の国際的な枠組みのパリ協定です。

日本は、協定を踏まえ、2050年に温室効果ガスを80%削減するという目標を掲げています。この目標をクリアするためには、火力発電の割合の縮小など、エネルギー政策でも対応が求められる重要なテーマになっているからです。

この温暖化対策に重点を置いて、経済産業省は、すでに始まっている見直しと並行し、2050年を見据えた長期的な政策の方向性も議論することにしています。

この中では、電気自動車の普及を目指す、世界的なEVシフトの動きなども想定しながら議論したうえで、来年夏にかけて基本計画にも反映させたい考えです。

議論をどう見ていくか

震災と原発事故以降、日本では、節電意識が定着する中で、原発の安全性にはいまも厳しい視線が注がれる一方、太陽光発電なども一定程度増えました。

しかしこの間、世界で多くの国々が温暖化対策に取り組み始めた中で、日本が電力の大半を火力発電に依存する状況が続いているのもまた事実です。

電力をめぐるさまざまな難問にどう向き合い、日本の将来像を描き直すのか。クリスマスが近づき、街はイルミネーションで彩られていますが、その明かりを生みだす電力について今後本格化する議論は、私たちにとって見過ごせないものになりそうです。

大川祐一郎
経済部記者
大川祐一郎
平成23年入局
青森放送局をへて経済部
エネルギー担当