ニュース画像

ビジネス
特集
景気はどうですか? 社長に聞いてみた

日経平均株価が21年ぶりの高値。株式市場が沸いています。今の景気は「いざなぎ景気」を超えた、とも言われています。しかし、街の消費者から聞こえてくるのは「回復の実感はない」という声、声、声…。

今月はちょうどスーパーやデパートの中間決算のタイミング。小売業界の社長は、景気をどう見ているのか、聞いてみました。
(経済部記者 中島圭介、加藤ニール、長野幸代)

不況?安くても売れない

「いざなぎ超えの実感はない。ふだん着の消費は<不況>といっていいぐらい厳しい」

大手衣料品チェーン「しまむら」の野中正人社長の発言です。消費者の節約志向が根強い中、手ごろな価格の品ぞろえで成功してきた会社トップの口から「不況」という言葉がでてきたのは、正直、驚きでした。

しまむらのことし8月末までの中間決算は、本業のもうけを示す営業利益が5%程度の減益。1年間の業績の見通しも下方修正しました。

思うように売り上げが伸びない。野中社長は先行きが見通せない生活への不安から消費を控える「気分による不況」だと指摘しました。

ニュース画像

デフレ再来?値下げ継続

「日常の生活用品の価格は全体としてどんどん下がっている。コスト削減が可能になった商品から、さらに値下げをしていきたい」

「イオンリテール」の岡崎双一社長からも厳しい発言が。イオンは、自社開発したプライベートブランドの一部の食品や日用品を、ことし8月に平均10%値下げしました。その結果、値下げ商品の売り上げは1.5倍に拡大。節約志向の高まりを象徴する動きだと分析しています。

消費者のニーズに応えるためには、さらなる値下げに踏み切らざるをえないというのがイオンの考えです。

大手スーパーでは、「西友」も8月に一部商品の値下げに踏み切りました。小売の現場からは、かつてのデフレ不況の頃のような価格競争が再来している、という指摘が聞かれます。

ニュース画像

成長コンビニから見える明暗

「利用客の財布のひもが緩む時代ではない。常に厳しい目で商品を見ている」
(ローソン・竹増貞信社長)

コンビニ業界は、売り上げの拡大が続いています。それでも消費に対する見方は慎重です。コンビニでも最近は値下げや、値引きセール、さらに、ポイントがもらえるキャンペーンを増やしています。

定価販売のイメージが強いコンビニでも、消費者の節約志向を意識しなければ生き残れない時代に入っているといいます。

ただ、竹増社長からはこんな発言も。

「お客が価値を感じるもの、ニーズに合うものならば買ってもらえる」

味にこだわった高級感のあるデザートは、通常の2倍以上の価格でも売り上げが伸びているといいます。コロッケなど、総菜類の売り上げも好調です。手間をかけずに夕飯のおかずを用意したいという働く女性が、仕事帰りに買い求めていくそうです。

ニュース画像

苦境デパートに明るい兆し?

この中間決算で、実は、最も意外だったのが、デパート業界トップの発言でした。

「いわゆる中間層の売り上げは上半期はマイナスだった。しかし、徐々に持ち直し、足元の9月ではプラスに転じた。反転の兆しがある」
(高島屋・木元茂社長)

ニュース画像

「化粧品がにわかに爆発的に売れだした。外国人旅行者にも売れているが、日本の消費者向けの売り上げが顕著に伸び、今までと違って、しっかりと上がってきている」
(J.フロント リテイリング・山本良一社長)

ニュース画像

デパート業界は、ネット通販などに押されて主力の衣料品の販売不振が続き、店舗の閉店などが相次いでいます。

デパート2社の今回の中間決算は増収増益でした。外国人旅行者向けの販売と、株価上昇の恩恵を受ける富裕層向けの販売に支えられました。

肝心の中間層向けは、というと、全体では「まだまだ」なのですが、社長の発言のように明るい兆しが見えているということです。実際に東京・丸の内にあるデパートの化粧品売り場をのぞいてみました。

売り場は20代や30代の若い女性で賑わっていました。ドラッグストアやネット通販で化粧品を買っていた若い世代が、デパートに来るようになったということ。売れ筋は、1万円から2万円台の化粧水や美容液。保湿性や美白効果の高い商品です。

お客さんに聞いてみると、「デパートの化粧品は少し高い感じがしますが、効果があるならば高くても買います」と話していました。

このデパートの化粧品の売り上げは、半年間でおよそ25%伸びたと言います。高いなりの効果があるならば、お金を使う、そんな消費マインドが少し、でてきているようです。

ニュース画像

実感なき景気回復の中で消費は

ほかの小売企業の取材も重ねましたが、多くの社長から聞こえてきたのは、「無駄なお金は使いたくないという消費者が増えている」「費用対効果、コストパフォーマンスに一段とシビアになっている」という声でした。

景気は回復しているとはいえ、賃金の伸びは今一つ。そうした中で、スーパー・専門店・ディスカウントストア・ネット通販と、さまざまな小売り企業が、消費者をとりあう競争が続いています。

「もっと安く」を求める消費者。しかし、「ちょっとした贅沢」や「ちょっと楽をしたい」、「よいモノならば買う」という消費者もいます。そういったニーズにどう応えるか、知恵の絞りどころだと感じました。

中島圭介
経済部記者
中島圭介
加藤ニール
経済部記者
加藤ニール
長野幸代
経済部記者
長野幸代