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独自の進化を遂げるタイのSNS

仕事やプライベートでのメッセージのやり取りだけでなく、食事の注文やタクシーの配車など、たくさんのサービスがスマートフォンのアプリで利用できるようになっています。

その舞台は東南アジアのタイ。実は日本以上にソーシャルメディアが普及し、隠れたソーシャルメディア大国とも言われているんです。このタイで人気を集めているのが日本でもおなじみのLINEです。独自のサービスを次々と打ち出し、激しいサービス競争を勝ち抜こうとしています。
(アジア総局記者 岩間宏毅)

タイは隠れたSNS大国

タイの首都バンコクにいると、スマートフォンやソーシャルメディアがいかに生活に欠かせない存在かがわかります。

駅の構内はスマートフォンの広告だらけ、電車の車内を見渡せば、若者のほとんどがスマートフォンの画面をのぞき込み、家族や友人とメッセージのやり取りをしています。

こうした事実は、データでも裏付けられています。イギリスの調査会社のまとめによりますと、タイのソーシャルメディアの普及率は67%、国民の3人に2人が利用している計算で、世界平均の37%はもちろん、日本の51%も大きく上回っています。さらに、1日当たりの利用時間も、平均40分の日本に対し、タイはその4倍以上の2時間48分というデータがあります。

タイの若い女性に話を聞きましたが、「仕事の連絡もLINEでやる」とか、「大学のリポートもSNSで提出した。スマートフォンはとても大事」という答えが返ってきました。

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LINEで金が買える!

数あるソーシャルメディアの中で、タイで人気を集めているのがLINEです。タイはLINEにとって、日本に次ぐ世界で2番目の市場になっています。

人気の理由は、豊富なスタンプでさまざまな感情を表現できることですが、ことし8月から、日本にはない一風変わったサービスが始まりました。

それはLINEを使った「金=ゴールド」の取り引きです。あらかじめ身分証明や銀行口座といった情報を登録しておくことで、スマートフォンを使って、リアルタイムで金を取り引きできるのです。手軽に誰でも参加できるようにと、取り引きの最低金額は1000バーツ、日本円にして3000円余りからとなっています。

もともとタイでは、貯蓄や投資の手段として金の人気が高く、街には金を販売する店がたくさん並んでいます。金の価格が上昇すれば、こうした店に行って金を売り、価格が下がれば、逆に金を買いに行くわけですが、このサービスを使えば、店に行かずネットで簡単に売買することができます。

実際にサービスを使い始めた女性を取材しました。この女性は1000バーツずつ、すでに5回にわたって金を購入していて、「金の価格動向をチェックしながら、いつでもどこでも投資できるので、とても便利です」と話していました。

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タイ発のサービスが次々と

LINEがタイで手がける独自のサービスはこれだけではありません。

去年春にはレストランなどと協力して、オートバイの運転手が食事を宅配するサービスを開始しました。その名もLINEMAN。このサービス、日本でもことし夏から本格的に始まっていますが、その元祖とも言えるのがタイでのサービスです。すでに加盟する飲食店は2万店に上っています。

私も先日、オフィスに残って仕事をしたとき、試しにこのサービスを使って、ピザを注文してみました。スマートフォンの操作は簡単で、注文から40分後には、ドライバーがオフィスまで料理を持ってきてくれました。

こうしたサービス、配車アプリ大手として知られるアメリカの「ウーバー」やシンガポールの「グラブ」もタイで展開していて、各社が業種の垣根を越えて、サービスを競い合っている状況です。

LINEも負けじと、今度はタクシー業界と協力し、年内にLINETAXIと名付けた配車サービスを始める計画です。

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東南アジアのSNS競争は熾烈

こうしたスマートフォンやソーシャルメディアの普及は、タイのみならず、東南アジア全体に広がっています。

東南アジアでは自宅に固定電話がなくても、スマートフォンは持っているという人が多く、それだけにソーシャルメディアが生活に欠かせない存在になっているのです。

例えば、アジア最後のフロンティアと呼ばれるミャンマーでは、スマートフォンの普及率が90%近くに上り、バイバーなどのメッセージアプリが広く利用されています。

人気のメッセージアプリも国ごとに違うのが東南アジアの特徴です。タイではLINEが人気ですが、シンガポールやマレーシア、インドネシアではワッツアップが、フィリピンやベトナムではフェイスブックメッセンジャーがいちばん人気です。

それぞれのアプリが利用者を増やそうと、新たなサービスでしのぎを削っていて、今後ますますアジア発の新しいサービスが出てくることが予想されます。

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競争勝ち抜く タイのLINEの戦略は

こうした競争を勝ち抜くためにタイでLINEが目指しているのが、業種の垣根を越えて、利用者の生活に必要なあらゆるサービスを提供する”プラットフォーム”となることです。

LINEタイランドのアリヤ社長は、このプラットフォーム戦略を”mobile portal”と名付けて推進していることを強調しました。

「スマートフォンのアプリは、200万以上存在していると言われていますが、利用者がそれぞれのアプリをダウンロードして試してみることはしません。日常使われているアプリの数はわずか5つにすぎないのです」

「だからこそ、われわれは個々のアプリを作るのではなく、利用者の日常生活に必要なサービスをLINEで提供することにしました。LINEですべてのサービスを利用できれば、利用者はほかのアプリをダウンロードする必要はないからです」

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アジアの新興国では、これまで先進国がたどってきた成長のスピードをはるかに上回るペースで、スマートフォンという新たな文明の利器が普及しています。

世界の企業が競い合う中で成功を収めるには、利用者のニーズに合致したサービスを、いかに迅速かつ柔軟に打ち出せるかが大事だと実感しました。

岩間宏毅
アジア総局記者
岩間宏毅
平成12年入局
経済部で自動車、金融・証券、
経産省などを取材
現在 アジア総局