ニュース画像

WEB
特集
会社の電話 もういらない?

会社の机には、パソコンに書類、そして、内線のボタンがたくさんついた固定電話…

新人時代、真っ先に受話器を取るよう教育された人も多いのではないでしょうか。そんなオフィスの姿が、今、変わりつつあります。固定電話は不要。むしろ、相手の時間を奪う“悪”と考える企業では、チャットやWEB会議を活用しています。会社に固定電話が必要とされた時代は、終わろうとしているのでしょうか。
(経済部・野上 大輔記者)

声の会話は5%

ビジネスで使う連絡手段としては、メールが急速に普及しましたが、固定電話は、社内をつなぐ「内線」と、外部との連絡に使う「外線」とで、職場のコミュニケーションの主役を張ってきました。しかし今、IT企業を中心に固定電話を置かない企業が増えはじめています。

その代わりに利用されているのが、チャットやメッセージをやり取りするSNS。効率的な連絡手段として、ビジネス用のチャットサービスが数多く登場しています。

オフィスに固定電話は置かない。企業向けのWEBサービスを展開するIT企業「スタディスト」も、そうした会社の1つです。社員どうしのやり取りは、主にチャット。社内コミュニケーションのおよそ95%はネットで完結し、電話や対面での会話は、残りの5%程度にとどまるといいます。

チャットでは、プロジェクトなどによってグループのメンバーを自由に組み替えながら、業務の報告や資料の共有、スケジュールの管理などを一括して行うことができます。

会社のホームページには、代表の電話番号が書いてありますが、その番号も、つながる先は社外の代行業者。必要なものだけ、担当者に文章のチャットとして届く仕組みです。

ニュース画像

働き方改革に不可欠

会社の鈴木悟史代表は、固定電話を置かない理由として、双方の時間が強制的に奪われることや、やり取りが記録に残らないことを挙げています。

「電話がかかってきた時点で、今、行っている作業を中断しないといけないため、効率性の損失につながりかねません。また、電話でのやり取りは記録されないので、電話が終わってからメモにしたり、情報を整理する必要がありますが、チャットならすぐに共有できます。働き方改革が叫ばれる中、いかに業務を効率的にして働いてもらうかが大事です」

「例えば、営業部の社員の子どもがインフルエンザにかかり、急きょ休む必要があるとき、社内のSNSで報告すれば、アポイントメントの代役などを複数の社員がすぐに手分けして引き継ぐことができます。電話の場合は1対1。伝達合戦になって情報を共有する力が弱いときがあります」

この会社では、場所にとらわれずに働くテレワークを認め、社員にはオフィスに来ることを強制していません。取引先との連絡にもチャットを利用しています。ただ、チャットによるコミュニケ-ションでも、相手の個性や性格を把握することは大事だということで、社員どうしが直接話す機会を定期的に作っているということです。

ニュース画像

増えるチャットの需要

企業向けのチャットサービスを提供している会社は、ここ数年受注を増やしています。

6年前にサービスを開始した「ChatWork」では、利用する企業の数が、2014年の3万9900社から現在は14万1000社と、およそ3年で3倍以上に増えたといいます。スマートフォンが普及し、社員がどこでも連絡をとれるようになったことや、SNSへの慣れが背景にあると分析しています。

この会社の山田葉月ディレクターは「電話からチャットへ、連絡手段の主体を移行する企業が増えています。IT企業だけでなく、最近は建設会社や介護事業者など、労働集約型の企業や中小企業にも広がっています」と話しています。

ニュース画像

電話重視の企業も

一方で、固定電話はやはり必要だという企業もあります。

ふるさと納税に関するサイトなどを運営する「トラストバンク」は、5年前の創業以来、オフィスに固定電話を置いています。

トラストバンクの広報担当の宗形深さんは、文章によるコミュニケーションでは足りない部分を、電話が補ってくれると考えています。

「文章だと、どうしても定型文になってしまうことが多く、細かいニュアンスは電話のほうが伝えることができます。ネットを活用した新しいツールは積極的に活用していきますが、人と人のつながりを保つために最も有効なツールが電話です。全国の取引先と連絡を取るとき電話だと方言や感情が伝わり、実際に会ったときの感動も違います」

また、すべてをネットに依存すると、不具合が起きたときに連絡がとれなくなるリスクもあるので、今後も一定数の固定電話をオフィスに置き続けるということです。

ことし4月には、会社の外線にかかってきた電話を社員が自分のスマホで受けることができるようにして、使い勝手を高めたということです。

ニュース画像

多様化がカギ 働き方も連絡手段も

職場に電話を取る担当者を置いて、伝言する慣習は、近い将来、消えていくかもしれません。

消費者対応を24時間化するために、電話からメールやチャットに移行するところも増えています。ただ、電話をなくす企業も、残す企業も、相手の性格などを把握して利用することや、場面によって使い分けは必要だという声が多かったのが印象に残りました。

企業には、社員の働き方の多様化が求められているように、コミュニケーションの手段も多様化して、上手に使い分けることが必要になっていると感じます。

野上大輔
経済部
野上大輔 記者
平成22年入局 横浜市出身
金沢局を経て経済部
現在、情報通信業界を担当