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“ラン活” なぜ早まっているの?

新年度になって2か月以上が過ぎました。
この春、小学校に入学した新1年生も、そろそろ学校生活に慣れてきた頃かと思いますが、早くも来年の新入学に向けた準備が始まっています。
“ラン活”(ランドセル活動)という言葉さえ登場しているランドセル選びです。なぜこんなに早い時期からランドセルを選ぶ人が増えているのでしょうか。(仙台放送局 成田大輔記者)

始まったランドセル商戦

6月初め、大手デパート、三越伊勢丹ホールディングスの全国の店舗で、人気のランドセルの販売が始まりました。一部の店では、開店4時間前の午前6時から並ぶ人が出るほどの人気ぶり。お目当ては、皇室御用達のかばんメーカーの職人が手作りした8万円ほどのランドセル。

私が取材した仙台市内の店でも、開店と同時に大勢の人が売り場に向かい、色やデザインを確かめて、われさきにと注文していました。

お隣の山形県から来た男性は「目当ての色のランドセルは2個しかないと聞いていたので、どうしても手に入れるために朝から並びました」と話していました。
また会社を休んで注文に来た男性もいました。「長く使うものなので、いいものを贈りたいと、去年からどのブランドのランドセルを買うか決めていました。どうしても欲しかったんです」と話していました。

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過熱 早期化するラン活

ランドセル商戦は、過熱・早期化の一途をたどっています。
総務省の家計調査で調べてみると、ランドセルなど「通学用のかばん」の支出がピークになるのは、以前は入学式直前の3月でした。しかし、ここ数年は夏ごろから徐々に増え始め10月がピークになっています。

ことしは、ピークがさらに早期化する気配です。

実際、大手スーパーのイオンが、来年春に入学する児童向けのランドセルの注文の受け付けをすでに3月から始めています。去年より1か月ほど前倒しの予約開始です。
またイオンはことしから、一年中、ランドセルの売り場を設けることにしたということです。

“シックスポケット”の一大イベント

なぜ、これほどまでにランドセルの商戦が過熱しているのでしょうか?

背景にあるのが少子化です。
厚生労働省によりますと、去年(2016年)の出生数は97万7000人と、初めて100万人を下回りました。1970年代前半の第2次ベビーブームのころは、およそ210万人でしたから、半分以下に減少しています。

そうした中で顕著になってきているのが、子どものために両親と父方、母方の祖父母、合わせて6人のお財布から資金が出る「シックスポケット」化です。子どもや孫の数が減る中で、子ども1人にかける金額が増える現象です。

特に小学校入学は、子どもの人生にとって最初の大きな節目とも言えるだけに、ランドセル購入は、まさにシックスポケットの一大イベントなのです。

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業界団体の「ランドセル工業会」に話を聞いたところ、ランドセルの平均価格は4万2400円この10年で7000円ほど高くなっています。

「なんとしても、孫のお気に入りのランドセルを贈りたい」
そんな思いを抱えた、おじいちゃん、おばあちゃんが、いち早くお気に入りのランドセルを確保しようと売り場に駆り立てられています。

私が仙台のデパートを取材した時も、孫のランドセルを買いに訪れた女性がいました。「孫は福岡県に住んでいて、ふだん、なかなか会えないので何かできることをしてあげたいんです」と話していました。

売る側のデパートやスーパーも、両親、祖父母が加わった一大イベントを確実に取り込もうと、競いあうように販売開始を早めています。

デパートの中には、高級化路線を強化し、ランドセルの色はもちろん、縫い糸の色や内側のデザインなどをパソコンを使って好みに合わせてオーダーメイドして予約注文するサービスを始めるところも出ています。

買う側、売る側の双方の思いが、ランドセルの高額化にも、つながっています。

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“落ち着いて選んで”メーカーの思い

一方、メーカーの中には、じっくり落ち着いて選んでほしいと新たな取り組みを始めるところも出ています。

全国各地に直営の店舗を構える老舗のランドセルメーカーの土屋鞄製造所は、去年は予約注文を受け付けるホームページにアクセスが殺到し、ネット注文が長時間ストップする事態となりました。各地の店舗にも客が殺到し、店の外まで行列が続く大混乱となりました。

「職人が思いを込めて作ったランドセルを落ち着いて選んでほしい」
このメーカーでは、ことしは注文を受け付ける1か月前の5月から店舗でランドセルの展示を始めました。

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職人で創業者の土屋國男さんも、各地の店舗に出向き、ランドセル選びのポイントをみずから説明しました。選ぶための時間を長くとって、混乱を避けようという狙いです。

店舗を訪れた母親は「子どもに好きな色を選ばせてあげたいので早めに選びに来ました。いっぱいあって迷いますが、じっくり決めたいと思います」と話していました。

実は私も去年、娘の“ラン活”を経験しました。
私が仕事で使っているかばんよりもずっと高級な子どものランドセル。親としては長く大切に使ってほしいと思う気持ちもある反面、傷がつくのをおそれず外でのびのびと遊び回ってほしいとも感じています。

成田大輔
仙台放送局
成田大輔 記者
平成15年入局
秋田局や社会部などをへて
仙台で震災や街ネタを担当