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格安か大手か どう選ぶ?スマホの契約先

格安スマホがシェアを伸ばす中、NTTドコモが新たな値下げプランを導入しました。自社のブランド力は大きな武器になるとして、格安スマホや大手の“第2ブランド”の値下げ競争からは一線を画してきたドコモの方針転換とも言える今回の値下げ。消費者にとってはどの携帯電話会社を選べばよいのか、ますます迷うところです。競争の構図はどのように変わったのか?何を判断材料にすればよいのか?改めて整理しました。(経済部・小田島拓也記者)

薄れる大手と“格安”の境界線

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「大手3社と格安スマホ事業者は、価格とサービスの面で似通ってきている」。mineo(マイネオ)のブランドで格安スマホ事業を手がけるケイ・オプティコムの責任者は、サービス開始3周年のイベントでこう述べました。強く意識しているのは、通信最大手NTTドコモが6月1日に始めた新たな値下げプランです。

ドコモの新料金で最も安いプランは4000円(通信量2ギガ・5分以内の通話かけ放題)。15年以上の契約者であれば、ここから600円割り引かれます。これまで、他社からの乗り換えを実質的に優遇してきた料金体系を廃して、長期利用者にとってのメリットを打ち出し、優遇して囲い込みたい考えです。新料金が適用されるのは当面、特定の2機種(富士通とサムスン電子の2万円から3万円台の新機種)の購入者に限定されますが、今後、対象端末を拡大していく方針です。

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一方、KDDIのグループ会社が手がけるUQモバイルとソフトバンクの第2ブランドのワイモバイルは、すでに大胆な値下げプランを導入しています。いずれもシェアを伸ばす格安スマホへの顧客流出に歯止めをかけたいという狙いがあります。

格安スマホに逆風 “こんなはずじゃ…”

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一方の格安スマホ陣営も必ずしも絶好調というわけではありません。格安スマホの関連で、昨年度、国民生活センターに寄せられた相談件数は1045件。前の年度に比べて3倍に増えました。「問い合わせや修理対応の窓口は電話しかなく、つながりにくい」「修理期間中の代替機の貸し出しサービスがなく、スマートフォンが1か月間利用できない」など内容はさまざま。

また、フリーテルブランドを展開するプラスワン・マーケティングに対して、消費者庁が明確な根拠がないにもかかわらず「業界最速の通信速度」とウェブサイト上に表示していたなどとして行政処分を行いました。

国民生活センターは、ホームページ上で「格安スマホこんなはずじゃなかった」という事例を掲載し、「サービスの内容に違いがあり、特徴をよく理解したうえで利用することが重要だ」と注意を呼びかけています。

不安に応え、サービス拡充の動き

そもそも格安スマホは、サポート体制やサービスを限定することでコストを抑え、大手に比べて割安な料金を実現してきました。このため、契約者はサービスに詳しいユーザーに限られていました。しかし、認知度が高まるにつれ、詳しくない人たちにも丁寧な説明が求められる段階に入っています。

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いちばんの近道は、大手3社と同じように店舗を構えること。当然、コストがかかりますが、幅広い層を獲得するためには不可欠だとして、店舗網を拡大する動きが急速に広がっています。家電量販大手のヤマダ電機は、格安スマホサービスを手がける事業者と提携して、4月から全国928の店舗で新ブランドで取り扱いを始めました。ノジマは、格安スマホを手がけるニフティの個人向け事業を買収したことをきっかけに、4月から店頭での窓口サービスを開始。来年3月に200か所に拡大する計画です。

いずれも既存の店舗を活用することで、出店コストを抑えつつ家電製品の販売で培った接客サービスを取り入れ、格安スマホになじみが薄かったファミリー層やシニア層の獲得を狙っています。家電量販以外でも、楽天モバイルやLINEモバイルなど店舗拡大の動きは広がり、サポート体制の面でも大手に近づこうという事業者が増えています。

“格安スマホは淘汰の時代に”

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ただ、格安スマホ事業者の数は増え続けていて、通信大手が対抗策を打ち出す中、過当競争に陥るという懸念も出ています。実際、mineoを展開するケイ・オプティコムは「格安スマホは淘汰の時代に入っている」と分析しています。

mineoは、今回、長期の利用者向けに、端末の購入で使えるギフト券を配る特典を新たに導入することを発表しました。長期利用者向けのサービスは格安スマホ事業者では初めてだといいます。mineoは家族や友人だけでなく、全国の利用者とデータ通信量を分けあえるユニークなプランを提供していて、特徴あるサービスで差別化を図り、今年度中に100万人の利用者の獲得を目指すとしています。

どう選ぶ?スマホの契約先

大手と格安スマホの差が狭まる中、どのように契約先を選べばいいのか。大手から格安スマホに乗り換えた利用者に話を聞いてみると、「ほとんど不自由はなく、料金が大幅に安くなって助かっている」という声がある一方、「通信速度が遅い時もあり、不満が残る」などという声も聞きます。

料金の安さか通信速度か、それともサポート体制なのか。契約先を決める際に自分が何を最も重視するのかをまず考えてみることが大切です。加入時の月額の料金が安くても、契約が2年目、3年目になると料金が上がるプランもあります。端末とのセット販売の場合、途中で解約すると、残った端末代金を一括で支払うよう求められることもあります。知らないと損をするという事態を避けるためにも、サービスの内容とともにみずからのニーズや使い方を踏まえて事業者を選んでいく必要があると思います。

変わる協調的寡占 利用者の信頼獲得がカギ

総務省が議論を主導した携帯電話料金の値下げ問題。国が民間企業のサービスや料金に口を挟むことの是非も議論になりましたが、国が動いた背景には、大手3社が市場のほとんどを占め料金体系も横並びで、協調的寡占と呼ばれる状況がありました。さらに他社からの乗り換え客だけを対象に、多額のキャッシュバックで顧客を奪い合う販売方法が続き、長く契約していると損をするという業界特有の状況が放置されてきました。

しかし、格安スマホ事業者の台頭によって、こうした状況も大きく変わりつつあります。今後、大手3社と競争を続けていくためにも格安スマホ事業者は、利用者が「こんなはずじゃなかった」という事態を招くことなく、利用者の信頼を勝ち得ることができるか、今後のシェア拡大に向けてカギになります。

小田島拓也
経済部
小田島拓也 記者
平成15年入局
甲府局から首都圏放送センター
警視庁クラブで事件取材を担当後
経済部 現在は情報通信業界
総務省を担当