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イカ不漁に“救世主”!?

国内でとれるイカのうち、そのおよそ8割を占めるスルメイカ。近年、記録的な不漁となっています。不漁の影響は漁業者だけでなく、水産加工業者や消費者の食卓へも広がり続けています。どうやってイカを確保するのか?イカのまちで、その最前線を取材しました。(青森放送局八戸支局 高橋謙吾記者)

先行き見えないイカのまち

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5月中旬、イカの水揚量日本一を誇る青森県の八戸港では、イカ漁のシーズンを迎え、たくさんの中型イカ釣り船が太平洋の漁場に向けて出港しました。

ところが、漁業者にとっては、これまでにない不安を抱えながらの船出となりました。その理由は、ここ数年続いているスルメイカの水揚げ量の減少です。特に去年は記録的な不漁となりました。原因は、スルメイカの産卵場の海洋環境が悪く、資源量が減ってしまったためだと考えられています。

不漁の影響は広がり続けています。イカを扱う八戸市のある水産加工会社では、加工する原料が手に入らないため、従業員を解雇して加工場の休業に踏み切りました。

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一方で加工会社からは、原料の確保のため、外国産のイカを輸入できる量を増やすよう求める声も上がっています。全国いか加工業協同組合の野々山浩専務理事は「国内だけでは加工に必要なイカを十分に確保できない。外国産のイカに頼らざるをえない状況だ」と話しています。

AIでイカの漁場予測を

こうした中で、さまざまな方法でイカを確保しようと模索する取り組みが始まっています。そのひとつが、AI=人工知能を使った漁場予測システムの開発です。

京都大学やJAMSTEC=海洋研究開発機構などのチームでは、八戸港を拠点にする漁業者の協力で、ことしの漁からイカ釣り漁船にシステムの構築に必要な装置を設置しました。漁船が操業した漁場の位置や海水温などのデータを集めるのが目的です。

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開発中のシステムでは、AIが、蓄積された漁のデータと潮の流れや海水温などの海洋環境の予測データをもとにイカの漁場を分析します。その分析した結果を漁業者に届け、漁に役立ててもらうのです。

漁業者は長年の経験や勘をもとにイカの漁場を探っていますが、AIを使えば、蓄積された膨大なデータを短時間で処理して分析するため、より確実に漁場を見つけることができ、漁の効率が上がることが期待されています。チームでは、5年後の実用化を目指しています。

救世主!?トビイカ

もうひとつが、スルメイカの不漁を補うため、別の種類のイカの可能性を探る動きです。

専門家が注目しているのが「トビイカ」。トビイカは、スルメイカのように群れをなさず、漁の効率が悪いことから、これまであまり取られてきませんでした。しかし、インド洋から太平洋にかけての広い海域に生息する一方、詳しい生態が分かっていないことから、水産研究・教育機構の開発調査センターは、調査の価値があると判断しています。

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ことし1月から民間のイカ釣り漁船をチャーターして、日本の南やフィリピンの東の公海で試験操業を始めています。ことし3月に終わった初めての試験操業では、およそ10トンを八戸港に水揚げしました。早速、地元の水産関係者が、トビイカの加工品を試食して味や食感を確かめました。水産加工会社の担当者の1人は「生で食べるのは難しいかもしれないが、加工品なら工夫次第で使える可能性はある」と期待を寄せていました。

ただ、このトビイカ。安定して漁獲できるかどうかが最大の課題です。どこの海域にトビイカの漁場があるのか、まだはっきりせず、効率的な漁獲方法も確立されていません。試験操業を重ねることで、こうした課題を一つ一つ解決していく必要があります。さらに仮に安定して漁獲する方法を確立できたとしても、コストに見合う価格でトビイカを買ってもらえるめどは立っていません。トビイカの需要を喚起する取り組みも欠かせません。

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開発調査センターの山下秀幸さんは「トビイカの回遊ルートなどの生態を詳しく解明しながら、持続可能な資源として利用できるのか、採算が合う漁ができるのか調査を進めていきたい」と話しています。

今後のスルメイカ漁獲の見通しについて、専門家は「産卵場の環境は改善しつつあるが、おととし、去年と2年続けてスルメイカの数が減った影響で、産卵する親イカ自体がかなり減少していると見られる。当面は楽観視できない」と指摘しています。

「ことしも不漁が続けば、廃業を検討せざるをえない」と話す水産加工会社もあり、対策は待ったなしの状況です。イカの資源を守りながら、どのように持続的にイカを確保していくのか、水産の現場で模索が続いています。

高橋謙吾
青森放送局
高橋謙吾 記者
平成22年入局
山口局をへて青森局
八戸支局で水産業を中心に取材