ニュース画像

ビジネス
特集
“築30年戸建て” お値段は?

築30年以上、木造戸建て住宅。値段はいくらでしょうか?
新築が中心の日本の住宅市場。結果的に世帯数を上回る数の住宅が建築され、今後、人口減少に伴って空き家の増加が懸念されています。こうした中で、戸建ての中古住宅の取り引きを活性化させようとリフォームの実績などを考慮して、中古住宅を査定する取り組みが始まっています。
買い手の不安をなくそうと、国が耐震性など一定の基準を満たした中古住宅に“お墨付き”を与える制度も始まることになりました。中古住宅の市場は、今後拡大するのでしょうか。(経済部 橋本知之記者)

土地だけでなく 建物も評価

ニュース画像

「取り壊せば数百万円の解体費がかかるところ、中古住宅として販売すれば売れるかもしれません」。築年数30年以上の平屋建て住宅から住み替えを検討している横浜市の横山嘉則さん(73)。住宅の査定を依頼したところ、こう伝えられました。

依頼先は、東京都内の建築士や不動産鑑定士などが集まって、中古住宅の品質維持に取り組んでいる協議会です。この日、「インスペクション」と呼ばれる住宅診断を実施。建築士が住宅の屋根裏や床下を見て、雨漏りの形跡が無いかや構造的な問題がないかを専門的な視点で確認していました。

査定の結果、土地の価格として約4000万円。建物にも約200万円という評価額が示されました。キッチンなどの設備は古くなっているものの、基礎などの構造はしっかりしていて、これから10年以上は住み続けられることがわかったためです。横山さんは「土地として売るのでなく、住宅も含めて売ることも考えたい」と話していました。

ニュース画像

新築重視が“家あまり”招く

日本の住宅市場では、消費者が新築住宅を好む傾向が強いため、住宅の売買で中古住宅が占める割合は15%にとどまっています。これに対して、欧米各国では中古住宅の割合がずっと高く、イギリスが87%、アメリカが83%、フランスが68%などとなっています。

国土交通省によりますと、日本では中古の戸建て住宅の場合、税法上の耐用年数などを参考にして、住宅の状態にかかわらず、一律に建築後20年から25年程度で住宅の市場価値がゼロとされる取り扱いが一般的だということです。

また、リフォームを行った場合も、客観的に評価する手法が確立されていないため、価格に反映されないことが多いといいます。その結果、国内では新築の住宅がどんどん増えて、住宅の数はすでに6000万戸となり、5200万の世帯数を上回る「家あまり」の状態となっています。

今後、人口減少が進むことで、空き家の増加も懸念されていて、中古住宅の取り引きを活発にすることが課題になっています。

築21年以上で500万円も

ニュース画像

大手住宅メーカー10社でつくる団体「優良ストック住宅推進協議会」は、中古住宅の性能やリフォームの実績を反映して独自に査定する取り組みを行っています。各メーカーが販売した物件を対象に、新しい耐震基準を満たし、補修やリフォームといった履歴データが管理された住宅を「スムストック」という独自ブランドに認定します。

この住宅は中古で売買する際、「土地」と「建物」の価格を分けて表示。このうち「建物」部分については、耐用年数が違う「構造」と「内装・設備」を別々に査定します。これにより、このブランドに認定された住宅は、これまで築年数21年以上でも平均500万円以上で取り引きされたということです。買う側にとっては、購入価格が割高になりますが、団体では「価格の根拠が示されるので納得して買ってもらえる」と話しています。

こうした中古住宅の流通拡大に向けて、ことし4月からは、引き渡しのあと建物の構造などに欠陥が見つかった場合、修理費用を補償する専用の保険を無料でつける新たなサービスを始めることにしています。

ニュース画像

国の“お墨付き”で活性化を

中古住宅の取り引きの活性化に向けて国も動き始めています。国土交通省は、中古住宅を安心して購入できるようにしようと、耐震性など一定の要件を満たした中古住宅を登録する制度をことしの夏以降、新たに始めることになりました。

国土交通省によりますと、去年、インターネットの調査で、「中古住宅の購入を検討したものの、結局見送った人」1180人に理由を複数回答で尋ねたところ、「価格が妥当か判断できなかった」と回答した人が31.3%、「設備の老朽化が不安だった」が18.8%、「耐震性が不安だった」が17.8%などとなっていました。

中古住宅の購入に踏み出せない要因には、品質への不安や情報の不足があると見ています。新しい制度では、中古住宅を売ろうとする不動産業者や仲介業者が、耐震基準を満たしていることや雨漏りなど構造上の不具合がないことなどを確認します。

また、過去に行われたリフォーム工事の情報や、外装・内装や水回りの写真などを開示します。国土交通省では、こうした要件を満たした中古住宅を「安心R住宅」として登録し、いわば“お墨付き”を与えることにしています。

ニュース画像

国土交通省は中古住宅の市場規模を2倍の8兆円に増やすことなどによって、8年後に500万戸以上に増えると予測される使い道のない空き家を400万戸に抑える目標を掲げています。国土交通省住宅政策課の村上真祥さんは「中古住宅に対するマイナスのイメージを払拭することで、購入につながっていくことを期待したい」と話していました。

取材を終えて

私も30代後半で住宅の購入を検討している1人ですが、特に東京では新築マンションはかなり高く、正直、サラリーマンには手が出ない状況になっています。中古のマンションについては少しずつ取り引きが活発になっていますが、戸建ての中古住宅の売買はまだまだ少ないです。今回紹介したような取り組みが進んで、中古住宅がもっと安心して買えるようになれば、消費者の選択肢が増えることにもつながると思います。

橋本知之
経済部
橋本知之 記者
平成15年入局
青森局、盛岡局、
生活情報部を経て
現在、国土交通省担当