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ノー残業デーは“水曜日”

残業せずに定時で退社する「ノー残業デー」。働き方改革の推進に伴って、導入する企業が広がっています。このノー残業デー、水曜日に実施する企業が多いそうです。皆さんは、ノー残業デーをどう過ごしていますか? 今、アフターファイブの会社員を取り込もうと“水曜の夜”に熱い視線が注がれています。
(経済部・楠谷遼 岩間宏毅)

水曜日は3割増!

11月のある水曜日。都内にあるフィットネスクラブ。軽快な音楽に合わせて、筋力トレーニングなどに汗を流す人たちで熱気に包まれていました。フィットネスクラブの担当者に聞くと「水曜日の利用者が急激に増えていて、特に会社帰りの人たちが目立つ」といいます。

ことし9月の実績では、水曜日の利用者が、去年の同じ月より3割以上も増えているというのです(18時以降の時間帯)。ほかの曜日は増えても1割程度ですので、水曜日の増え方はダントツ。水曜日がなぜこれだけ増えているのか。利用者にその理由を聞いてみると「自分が働いている会社のノー残業デーが水曜日だから」という答えが返ってきました。

残業せずに定時で退社するノー残業デー。働いている会社でノー残業デーが徹底されるようになり、毎週、自由に使える時間ができたので、このクラブに通うことにしたということでした。ほかの利用者からも同じような答えがありました。

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ノー残業デーは水曜日

NHKは、10月下旬から11月にかけて、主な企業100社を対象に、ノー残業デーの導入状況について聞き取り調査を行いました。

ノー残業デーを実施しているかどうかをたずねたところ、全体の3分の2に当たる67社が「実施している」と答えました。このうち、週に1日、実施していると答えた企業が42社と最も多く、週に2回が10社、月に1日が5社などとなっていました。

ことしから新たにノー残業デーを始めたという企業もあったほか、以前から導入していた企業の中でも、新たに定時退社を促す放送を始めたり、残業していないか見回りを始めたりする企業もありました。

一方、実施している曜日を複数回答で聞いたところ「水曜日」が49社と最も多く、「金曜日」が14社、「月曜日」が1社などとなっていました。週の真ん中で区切りになることや、官公庁がノー残業デーを水曜日に設置していることなどが背景にあると見られます。

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“水曜日限定キャンペーン”

ノー残業デーの”水曜日”。アフターファイブの会社員を取り込もうと、さまざまなサービスが始まっています。

東京・池袋にあるデパートでは、働く女性客を取り込もうと新たな施策を検討する中、曜日ごとの婦人服売り場の客の数を調査しました。その結果、週末の金・土・日を除くと、水曜日が最も多いことがわかり、仕事帰りの女性を主な対象に、11月から「水曜限定」のサービスを始めました。

例えば、婦人服売り場では、パンツスーツを購入した際、すそ上げを無料サービスしたり、商品を購入した客にアイスクリームをプレゼントしたりしています。

さらに、ノー残業デーをリラックスして過ごしてもらおうと、フットケアの店では、水曜限定の割安のコースも用意しました。仕事帰りに立ち寄ったという女性客に話を聞くと、「仕事帰りにこういうサービスをしてもらえるとまた来ようかなと思う」とか、「仕事帰りで疲れが出ているので、健康関連のサービスには興味があります」といった声が聞かれて、好評なようでした。

デパートの担当者は「水曜日はお客さまが多いという現場の声をヒントに、実際にデータを取って見るとそのとおりだった。30代、40代の女性の多くが働いている中で、そうしたお客さまの生活習慣にあったサービスを提案し、既存のお客さまはもちろん、新たなお客さまにも来ていただけるようにしたい」と話していました。

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自分磨きの時間

ノー残業デーで空いた時間を、自分磨きのために使おうという人たちも増えてきています。

その1つが英会話教室です。東京・銀座にある英会話教室では、水曜日の受講生がほかの曜日より3割ほど多いことをチャンスと見て、こうした需要を取りこぼさないよう工夫をしています。

まず、講師の数をほかの曜日よりも増やして、より多くの受講生を受け入れられるようにしています。さらに、夜間では水曜日にだけ、通常の講座とは別の特別講座も設けました。ノー残業デーでまとまった時間がとれるので、通常の講座にもう1コマ加えて受けたいという要望に応えたものです。

英会話教室の担当者は「水曜日の、特に午後6時から8時という時間帯に多くの方が通うようになってきていて、私たちとしても、ビジネスチャンスだと考えている。多くのクラスを提供するなどして、ニーズに応えていけるよう体制を整えていきたい」と話していました。

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消費の活性化につながるか

11月14日に発表された、ことし7月から9月までのGDP=国内総生産の伸び率はプラス0.5%と3期連続のプラスとなりましたが、個人消費は0.1%のプラスにとどまりました。

日本経済が成長の軌道に乗っていくためには、伸び悩む個人消費の底上げが大きな課題であることが鮮明になりました。一部で見え始めた”水曜消費”の動きは、今後、個人消費を押し上げていくきっかけになりうるのでしょうか。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「所得が増えてある程度お金に余裕があっても、仕事が忙しくて使う時間がないという人は結構いるはずだ。ノー残業デーによって自由に使える時間ができれば、個人消費が伸びるきっかけにはなりえるだろう。ただ、一部の企業や業績に余裕がある大企業だけが、ノー残業デーに取り組むのでは限界がある。全国各地の中小企業まで含めた広がりが重要になってくるし、やはり、非正規労働者も含めたさらなる賃金の底上げも必要になってくる」と話しています。

ノー残業デーは“時代遅れ”

今回の取材で、ある企業の担当者は「ノー残業デー自体、もはや時代遅れだ」と話していました。曜日を限って残業をやめるのでなく、毎日、定時退社するのが本来のあるべき姿だというのです。働き方改革が進み、水曜日に限らず、ほかの曜日にも「残業しない日」が広がっていけば、もっと消費の活性化につながるかもしれません。

ただ、お金を使う時間ができたとしても、やはり、使いたいと思うサービスがなければ、結局、財布のヒモは緩みません。仕事帰りの人たちのニーズを把握して、それに応えるサービスを開発していくことも重要になってきそうです。

楠谷遼記者
経済部
楠谷遼 記者
岩間宏毅記者
経済部
岩間宏毅 記者