聖カタリナ学園高校野球部の暴行事案 元部員側も被害訴え

松山市の聖カタリナ学園高校の野球部で起きた暴行事案を巡って、加害者と認定され退学勧告の処分を受けた元部員らが、処分は不公平だとして、学校側に損害賠償を求める訴えを起こしたことが分かりました。
元部員側は暴行は上級生の命令によるもので、自身らも日常的に暴行を受けていたとしています。

訴えを起こしたのは聖カタリナ学園高校の野球部の元部員7人です。
訴えによりますと元部員らは当時1年生だった去年5月、野球部の寮で同級生に対して素手で殴るなどの暴行を加えたとして、去年6月、学校から退学の勧告処分を受け、転校を余儀なくされるなどしました。
これについて元部員側は同級生に対する暴行は上級生の命令によるもので、自身らも入学当初から野球部の寮で上級生から日常的に暴行を受けていたなどと主張しています。
そのうえで、暴行した上級生は懲戒処分を受けておらず、退学勧告の処分は不公平で、精神的苦痛を受けたなどとして、学校を運営する学校法人と学校長に対して、7人の合計でおよそ2300万円の損害賠償を求めています。
今後、松山地方裁判所で初めての弁論が開かれる見通しです。
これについて聖カタリナ学園は「裁判に関することなのでコメントは差し控える」としています。
一方、一連の暴行事案を巡っては、元部員たちから暴行を受けたとされる同級生側も学校側に対しておよそ3500万円の損害賠償を求める訴えを起こしていて、松山地方裁判所で裁判が続いています。

【上級生から受けたとする暴行とは】
元部員側が野球部の上級生から受けたとする暴行の内容です。
訴えによりますとある元部員は寮の規則に違反した同級生の身代わりとして拳やスマートフォンで殴られたということです。
また別の元部員はグラウンド整備ができていなかったことを理由に、3年生の部員2人から、バットのグリップエンドで後頭部を何度も殴られたとしています。
野球部内では1年生の規則違反があると、同級生が身代わりとして上級生から暴行を受けていたほか、「お前らがやらなければ、お前らをやる」などと、同級生に対する暴行を命じられることもあったということです。
上級生から暴行を受けたと訴える元部員が自身の上半身を撮影した写真では、胸の周辺に赤黒いあざのようなものが複数確認できます。
大きいもので直径が10センチ弱ほどあります。
元部員の父親によりますと、野球部の上級生からたたかれるなどの暴行を日常的に受けていたほか、バットのグリップエンドで体を殴られるなどしたということです。
暴行を受けて吐いてしまうこともあったということです。

【元部員の父親は】
上級生からの暴行被害を訴えている元部員の父親がNHKの取材に応じました。
父親は元部員の息子について「小学生の時から野球の練習を頑張り、1人親元を離れて聖カタリナ学園に入学するときも、意気揚々とした様子だった。暴行されても甲子園に行くという夢があったから我慢していたのだと思う」と胸中を察しました。
そのうえで学校の対応を巡っては「最初は息子たちに対する上級生の暴力について認めてくれていたのに裏切られた思いだ。学校側は簡単に退学させて尻尾を切ればすむと考えているように思え、暴力をなくそうという姿勢が感じられない」などと怒りをあらわにしました。
一方で、息子の加害行為については、「自分も暴行されていたからその場の圧力に屈してしまったのだと思う。相手にけがをさせたことについてはずっと反省している」と話していました。

【保護者たちは】
聖カタリナ学園高校では27日、学園祭が行われ、保護者が次々と学校を訪れていました。
保護者からは野球部内で新たな暴行事案の疑惑が浮上したことについて、心配の声が上がっています。
1年生の生徒の母親は「心配です。学校には誠意を持って対応してもらいたいです」と話していました。
さらに、ほかの保護者からは「早く解決してほしい」や、「被害者は心も体も傷つくと思うので、専門家や先生にもしっかり向き合ってほしいです」などという意見が上がっていました。

【これまでの経緯】
聖カタリナ学園高校の野球部で起きた暴行事案のこれまでの経緯です。
暴行事案は、おととし11月と去年5月に野球部の寮内で起きました。
これを受けて、学校は弁護士などからなる第三者委員会を設置して調査を行い、その結果を公表しました。
それによりますとおととし11月の事案では当時の1、2年生4人が1年生1人に対して、素手で殴るなどの暴行を加え、去年5月の事案は9人の1、2年生が3人の1年生に対し、スマートフォンのルーレットアプリを使って回数を決定して、スパイクやバットのグリップでたたくなどしたということです。
第三者委員会は、部員の間で暴力行為が当たり前のような空気感となり、罪の意識が希薄だったとしたほか、学校も寮の管理体制や事案への対応が不十分だったなどと指摘しています。
また学校によりますと去年5月にも別の暴行事案が確認されましたが、高野連に対する報告が遅れことし8月、野球部長が謹慎の処分を受けています。
報告が遅れた理由について学校は被害を受けた部員の保護者が公表を望まなかったためとしています。
聖カタリナ学園高校の野球部はおととし春のセンバツ高校野球大会に出場するなど、強豪校として知られています。