愛媛大学病院でがん患者の卵巣移植に成功

愛媛大学病院で、抗がん剤治療の副作用で不妊のリスクがあった20代の女性に対し、凍結保存していた卵巣を治療が落ち着いた段階で再び体内に戻す移植手術が8月、四国では初めて行われました。女性の術後の経過は順調で今後、妊娠・出産を目指すということです。

愛媛大学医学部附属病院は乳がん患者の29歳の女性に対し去年1月、卵巣の組織を取り出して凍結保存し、抗がん剤治療を終えた8月31日、再び体内に戻す移植手術を行って成功したと発表しました。
がんの患者は、抗がん剤や放射線治療を受けると副作用で卵巣が機能せず妊娠できなくなる不妊のリスクがありますが、卵巣を凍結保存しその後体内に戻す移植手術は将来、妊娠できる可能性を残す治療法としてここ最近、国内でも普及が進んでいます。
愛媛大学病院によりますと、凍結保存した卵巣を体内に戻す移植手術は全国で40例ほどあり、四国では初めて行われました。女性の術後の経過は順調で、今後、妊娠・出産を目指すということです。移植手術を担当した愛媛大学病院産科婦人科の安岡稔晃助教は「がんの治療で妊娠・出産を諦めざるを得ない患者も多くいたが、卵巣移植を広く知ってもらい人生の1つの選択肢として考えてもらえるよう、取り組んでいきたい」と話しています。
卵巣の移植手術を受けた29歳の女性はNHKの取材に対し現在の心境を次のように語りました。
女性は2年前、突然乳がんが発覚して治療と同時に
将来の妊娠に向けて卵巣凍結などを行うかどうか、判断を迫られたということで、「突然のがん告知で病気自体を受け止められず『将来はどうでもいい』とまで悲観的になっていました。自分がどう判断していいのかとても悩み、葛藤しました」と振り返りました。一方で、当時恋人だった今の夫が「将来は子どもがほしい」と話したことが後押しになり、卵巣凍結を決めたといいます。
そして、夫婦で話し合った結果、いったん、がんの治療を中断して卵巣を再び体内に戻し妊娠・出産を目指すことに
したということです。女性は「抗がん剤治療もとてもつらかったですが、治療前に健康な卵巣を残しておいたことで
子どもができる楽しみを自分のなかに残すことができました。病気のショックで一度は将来を考えること自体を放棄しましたが、頑張って悩み抜いて決断してよかったと思います」と話していました。