体に障害がある人も海水浴を楽しんで 「バリアフリービーチ」

車いすを利用するなど体に障害がある人に一日だけでも海水浴を楽しんでもらいたい。
神奈川県鎌倉市の海水浴場で「バリアフリービーチ」というイベントが開かれ、参加者とその家族が夏の海を満喫しました。

このイベントは、鎌倉市の医療・福祉の関係者などでつくる実行委員会が先月30日に一日限定で地元の由比ガ浜海水浴場で行いました。
2015年から始まり、台風やコロナ禍で中止になった年もあるため、今回が5回目になります。
砂浜の一角に設けられた会場には、車いすでも移動できるシートが敷かれ、浮き具がついた海にも入れる専用の車いすが6台用意されました。
この日、参加したのは、車いすを利用する人とその家族など44組です。
参加者が安全に楽しめるように医療や福祉の専門職を含むボランティアのサポーターもおよそ250人参加して介助を担いました。
参加者の1人、近所に住む村越正俊さん(89)は、8年前に脳梗塞を患った影響で車いすでの生活になりました。
鎌倉市の海水浴場は孫たちがまだ幼い頃から何度も一緒に訪れた思い出の場所で、イベントに参加するのは今回が3回目です。
いまは大人になった孫2人と介護士の介助を受けながら、専用の車いすで海に入って楽しんでいました。
村越さんは「サポートがあって海水浴ができるのでありがたいです。きょうは波がありましたが、海水は冷たくなくて気持ちよかったです」と話していました。
このイベントは、実行委員会の委員長を務める地元の開業医、酒井太郎さんが発案しました。
車いすを利用する患者を往診した時、「大好きだった海水浴をあきらめた」という話を聞いたことがきっかけになっています。
沖縄県の同様の取り組みを視察したり、県や市の協力を得たりしながらサポート態勢の充実に取り組んできたといいます。
酒井さんは「準備は本当に大変ですが、きょうも多くのボランティアが来てくれてありがたいです」と話していました。
参加者の中には、家族4人で海水浴に来るのが初めてだという人たちもいました。
藤沢市に住む廣川さん一家です。
娘の瑠莉ちゃん(1)には脳性まひがあり、日々の生活でたんの吸引などの医療的ケアが必要です。
そうした生活のなかでも「いろいろな体験をしてほしい」という思いから、母親の真緒さんは参加を決めたといいます。
主治医や看護師も一緒に参加し、手厚いサポートを受けられることも大きな理由でした。
瑠莉ちゃんは波打ち際で海水や砂に触れたり、専用の車いすに母親と一緒に乗って海に入ったりして初めての海水浴を体験しました。
真緒さんは「自分たちだけでは不安ですが、医師や看護師がいてくれたので安心して楽しめました。娘はちょっとびっくりした様子でしたが、夏の良い思い出になりました」と話していました。
委員長の酒井さんは「参加者の笑顔を見て本当にやってよかったと思います。誰もがいつでも海水浴を楽しめるように来年もまたやらなくてはと思います」と話していました。