横浜市にアメリカ陸軍の小型揚陸艇部隊を新たに配備へ
日米の外務・防衛の閣僚協議、いわゆる「2プラス2」が行われ、日本政府が保有を決めた「反撃能力」の効果的な運用に向けて協力を深めることで一致しました。
また、アメリカの防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条について宇宙空間での攻撃も適用の対象になり得ることを確認しました。
成果文書として発表された共同発表ではことし、横浜市にあるアメリカの輸送拠点「横浜ノース・ドック」に小型揚陸艇部隊を新たに配備するとしています。
日米両国の「2プラス2」は、日本から林外務大臣と浜田防衛大臣、アメリカからブリンケン国務長官とオースティン国防長官が参加し、日本時間の午前4時すぎからワシントンで2時間あまり行われました。
この中で4人の閣僚は、両国がそれぞれ国家安全保障戦略などをまとめたことを踏まえ、地域情勢などをめぐって意見を交わしました。
このうち中国について、これまでにない最大の戦略的挑戦であり、みずからの利益のために国際秩序を作り変えようとする外交政策は、日米同盟や国際社会にとっての深刻な懸念だという認識を共有しました。
その上で、東シナ海での一方的な現状変更の試みに強く反対することで一致したほか、台湾海峡の平和と安定の維持の重要性を確認しました。
一方で、中国との間で安全保障面を含む意思疎通を強化していく方針を維持することも確認しました。
またロシアによるウクライナへの侵攻が国際秩序の根幹を揺るがすものだという認識を改めて共有し、ウクライナへの強力な支援を継続していくことで一致したほか、北朝鮮による前例のない数の弾道ミサイル発射を非難し、両国で緊密に連携して対応していく方針を確認しました。
そして厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、日本側が新たな戦略のもとで防衛予算の増額を通じて「反撃能力」を含めた防衛力を抜本的に強化する方針を説明し、アメリカ側は強く支持しました。
その上で「反撃能力」の効果的な運用に向けて協力を深めることで一致しました。
さらに、アメリカの核戦力と通常戦力の抑止力によって日本を守る「拡大抑止」の重要性を再確認し、両国で実質的な議論を深めていくことで一致しました。
このほか、宇宙領域の安全保障をめぐって、宇宙空間での攻撃が同盟の安全に対する明確な挑戦だとして、一定の場合にはアメリカの防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用の対象になりうることを新たに確認しました。
さらに、日本の南西諸島の防衛を含めて、日米同盟の態勢を最適化するため在日アメリカ軍の再編計画の一部を見直し、沖縄にある第12海兵連隊を2025年までに離島を拠点に機動的に対応する新たな部隊「第12海兵沿岸連隊」に改編する方針も確認しました。
今回の共同発表では、海上機動力を強化するためとして横浜市にことしの春ごろ、アメリカ軍の新たな部隊を設けることが明らかにされました。
場所は横浜市の横浜港内にあるアメリカ軍の「横浜ノース・ドック」です。
もともとは国が建設したふ頭でしたが、終戦後の昭和21年に接収され、
物資の搬送や、軍人の移動に伴う輸送業務などで使用されています。
ここに新編されるのがアメリカ陸軍の「小型揚陸艇部隊」です。
防衛省によりますと、これまでは船舶を運用するために随時派遣されていた要員を常時配置し、13隻の船舶とおよそ280人で編成されるとしています。
船舶は、すでに配置されているものを使用するため増加はなく、新編に伴って追加される要員は、神奈川県内のアメリカ軍施設などに居住するとしています。
防衛省は、小型揚陸艇について、港湾がない場所や破壊された場所でも接岸できるため、南西諸島を含む必要な場所に迅速に展開が可能となり、自然災害を含むさまざまな緊急事態で日米が連携して対応する能力が向上するとしています。
神奈川県には12日午前、防衛省から、ことしの春ごろに、横浜市の横浜港内にあるアメリカ軍の「横浜ノース・ドック」に、陸軍の「小型揚陸艇部隊」を新たに配備するという連絡があったということです。
防衛省からは「厳しい安全保障環境に対応するため」と説明があったということで、県からは具体的なスケジュールや周辺への影響などについて、より詳しい情報を提供し、必要な対策を取るよう申し入れたとしています。
黒岩知事は、「横浜ノース・ドックは横浜港の中心に位置し、影響をできるだけ少なくするための対策が必要だ。県民の安全安心のために、関係自治体とも連携して、必要な対応を国に求めていきたい」とコメントを出しました。
「横浜ノース・ドック」は、横浜市神奈川区の瑞穂ふ頭にあるおよそ52万3000平方メートルの港湾施設です。
終戦後の昭和21年に、アメリカ軍が接収して以来、アメリカ陸軍の物資の運送などに使用され、これまで横浜市は国に全面返還を求めてきましたが、返還されたのは一部にとどまっています。
直近では、おととし3月に「横浜ノース・ドック」に続く貨物列車の線路部分およそ1400平方メートルが返還されています。
横浜市は、日米安全保障協議委員会で、ことし春ごろに横浜ノース・ドックに13隻の小型揚陸艇と280人の部隊が新たに編成される方針が示されたと、防衛省から連絡があったと12日発表しました。
市では、適時適切な情報提供や、市民生活の安全・安心の確保を防衛省に申し入れたということです。
横浜市の山中竹春市長は「小型揚陸艇部隊の新編は、わが国の安全保障上、必要であることは理解するが、基地の恒久化につながるおそれがあり、『横浜ノース・ドック』の早期返還を求めている横浜市としては、遺憾と言わざるを得ない。市民生活の安全・安心に影響を及ぼすことのないよう、国に対し要請するとともに、引き続き早期返還を求めていく」とコメントしています。