県議の資産公開 47人中37人が“新たに増えた資産ない”

山口県議会議員の資産が公開され、47人中37人が昨年末までに新たに増えた資産は「ない」と報告しました。
資産公開は普通預金などが対象外となっていて、専門家は「資産が簡単に隠せる制度になっている」と指摘しています。

政治家の資産公開は昭和の終わりに相次いだ汚職事件の反省から始まり、山口県でも条例に基づいて県議会議員や知事の資産や所得が毎年公開されています。
このうち県議会議員の所得の平均は、去年の選挙で当選し在任期間が1年に満たない10人は公開の対象外で、残る37人の平均はおよそ1600万円でした。
一方で、所有する資産については去年4月の県議会議員選挙後の時点で、47人の議員のうち11人が「資産なし」と回答しました。
今回はその後の去年5月1日から年末までに新たに増えた分が公開されましたが、新たな資産は「ない」と報告した議員が47人中37人に上りました。
また、去年1年間の村岡知事の給与所得は1819万円余り、新たに増えた資産は定期預金の120万円余りでした。
山口県の資産公開では土地や建物、定期預金や有価証券などが報告の対象となる一方、普通預金や当座預金、それに近年普及している暗号資産は対象外で、配偶者や扶養親族の資産も含まれていません。
政治資金の問題に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授はNHKの取材に対し、「資産を普通預金で管理したり配偶者や親族に移したりすることで簡単に資産が隠せる制度になっている。“資産公開”や“政治倫理の確立”の名に値せず、より厳しい条例を定めている地域を見習って条例の改正を検討すべきだ」と話しています。
知事や県議会議員の資産に関する報告書はインターネット上では公開されず、知事の分は県庁1階の情報公開センターで、県議会議員の分は県議会事務局で閲覧することができます。

【資産公開が始まった経緯】
全国の知事や県議会議員などの政治家の資産や所得が公開されるようになったのは、「政治とカネ」の問題がきっかけです。
昭和63年のリクルート事件以降、汚職事件が相次いで発覚して政治改革が叫ばれ、政治家が不正に財産を築いていないか国民がチェックできるよう、平成4年に国会議員資産公開法が成立しました。
この中では知事や県議会議員、市区町村長の資産や所得についても各自治体で条例を定めて公開することとされ、これを受けて山口県では平成7年に条例が制定されました。

【厳しい条例設ける自治体は】
政治家の資産公開をめぐって、福岡県築上町は、町長や議員らの資産について、詳細を報告するよう条例で義務づけています。
具体的には、普通預金や当座預金も報告対象としているほか、配偶者や扶養する親族の資産に関する報告書の提出も求め、それぞれ必要な証明書類を添付しなければならないと定めています。
そして、口座に入れていない50万円以上の現金があれば自主申告するよう求めています。
さらに、所得税や事業税、固定資産税など税の納付状況も報告の対象となっています。
こうした厳しい条例は、合併前に汚職事件が相次いだことをきっかけに制定され、合併後まで引き継がれているということです。
築上町では、これらの資産について学識経験者や会計の専門家、それに住民でつくる「政治倫理審査会」が審査を行っています。
審査結果は意見書としてまとめられ、記載漏れなど不備があった場合には、町の広報誌にも掲載されるということです。
自民党で築上町議会の塩田文男議長は「築上町で立候補し議員になったら資産を絶対に報告しないといけない。出したくないなら議員にならなければ良く、これは当たり前の範囲だ。自分たちに厳しくすることが大事だと思う」と話しています。
築上町の住民からは、他県でも厳しい条例を制定するべきだという声が聞かれました。
60代の男性は「政治には金がかかると言いながら『資産ゼロ』はありえないと思う。自分たちがルールを決めるから自分に良いようにしかならないのだと思う。みんなの代表なので厳しくしてほしい」と話していました。
90代の女性は「政治家は自分に都合のよいことばかりしていると思います。ほかのところも築上町のようにしてもらいたい」と話していました。