認知症新薬「レカネマブ」 期待と今後の課題は

アルツハイマー病の新たな治療薬が保険適用になって半年になり、山口県内の医療機関でも治療が始まっていますが、薬の投与に時間がかかることから、今後患者が増えた場合、治療スペースの確保が懸念されています。

新たな治療薬「レカネマブ」は、アルツハイマー病の原因物質を取り除き、進行を遅らせるための初めての治療薬で、去年(令和5年)12月から保険適用になりました。
投与できる医療機関は、常勤の専門医が複数いることや脳の画像を撮影するMRI検査ができるなどの条件があり、県内では、下関市や宇部市、防府市、柳井市の医療機関の6か所程度にとどまっています。
この薬による治療を希望する患者が増える一方、薬は2週間に1度点滴で投与しなければならず、経過観察も含めると2時間程度かかるため、高齢化が進むなか、多くの医療機関が治療スペースの確保を今後の課題として抱えているということです。
下関市の「脳神経筋センターよしみず病院」の川井元晴 副院長は、「タイミングを逃せば薬を使えなくなる患者も出てくるので、投与ができる医療機関が増えてほしい」と話しています。
県内では、周南市の徳山中央病院も、来月(7月)から投与を始める予定ですが、検査機器が限られることなどからこの薬を投与する患者を急に増やすことは難しいとしています。

レカネマブが投与できるのは、アルツハイマー病で、▼認知症を発症する前の段階の「軽度認知障害」や、▼早期の認知症と診断された人です。
県内に住む40代の女性は、仕事で物忘れが増えたことが気になり、去年(令和5年)、夏に診察を受けたところ「軽度認知障害」と診断されました。
ことし4月から薬の投与を受けていて、仕事を続けながら、2週間おきに病院へ通っています。
女性は、「つらい時もありますが、薬で今の状態をキープできれば、仕事を続けられるのではないかという期待感があり、私にとって必要な薬だと思います」と話しています。

【投与を始めた医師は】
下関市にある「脳神経筋センターよしみず病院」では、ことし4月から「レカネマブ」の投与を始めました。
先月(5月)までに薬を投与した患者は2人でしたが、今月は新たに3人に投与を始める予定です。
治療を担当している川井元晴副院長は、「薬ができたという情報を聞いて受診に来る方がいて、治療方法を話し合うなかで、「レカネマブ」の投与を検討してもらう機会も増えています。希望者が多いので、これからも投与する人は増えてくると思います」と話しています。
一方で、「レカネマブ」は2週間に1回点滴で投与され、1年半をめどに続けられることから、投与する患者が増えた場合には、点滴を行うスペースやベッドの確保が課題になってくるということです。
川井副院長は、「この薬は早期のアルツハイマー病の方に効果があるので、早めに使わなければならず、タイミングを逃せば使えなくなる患者も出てきます。薬の投与が可能になる基準をクリアする医療機関が1つでも2つでも増えてほしいです」と話しています。
厚生労働省によりますと、「レカネマブ」を製造する製薬会社は、投与した患者全員の安全性や有効性に関するデータを定期的に国に報告することになっています。