着手から36年「平瀬ダム」が完成し式典 岩国

山口県東部を流れる錦川の水害対策などのため、昭和63年から36年にわたって岩国市に建設が進められてきた平瀬ダムが完成し、現地で式典が開かれました。

平瀬ダムは錦川の中流にあたる岩国市錦町広瀬で、山口県が昭和63年から建設を進めてきたダムで、水害対策や水道水の確保、水力発電を目的としています。
36年にわたる工事が終わり、27日は現地で自治体や工事の関係者、それにダムの建設地に暮らしていた住民などおよそ140人が出席して式典が開かれました。
この中で、村岡知事は「錦川が台風などで何度も氾濫する中で、完成したダムは安心安全な暮らしの確保だけでなく、水道水や発電など地域や産業の発展にも貢献することが期待される」とあいさつしました。
続いて記念行事が行われ、関係者がテープカットやくす玉を割って完成を祝いました。
平瀬ダムは、総事業費がおよそ920億円。
高さ73メートル、長さ300メートルあり、最大でおよそ2950万トンの水を確保できるということです。

今回のダム建設にあたり、岩国市錦町広瀬にあった木谷原集落と平瀬集落はダムに水をためるため、おととし、水の底に沈みました。
2つの集落にはあわせて35世帯が住んでいましたが、住民たちは移住を余儀なくされたということです。
木谷原集落の出身で、27日の式典に出席した80歳の女性は、就職でいったん出たあと再び集落に戻って子育てをし、ダムの建設にあわせて40年ほど前に市内の別の場所に移住を余儀なくされました。
女性は工事が始まる際の式典や水をためる前の見学会などの度にふるさとへと足を運んでいました。
27日の式典の会場には、かつてのふるさとの写真も展示され、女性は、顔をほころばせながら集落のシンボルとなっていた赤い鉄製の橋の様子を懐かしんでいました。
また、集落にあった景勝地、「猿飛の石庭」で友人と川に飛び込んで遊んだことなどを振り返りつつ、ダム湖に猿飛湖という名前が残ったことを喜んでいました。
女性は「ふるさとがなくなってしまってさみしい気持ちはありますが、ダムがある場所に来ると家族や友人と過ごした日々を思い出します。ダムが多くの人の役に立ってくれたらうれしいです」と話していました。