いち押し!支局発 ”成長産業”を次の時代の活力に

(アナウンサー)
続いて「イチ押し!支局発」。今回は宇部支局からです。
藤井さん、どんな話題ですか。

(藤井記者)
はい。大学や企業などが集まる宇部市では、そのメリットを生かして新たな雇用を生み出そうと、これから成長が期待できるいわゆる「成長産業」の創出に力を入れています。どんな取り組みが行われているのか取材しました。

【VTR】
ドローンを使って上空から人の動きを監視する新たな技術。
「見えてますよ。はい」
東京のベンチャー企業が実用化を目指して宇部市の「ときわ公園」で実証実験を行っています。

(国士舘大学 防災・救急救助総合研究所 
 嘱託研究員 佐伯潤さん)
「予期せぬところで多くの人たちが集まってしまうと(雑踏)事故の原因になりやすい.それをいち早くドローンとAIで発見できれば事故の低減につながるんではないかなと」。

大学や国、県の研究機関、それに空港などが集まる工業のまち、宇部市。その強みをいかして今後、成長が見込まれる航空宇宙、デジタル技術、医療などの成長産業の創出に力を入れています。

去年、市は商工団体や大学などと情報交換や共同研究を進めるため協議会を設立。市政の重要課題の1つとして取り組みを進めています。背景にあるのが人口減少です。

(宇部市 篠崎圭二市長)
「若い人たちが宇部市を離れてしまっている。この状況を何とかしなければいけない新しい次世代の宇部市の稼ぐ力を作っていくこと。これが何よりも大事であると」。

成長産業を創出するため、市は公募で選んだ4つの企業に支援金を提供し、「ときわ公園」で実証実験を行ってもらう事業を始めました。題して「ときわ公園チャレンジ」。
動物園や植物園、それに遊歩道などがある広大な公園を実験場にして先進的な技術や事業モデルを開発してもらうのが狙いです。

大手自動車メーカーは低速の電気自動車で園内を散策する新たなサービスを提案。この秋、開催された野外彫刻展、「UBEビエンナーレ」で来場者に利用してもらうなど、この新しい乗り物の活用方法を探っています。

こちらはサルなどを自然な環境で飼育している園内の動物園。360度カメラで森の中を行き来するサルの様子を撮影しています。

「360度で見れます。生息環境をできるだけ身近に現場がどうなっているか分かるように撮ったものです」。
子どもでも映像つきの地図などを簡単に作成できる教育アプリの開発を進めています。

この会社は、「ときわ公園」の植物館に展示されている多種多様なサボテンを仮想空間で楽しむシステムを開発しました。

「ご覧のようにメタバース空間ではアバターを用いて自由に移動することができます」

将来は、自宅にいながら全国各地の美術館や博物館などの展示品を鑑賞できるシステムの開発を目指しています。

「こちらが、私どもが宇部市に進出しました事務所になります。学校も兼ねている事務所になっています」。
実証実験をきっかけに宇部市に事務所を開設した会社もあります。この会社は、AIを搭載したドローンで人の動きを撮影し、雑踏事故などの危険性をいち早く検知するシステムを開発しています。

実験には地元の山口大学工学部や宇部高専の学生たちも協力。群集を再現して上空から人の移動速度や密度を計測します。このシステムが実用化されれば、韓国ソウルの繁華街で起きた事故などを未然に防ぐことができると期待されています。

(エアーズ 大越信幸 社長)
「宇部で開発した技術が、日本全国あるいは世界に広がっていって多くの災害を減らすようなことができたら本当にすばらしいことかなと思っています。ドローンで画像を撮影したあとにさまざまな処理があるわけですが、コンピューターでの処理といったところの拠点としても宇部市の中でそこを発展していきたい」

(宇部市 篠崎圭二 市長)
「実証実験で宇部市に来て頂いて、そのまま企業誘致にまでつながる。非常に理想的な形で進んでいると思っています。ニューテクノロジーがしっかりと新しく芽吹く。そして地元に定着する。そのようなまちとして発展させていきたいと思っています」

かつて炭鉱から工業のまちへと大きな転換を遂げた宇部市。次の時代を見据え、成長産業のまちとしてさらに発展できるか、宇部市の挑戦に注目が集まっています。

(アナウンサー)
ときわ公園を実験場にしてさまざまな実証実験が行われているのはおもしろい発想ですね。藤井さん。参加している企業のみなさんの宇部市への評価はどうですか。

(藤井記者)
みなさんが指摘していたのが、空港からのアクセスのよさです。羽田空港から2時間弱でときわ公園に着いて、すぐに実験に取りかかることができると好評でした。

(アナウンサー)
学生たちが実験に協力している点も、成長産業を担う人材の育成につながりそうですね。

(藤井記者)
そうですね。休憩時間に企業の社員に積極的に質問する学生の表情が印象的でした。
「エアーズ」の大越社長は、地元に大学があることも進出を決めたきっかけになったと話していました。
コロナ禍で地方に拠点を移す企業も増えるなか、宇部市ではこれを大きなチャンスと捉えて、さらなる誘致を進めたいとしています。

(アナウンサー)
さまざまな人材の融合で将来、宇部にどのような成長産業が生まれるのか。楽しみですね。ここまで「イチ押し!支局発」でした。