高級車購入裁判 地裁 県に対し「知事に費用全額請求を」
山口県が2000万円余りをかけて公用車として高級車「センチュリー」を購入したのは違法な支出だとして、元県職員の住民が県に対し購入を決めた村岡知事に費用を請求するよう求めた裁判で、山口地方裁判所は県に対し知事に全額を請求するよう言い渡しました。
この裁判は元県職員の住民が、山口県が公用車としてトヨタの高級車「センチュリー」を購入したのは知事の裁量権の逸脱濫用で違法な支出だとして、県に対し、購入を決めた村岡知事に費用2090万円を請求するよう求めました。
一方、県は「車種の選択は政策的な側面が極めて強く、合理的な判断だ」として訴えを退けるよう求めました。
2日の判決で山口地方裁判所の山口格之裁判長は、「ほかの都道府県でセンチュリーを貴賓車として常備しているのはわずかで、本件契約の購入価格は全国で2番目に高額だ。歳出削減の観点からすでに貴賓車を1台保有しているところ、新たに2台目を購入すべきかやほかの車種を検討せずセンチュリーであるべき必要性など当然考慮すべき事項についてあまりに検討が不十分だといわざるを得ない」と指摘しました。
その上で、「本件の契約は裁量権を逸脱または濫用した財務会計上の違法行為で、知事がこれを阻止せず指揮監督上の義務に違反した過失も認められる」として、県に対して村岡知事に費用2090万円を請求するよう言い渡しました。
【原告「最高の判決」】
原告で元県職員の松林俊治さんは、判決後開いた会見で「行政の裁量権は範囲が広いので法律違反を問うことは難しいと感じていたが最高の判決が出た。村岡知事には判決を肝に銘じて県民が豊かになるように税金を使うなど、今後の県政運営に取り組んでもらいたい」と話していました。
また、原告側の内山新吾弁護士は「司法として行政の税金の使い方や決め方に対して大きな警鐘を鳴らした判断で画期的な判決だ」と評価しました。
【センチュリー 利用実績は?】
山口県はもともと「センチュリー」を3台保有していましたが、おととし古くなった2台を処分して、新たに2090万円の新車を1台購入し、現在は「貴賓車」として2台を運用しています。
新しく購入した「センチュリー」は、外国の要人や皇族、それに県議会議長の送迎に利用されることになっていましたが、外国の要人や皇族の送迎に利用されたのは6日間のみで、ほぼ県議会議長が利用していました。
送迎に使われる車は「センチュリー」以外にも8台あり、知事や副知事は別の車を利用していました。
これについて県議会事務局は「事前の県側との話し合いで、センチュリーを議長車などとして使用できると言われたので申請しただけだ」と話しています。
【知事「判決に驚き」】
山口県の村岡知事は記者団の取材に対し、「今回の判決については正直、驚いている。単純に更新するのではなく、車種や契約方法について一から精査することが必要で、いろいろな批判があったのはおっしゃる通りだと思う。この問題が明らかになってからは100万円を超える備品を購入する際にはすべて私が精査することにした」と述べました。
その上で控訴については、弁護士とも相談した上で速やかに判断する考えを示しました。
一方、現在使っているセンチュリーは売却せず、引き続き運用していくと説明しました。