特集)ホテルゼロの観光地にビジネスチャンスを
日本最大級のカルスト台地として知られる美祢市の観光地、秋吉台のエリアに新たなスタイルの宿泊施設がオープンしました。このエリアはコロナ禍の前から観光客の減少が課題となっています。山口の観光地に新たなビジネスチャンスは生まれるのか、県内の宿泊業の新たな挑戦を取材しました。
ことし8月、美祢市の観光地、秋吉台のエリアに新たな宿泊施設がオープンしました。ドーム型のテントにバーベキューが売りの「グランピング」の施設です。豪華なキャンプを手軽に楽しめることから英語で「魅力的」を意味する「グラマラス」と「キャンピング」を掛け合わせた言葉です。
(施設の支配人 九谷直樹さん)。
「グランピングと言えばここというところは日本にはまだない。自分のノウハウを使って秋吉台にもっと人を呼びたい」。
九谷さんは山口市の湯田温泉でビジネスホテルを経営しています。メインはビジネス客ですが、観光客も呼び込む戦略をとっています。9月の宿泊プランには「山口ゆらめき回廊」と打ち出しました。九谷さんが力を入れているのは地元ならではのイベントを前面に打ち出した宿泊プラン。料理などの宿泊サービスが強みの温泉旅館などと差別化し、イベントに関心を持った新たな観光客を誘引するのが狙いです。九谷さんは部屋を売るのではなくてわざわざ山口に行くきっかけを作らないといけないと訴えます。こうした戦略の成果は売り上げに反映されています。宿泊予約サイトの集計では湯田温泉の宿泊施設の中で8月の売り上げは3位。宿泊客数はここ2年間、トップをキープ。ビジネスホテルでありながら、観光客の比率が半分ほどを占めるまでになりました。九谷さんはイベントなど地元の観光資源をうまく活用することが成功につながる鍵だと言います。
(九谷 直樹さん)。
「『これは何だ』と思わせるのがすごい大事。ローカルで観光が弱いところでも打ち出し方や見せ方を変えれば必ず集客できる」。
ビジネスホテルでの集客に手応えを感じた九谷さんは今度は秋吉台の雄大な自然と「グランピング」を組み合わせることで、互いの魅力を高め合う相乗効果を狙った戦略をとりました。このエリアは観光客の減少が課題です。代表的な観光スポットの1つ、「秋芳洞」の入場者は3年前の2019年度は約46万人と最盛期の4分の1ほどにまで減っています。そこに新型コロナが追い打ちをかけました。2年前には、エリア唯一のホテルも閉館しました。九谷さんは「グランピング」であればエリア全体の集客にもつなげられると考えています。
(九谷 直樹さん)。
「グランピングのついでに秋吉台に行ってみようとか、秋芳洞に行くついでにグランピングに泊まってみよう。しっかりと動線が引けるので周りの観光に波及効果が出る」。
9月上旬、鹿児島県から家族4人が訪れました。秋吉台を訪れるついでに施設への宿泊を決めたといいます。
(4人家族の父親)。
「鍾乳洞でも行ってみよう。せっかくだったら近くに何かないかと思って調べたら、つい最近ここがオープンしていた。せっかくなので泊まってみよう」。
県産ブランド牛のステーキや地鶏のモモ焼き、それに地元の旬の野菜を使った豪華なバーべキューから周りの木々を照らす演出まで。グランピングを楽しむ家族からは秋吉台の自然に満足の声が聞かれました。
(九谷 直樹さん)。
「今あるリソースでも全然勝負は山口県はできる。もっともっと山口県を日本全国に見てもらえるように努力をしていきたい」。
九谷さんは「全国旅行支援」にあわせてインターネットに広告を載せるなどPRを強化しています。県外の宿泊客の割合はまだ2割ほどですが、この冬から春にかけて
プロモーションをさらに強化して県外客を6割まで伸ばしたいということです。