非正規公務員の待遇改善手当 国が求める額支払う自治体17%

非正規公務員の待遇改善で新年度から新たに支給される手当についてNHKが取材したところ、山形県内で国が求める支給額を支払う方針の自治体は全体の17%にとどまっていることがわかりました。

非正規の公務員である「会計年度任用職員」は、山形県内の市町村の多いところで、全職員の半数程度を占めていて、自治体の業務に欠かせない人材となっていますが、任期が原則1年以内で昇給がないなど、正規の職員と比べて、待遇面の格差が指摘されています。

このため、待遇改善を図ろうと、新年度から全国の都道府県や自治体でボーナスにあたる「勤勉手当」が支給されることになっていて、国は正規職員と同様の条件で支給するよう通知で求めています。

これについて、NHKが山形県内の35市町村に取材したところ、正規職員と同様の条件で支給する方針と答えたのは、わずか6市町村と全体の17%にとどまっていることがわかりました。

28の市町村は同様の条件の半額以下を支給する方針で、「再雇用された職員との差をつけられない」とか「正規職員とは勤務時間や責任に違いがある」などと説明しています。

「会計年度任用職員」は非正規の公務員で、窓口での対応などにあたる一般事務職員のほか、保育士や看護師、給食の調理員など住民サービスに欠かせない業務を担っています。

総務省によりますと、去年4月1日時点で全国でおよそ66万人いて、会計年度任用職員の制度が始まった2020年から3年間でおよそ4万人増えています。

このうち、山形県庁や県内の35市町村ではおよそ8300人が働いていて、市町村では多いところで全職員の半数程度を占めるなど自治体の業務に欠かせない人材です。

しかし、待遇面では、正規の職員との格差が指摘されています。

契約は原則1年ごとになっていて、昇給はありません。

また、労働契約法には同じ職場で5年を超えて働いた場合、本人が希望すれば契約期間の定めのない雇用に切り替えることを企業に義務づけた「無期転換ルール」という制度がありますが、公務員であることからこの制度は適用されません。

さらに、会計年度任用職員のうち採用が最も多い「事務補助職員」の時給は、「900円超えから1000円以下」としている自治体などが最も多く、給与水準の低さも課題となっています。

NHKの取材に対して、「勤勉手当」を正規職員と同様の条件で支給する方針と答えたのは、山形市、酒田市、遊佐町、白鷹町、金山町、大蔵村の合わせて6つの市町村です。

このほか、回答しなかった天童市を除く28の市町村は、正規職員と同様の条件の半額以下で支給する方針と答えました。

理由については「再雇用された職員との差をつけられない」とか「正規職員とは職務内容や勤務時間、責任に違いがある」、「近隣の市町村の対応を参考にした」などと回答しています。

非正規の公務員に詳しい立教大学の上林陽治特任教授は「総務省が『勤勉手当』を正規職員と同じ条件で支払うように通知していて、国からの地方交付税によって自治体の財政負担も多く見込まれていない。それにも関わらず、自治体で『勤勉手当』の待遇に差が出ている」と述べました。

そのうえで、背景については「正規職員のOBである再任用職員の『勤勉手当』が正規職員の条件の半分程度となっているため、それを上回らないようにして組織内の秩序を保つことを優先しているのではないか」と指摘しました。

そして、会計年度任用職員は全国で女性がおよそ4分の3を占めているということで「“女性活躍”が日本全国で使命となっている中、公務員は、率先して改善しなければいけない立場にある。それにも関わらず、女性を非正規にしたまま、正規との賃金格差を放置しているのは、女性が活躍して地域で仕事をすることにつながらない。公共サービスは非正規の公務員に依存している状態で、正規とのあいだで格差を生じさせていいのか。身分で賃金を決定するのではなく、働き方に基づいて賃金を支払うことが必要だ」と述べました。