「搬送が困難な事例」発生件数の97%が村山地域 山形県

去年、県内で発生した救急患者の受け入れ先がすぐに決まらない「搬送が困難な事例」について県が分析したところ、発生件数のうちおよそ97%が山形市などを含む村山地域に集中していたことがわかりました。
県は「大きな課題だと捉えているが、医療機関で事情は異なり、特効薬がないのが現状だ。医療機関や消防と連携して解決に向けて取り組んでいきたい」と話しています。

県は、患者の搬送先が決まるまでに病院への照会が5回以上あったケースなどを「搬送が困難な事例」としていて、去年、県内では1108件発生し、過去最多を更新しました。

「搬送が困難な事例」について県が分析したところ、4つの地域別でみた場合、発生件数のうち97.4%にあたる1079件が、山形市などを含む村山地域に集中していたことがわかりました。

また、病気やけがなどの症状別では、85歳以上の高齢者や長期の寝たきりが45.2%と最も多く、次いで重篤が15.9%、大たい骨の骨折が8.4%などとなっています。

時間帯別では、平日の夜間と休日があわせて79.6%とおよそ8割を占めています。

救急患者を受け入れられなかった理由については、病気やけがなどの患者の症状に対処する設備がなかったり、人手が不足していたりするなどの「処置困難」が33.2%、手術中などの「患者対応中」が29.1%などとなっています。

「搬送が困難な事例」が村山地域に集中していたことについて、県は「大きな課題だと捉えている。当直時間帯の医師の人数が限られていたり、医師が専門外の患者を診ることができなかったり、医療機関で事情は異なるため、特効薬がないのが現状だ。医療機関や消防と連携して解決に向けて取り組んでいきたい」と話しています。

「搬送の困難な事例」が村山地域に集中している背景には、もっとも人口の多い山形市に病院や医師の数が集中している一方、ほかの自治体にある病院では当直時間の医師の人数が限られていることなどが要因として考えられます。

県全体を4つの地域でみた場合、山形市など14の市と町を含む村山地域は、県全体の人口の半分を占めていて、救急患者を24時間受け入れられる病院や100床あたりの医師の数は庄内、置賜、最上と比べてもっとも多くなっています。

しかし、病院や医師の数は、山形市などを含む「東南村山地域」に集中していて、寒河江市や河北町などを含む「西村山地域」や村山市や大石田町などを含む「北村山地域」は東南村山地域と比べて少ないのが現状です。

このため、西村山地域と北村山地域では特に平日の夜間や休日に救急患者に対応できる医師の数が限られ、ほかの患者の対応にあたっていたり、診療にあたる専門医が不在だったりして、救急患者の受け入れを断らざるを得ないケースが出ているということです。

「村山地域救急搬送改善検討会」の座長を務める県立河北病院の森野一真院長は「医師の数が足りない中、医療機関や医師を集約する考えもあるが、時間やお金がかかりすぐには解決できない。医師の専門分化も進んでいるので、どんな患者にも対応できるよう総合診療医や救急科の医師を国をあげて養成していくことが必要だ」と指摘しています。
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