山形県で初の「緊急安全確保」その時住民は

先週の記録的な大雨では警戒レベルで最も高いレベル5の「緊急安全確保」が県内で初めて6つの市と町に出されました。
限られた時間の中で住民たちは状況をどう判断し、どのような避難をしたのでしょうか。

【自宅2階に「垂直避難」した住民は】
このうち、川西町の河内眞一さん(74)は大雨になった3日午後は妹と一緒に自宅にいました。
強い雨が断続的に降り続き、午後5時ごろには自宅周辺の水かさが上がり始めたため、河内さんは家にある車2台を妹と一緒に近くの高台に避難させ、徒歩で自宅に戻ったということです。
町は午後6時すぎに「避難指示」を午後7時すぎには「緊急安全確保」を出しましたが、雨の音で防災無線からの呼びかけは聞こえませんでした。
妹のスマートフォンで受信した緊急速報用のメールは気づきましたが、家の周りに水が押し寄せていたため、河内さんは家財を2階に移動させたあと、数日分の食料と水を持って妹と一緒に自宅の2階に避難しました。
夜になると、水は家の中にも入ってきて、1階の床上はすべて水浸しになっていたということです。
午後10時ごろには消防と警察が3回ほどボートで救助に来ましたが、「家のほうが安心できる」として、2人は2階に残り一夜を明かしたということです。
河内さんは「まさか床上まで水につかるとは思っていなかった。2階に一晩いたが、ブレーカーが落ちて電気が使えなくなり、ろうそくと懐中電灯で過ごして大変だった。今回は翌朝には水が引いたが、もっと長引けば避難所に行くしかなかった」と話していました。
川西町では記録的な大雨となった今月3日、町では洪水警報が発令された正午すぎから、防災無線やエリアメール、町のホームページやSNSなどで避難の呼びかけを始めました。
午後7時すぎには町内全域に「緊急安全確保」が出され、最も多いときで町内15か所に避難所を開設したことなどの情報発信を行いました。
呼びかけは大雨の特別警報が警報に切り替わった翌日午前6時半ごろまでにあわせて18回にのぼったということです。
今回、避難対象になったのはすべての町民およそ1万4000人で、このうち避難所に避難したのは最も多いときでおよそ600人だったということです。
川西町安全安心課の担当者は「避難所への避難以外でも自宅での『垂直避難』など、それぞれの町民が身を守るための行動をしたのではないか」とした上で、「今後、町民への避難情報の発信が十分だったか検証し、携帯電話を持っていない高齢者などには無償貸与する防災無線の戸別受信機の数を増やすなど、災害時に必要な情報が行き渡るよう対応したい」と話していました。

【近くの民宿に避難した住民も】
一方、近所の住民同士が声を掛け合い、近くの民宿に避難をした地区もあります。
飯豊町の落合地区では3日の午後4時半ごろ、自治組織の班長を務める佐藤利浩さんが降り続く雨で地区の側溝を泥水が流れていることに気づきました。
「崖が崩れるおそれがある」と判断した佐藤さん、このとき、地区の住民と一緒に避難を決断します。
この地区は12人の住民のうち7人が65歳を超えているため、身の危険を感じたときには全員で一斉に避難することをあらかじめ決めていました。
佐藤さんはすぐに他の家に出向いたり、電話をかけたりして、地区の人たちに避難を呼びかけたということです。
一方、町が開設した避難所に行くと、多くの人が密集し、感染対策の面でよくないと判断し、万が一の場合、避難を相談していた町内の民宿に移動しました。
午後6時半には地区の住民全員が避難を終え、地区では住宅の裏山が崩れる被害や、道路が冠水する被害が出ましたが人的な被害はなかったということです。
佐藤さんは「早く逃げなければという一心で地区を声をかけて回りました。もしもの時の行動をふだんから話し合えていたのが結果的によかったと思います。今後は避難するかどうかもう少し早めに判断できるようにしたい」と話していました。
落合地区の住民を受け入れた民宿では、宿泊用として大部屋を男女分けて提供した上でちゅう房にあった材料を使って晩ご飯も出したということです。
民宿によりますと、8月3日夜は周辺の町の避難所がいっぱいでこれ以上の住民の受け入れができない状態になったことからこの民宿に避難した住民の食費や宿泊費は町が負担したということです。
民宿を経営する男鹿晃生さんは「何日かかるのかはわからない状況でしたが、なんとか一晩はうちの民宿で対応できました。落合地区の人とあらかじめ話をしておいたことで、町役場とのやりとりもスムーズにできたので、本当によかったと思います」と話していました。

【専門家「浸水想定されていない場所に早めに避難してほしい」】
災害時の避難行動に詳しい東北大学災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授は自宅の2階に避難する「垂直避難」について「とっさの場合、命を助ける行動になるが、川の近くに家がある場合、洪水によって家が倒壊するおそれもある。ハザードマップなどで自宅の場所を再確認し、なるべく明るい時間帯に安全な場所に移動するようにしてほしい」と話しています。
一方、自治体の指定する避難所以外への避難については「避難所があっても満員で空いていないケースもあり、民宿などの施設と事前に避難の可能性について合意ができていると望ましい。ただ避難行動が遅れると危険になるので、早めの避難を意識してほしい」と話していました。
記録的な大雨で命を守るための日頃からの備えについては「自宅でも、避難所でも、浸水が想定されていない場所に早めに避難することがベスト。ハザードマップや地図で高台など大雨でも安全な場所を平常時に改めて確認してほしい」と話していました。