有田川町で17年前発見の化石 「モササウルス」の新種と判明

和歌山県内の7200万年前の地層から見つかった化石が当時、海に生息した大型のは虫類「モササウルス」の新種とわかり、「ワカヤマソウリュウ」と名付けられました。

これは、アメリカのシンシナティ大学の小西卓哉 教育准教授などの研究グループが記者会見を開き、明らかにしました。
グループは有田川町にあるおよそ7200万年前の白亜紀後期の地層から17年前(平成18年)に見つかっていた全長6メートルのモササウルスの骨格の化石について、詳しく調査しました。
その結果、▼前脚のひれが大きく発達していることや▼背骨の形からイルカのような背びれがあった可能性があることなど、これまで発見されているモササウルスの化石にはない特徴がみられ、新種と判明しました。
モササウルスは、恐竜が繁栄していた白亜紀後期に海の生態系の頂点に君臨した大型のは虫類です。
サメのように尾びれを左右に振って泳ぎますが、今回の新種は発達した前脚のひれを使ってウミガメのように泳いでいたとみられます。
モササウルスは、日本では「ソウリュウ」と呼ばれていて、研究グループではこの化石を「ワカヤマソウリュウ」と名付けました。
17年前に化石を発見した北九州市立自然史・歴史博物館の御前明洋 学芸員は、「発掘した場所は小学生のころから化石を掘っていた山でした。新種とわかり、ふるさと和歌山の名が付けられたことはとても感慨深いです」と話していました。

【喜びの声】
有田川町で見つかっていた「モササウルス」の骨格の化石が新種と判明し、「ワカヤマソウリュウ」と名付けられたことについて、和歌山の人たちからは喜びの声が聞かれました。
60代の女性は「『ワカヤマソウリュウ』という名前も、化石の形や想像図もかっこいいです。有田川町はみかんのイメージが強いですが、化石が出るというイメージも加わって地域全体が盛り上がるとうれしいです」と話していました。
また、70代の男性は「和歌山で新種の化石が出たとわかったことで、観光客も増えて、経済効果が出たらいいなと思います」と話していました。

【「ワカヤマソウリュウ」とは】
「モササウルス」の新種の発見は国内では5例目です。
「モササウルス」は、9800万年前から6600万年前の白亜紀後期の海で、大きな頭に、鋭く発達した歯で他の生き物を食べ、生態系の頂点にいたとされる大型のは虫類です。
今回、新種と認定された「ワカヤマソウリュウ」は、平成18年2月に有田川町の山間部で、古代生物の研究をしていた和歌山県出身の御前明洋さんによって後ろ脚の骨などの化石が発掘されました。
その後、和歌山県立自然博物館とともに発掘調査が進められ、平成28年には、アジアで初めて全身のほぼすべての骨格の化石が見つかりました。
この化石について、アメリカ・シンシナティ大学の小西卓哉 准教授などの研究グループは、これまでに世界各地で見つかっているほかの「モササウルス」の化石と比較し、今回、これまでの学説を覆す新たな発見として発表しました。
「モササウルス」は、サメのように尾びれを左右に振ることで水の中を泳いでいたと考えられていますが、「ワカヤマソウリュウ」は、▼前脚のヒレが特に大きいことや、▼背中の骨が大きく筋肉が発達していたとみられることから、ウミガメのように前脚で水をかくようにして泳いでいたと考えられるということです。
また、これまでに見つかっている化石の中で唯一、背骨の一部が前に傾いている特徴があり、イルカのような背びれを持っていた可能性があるということです。
小西卓哉 准教授は、「モササウルスが多様な進化を遂げていたことを示す貴重な資料だ。この発見がモササウルスの研究をさらに進めることを期待したい」と話していました。
和歌山県立自然博物館は来年度(令和6年度)以降、特別展を開催するなどして「ワカヤマソウリュウ」の全身骨格の化石を見てもらう機会を作りたいとしています。