世界遺産 熊野古道とスペインの巡礼路「共通巡礼」5千人達成

世界遺産に登録されている2つの巡礼道、熊野古道とスペインのサンティアゴ巡礼路の双方を巡る「共通巡礼」の達成者が5000人を上回りました。
熊野古道は、世界遺産の登録から来年で20年を迎え、地元自治体では、外国人観光客などの誘致に向けて事業を進めることにしています。

熊野古道とスペインのサンティアゴ巡礼路の双方を巡る「共通巡礼」は、田辺市と、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ市の協同事業で、8年前から実施しています。
ルートは、▼熊野古道の中辺路の滝尻王子から熊野本宮大社までの38キロのルートなど、▼スペインでは、大聖堂までの最後の100キロ以上などで、それぞれの道中に設置されたスタンプを「共通巡礼手帳」に集めます。
田辺市によりますと、10月に「共通巡礼」の達成者が5000人を達成したということです。
達成者の国や地域別では、▼日本が最も多く1321人、次いで、▼オーストラリアが707人、▼アメリカが619人、▼スペインが441人などとなっています。
また、ことしに入ってから9月末までの「共通巡礼」の達成者は1000人を超え、コロナ禍前を上回るペースだということです。
熊野古道は、来年、世界遺産登録から20年を迎え、田辺市や那智勝浦町などでは、外国人観光客の誘致に向けて事業を進めることにしています。

【共通巡礼達成者は】
共通巡礼を達成した田辺市本宮町の鳥居泰治さんは、2016年にスペインのサンティアゴの巡礼路を巡り、「熊野古道との共通点を感じた」と話しています。
鳥居さんは、田辺市職員として観光情報などを発信する「熊野本宮館」で勤めたあと、57歳で早期退職し、2016年に「サンティアゴ巡礼路」を歩いたということです。
鳥居さんは、「巡礼者に『良い巡礼を』という意味のブエンカミーノと声をかける住民の温かさを感じました。1つの目的地に向かい祈り、歩く様子に熊野古道との共通点を感じました」と話していました。
また、スペインでは、歩く人の荷物を運ぶサービスなど、巡礼者を支える仕組みが整っていると感じたといいます。
鳥居さんは帰国後に、熊野古道でも訪れた人を支える仕事を担おうと、熊野本宮大社の近くに荷物を宿から宿へと運ぶ店を開きました。
新型コロナの感染拡大で、一時、利用者は落ち込みましたが、新型コロナの5類移行から半年以上がたち、現在はコロナ禍前の水準まで回復しているということです。
鳥居さんは、熊野古道が世界遺産登録から来年で20年を迎えることから、より多くの人に「共通巡礼」の魅力を知ってもらい、両方の道を歩いてほしいと話しています。
鳥居さんは、「どのような気持ちを抱いて歩くかは人それぞれですが、長い道のりを歩くと自分自身と向き合うことができます。これが巡礼の魅力だと思います。両方の道が連携しているということをいかして、ぜひ、一度歩いてみてほしい」と話していました。