新聞配達とりやめ 過疎化進む山あいの地域で相次ぐ 和歌山

県内で、過疎化が進む山あいの地域では、新聞配達の人員確保ができず配達をやめるケースが相次いでいます。

このうち、田辺市中辺路町では、ことしに入り、配達員の不足などで全国紙の配達がなくなった地区も出ています。
また、地元紙の配達を続けてきた町で唯一の新聞販売店を経営する竹中清さん(82)と婦志子さん(79)夫婦も、高齢による体力の衰えで、来月(11月)いっぱいで配達をやめることを決めています。
この販売店では、85年以上前から新聞配達を続けていて、現在、配達員7人が毎日、570部を届けていますが、都市部に比べて配達エリアが広く、すべての世帯に届けるのが難しくなっているということです。
これを受けて、この新聞社では当面、本社から社員を派遣して配達を維持することにしていますが、どれだけ続けられるかは見通しが立っていないということです。
竹中清さんは、「今までずっと張り詰めた気持ちだったので、ほっとした気持ちです。大雨や台風の日でも休まず配達し、よくやってこれたなと感じています」と話していました。
婦志子さんは、「毎日読者に届けられたのがよかったです。地域の人や読者に支えられてここまでやってこれました」と話していました。

【新聞配達を維持してほしいという声も】
田辺市中辺路町では、新聞配達を維持してほしいという声があがっています。
これまで新聞を70年以上購読してきたという田中淑副さん(89)は、全国紙の配達が郵送に切り替わったことで、これまでの購読料に加え、毎月1500円の郵送料がかかるようになったということです。
また、平日の朝刊が届くのは、昼以降になったほか、土日の新聞は月曜日の昼すぎに3日分まとめて届けられるようになりました。
田中さんは、「朝食の時間に妻と新聞を読み合うのが日課でした。それがなくなり、物足りない毎日になりました。配達がなくなるとは夢にも思っていませんでした。スマホやテレビでは味わえない良さが新聞にはあると思います。購読料が上がってもかまわないので、なんとか毎日の配達を続けてほしい」と話していました。
全国紙の購読をやめ、今は地元紙だけを購読しているという中村恒夫さん(75)は、「大手の新聞の配達がなくなるというのは、この地域にとってとても大きな出来事で、非常に残念でした。郵送料もかかるし、土日は郵送がないとなると過去の新聞をまとめて読むことになるため、やむをえず、購読をやめることにしました。毎日の新聞配達は、1人暮らしの高齢者も多い過疎地域では、住民の安否確認にもなります。地元紙の配達はできるかぎり続いてほしい」と話していました。

【新聞配達にドローン活用検討も】
去年9月に新聞の配達が廃止された日高川町の美山地区では、町が物流大手などと協力して、ことし7月からドローンを活用した物流のサービスを始めています。
現在は、ドローンで、日用品や食料品の配達が行われていますが、町は今後、新聞の配達にもドローンを活用できないか検討を進めています。