カメムシ大量発生 県全域に注意報 農家に薬剤散布など対策を

和歌山県内で、柿などの果物に被害を及ぼすカメムシが、紀の川市で平年の10倍以上に増えていることがわかり、県は、病害虫の発生に関する注意報を出して対策をとるよう呼びかけています。

和歌山県農作物病害虫防除所は、先月(8月)26日から今月5日まで紀の川市や有田川町、それにみなべ町に装置を設置し、みかんや柿などの果物の果汁を吸い被害を及ぼす「チャバネアオカメムシ」や「クサギカメムシ」などの数を調査しています。
この結果、最も多かった紀の川市では、▼「チャバネアオカメムシ」は平年のおよそ5倍にあたる1844匹、▼「クサギカメムシ」がおよそ11倍にあたる848匹に増えていることがわかりました。
また、みなべ町でも、▼「チャバネアオカメムシ」が平年のおよそ5倍にあたる8168匹、「クサギカメムシ」がおよそ4倍にあたる552匹に上るなど各地で平年を大きく上回る状況が続いています。
これを受けて県は、県内全域に病害虫の発生に関する注意報を出して、農家に対して薬剤の散布などの対策をとるよう呼びかけています。
県によりますと、猛暑が続いてカメムシの活動が活発になったとみられるということです。
県果樹園芸課は、「柿や収穫期の早い温州みかんでは、すでに被害が大きくなっている。山林の近くや強風のあとに特に多く発生するので、対策を徹底してほしい」と話していました。

【柿農家は】
かつらぎ町の柿農家では、カメムシの大量発生ですでに柿の実のおよそ3割が被害にあっていて、28日はさらなる被害を防ごうと農薬の散布を行いました。
かつらぎ町で柿農家を営む松本治郎さんの柿畑では、3種類の柿を育てていますが、このうちわせの品種の柿が最盛期を迎えています。
しかし、カメムシが大量に発生していて、出荷前の柿の実が被害にあい実の表面が黒く変色してくぼんだり、実がスポンジ状になったりする被害がすでに全体の3割ほどの柿の実に出ているということです。
このため、この柿畑ではこれ以上の被害を防ごうと28日、柿の木に農薬を散布していました。
柿農家の松本さんは「ことしは1本の柿の木全体がだめになってしまっているものもあり被害が大きいです。カメムシの対応には農薬散布を定期的にやっていくしかないと思います」と話していました。
「JA紀北かわかみ」の井上知映 営農指導員は「畑にカメムシが増えたと感じた時には、少しでも早く農薬を散布してカメムシから作物を守ってもらいたい」と話していました。

【農水省 全国的にカメムシの大量発生予想】
農林水産省によりますと、カメムシの大量発生が予想されるとして、28日までに京都府や和歌山県など全国21の道府県が注意報を出して、農作物の管理を徹底するよう呼びかけています。
一方、カメムシは都市部でも目撃が相次いでいて、「カメムシ大量発生」が検索のトレンドの上位にランクインしているほか、SNSでの投稿も相次いでいます。
このうち京都市に住む男性がSNSに投稿した動画では、公園の街灯のまわりにおびただしい数のカメムシが集まっている様子が映されています。
男性は「この公園は月に2〜3回通るが、ふだんとは違うにおいがしたので近づいてみたら、これまで見たことがないほど多くのカメムシがいて驚いた。気持ち悪かったです」と話していました。
また、27日夜、NHK大阪放送局の入り口の前をみたところ、床や天井に張り付いたカメムシを少なくとも20匹以上確認することができました。
カメムシの研究が専門の伊丹市昆虫館の、長島聖大 学芸員によりますと、ことしは杉やひのきの実などのエサが豊富で成長した個体も多く、その一部が都市部に移動し、明かりに集まる様子が目立って目撃されている可能性があると指摘しています。
そのうえで、長島さんは「カメムシは刺激を与えないかぎり、においを出さないので、部屋に入ってきた場合はつぶさないようにして、ティッシュにつつんだり、ペットボトルにいれて外に逃がすといい」と話していました。