那須町 4人遭難死亡の山で「登山届」提出を呼びかけ

今月、登山中だった男女4人が遭難して死亡した那須町の山で、警察などが19日パトロールを行い、山に入る前に、登山ルートなどを記入した「登山届」を提出するように呼びかけました。

19日は、那須連山の茶臼岳で運行しているロープウエーのふもとの駅に、警察や山岳救助隊などおよそ10人が集まり、これから山に向かう人たちにチラシを配りながら、万全の準備を整えるように呼びかけました。
具体的には、山に入る前に、自分の名前や緊急時の連絡先、それに登山ルートなどを記入した「登山届」を提出することや、この時期の山は、気温が急に下がりやすいため、いざというときの防寒具を備えておくことの重要性などを説明していました。
60代の女性は「まだ登山届を出していませんでしたが、スマホでできると聞いたのでこれから提出します」と話していました。
今月6日の遭難事故では、茶臼岳の隣の朝日岳で登山をしていた60代から70代の男女4人が死亡し、警察は、天候が急に悪化したことによる低体温症が死因とみられるとして、詳しい状況を調べています。
警察によりますと、4人の中には、「登山届」の提出が確認されていない人もいるということです。
那須塩原警察署地域課の齋藤康之課長は「登山届によって捜索の範囲を絞ることができ、発見が早くなるので、必ず提出してください」と話していました。

「登山届」とは登山をする人の氏名や、緊急時の連絡先、行き先やルート、下山の予定時刻などを記入して、地元の警察などに事前に提出する書類のことです。
多くは登山道の入り口などにあるポストに入れて提出しますが、パソコンやスマートフォンを使ってインターネットで送ることもでき、この場合は、専用の画面に必要な情報を入力するだけで、届け出が完了します。
登山者が山中で道に迷ったり、動けなくなったりするなどの遭難の通報があったとき、警察や山岳救助隊はまず、「登山届」が提出されているかを確認します。
そして、記入されていた情報をもとに捜索を行うため、遭難者のすばやい発見や救助につなげるための重要な手がかりとなります。
しかし、「登山届」の提出は国内のほとんどの地域で任意となっていて、義務づけられてはいないため、警察によりますと、県内で事前に提出する人は少ないのが現状だということです。
県警察本部によりますと、近年は新型コロナウイルスの影響もあって、屋外レジャーの人気が高まっていることなどから、去年県内で発生した山岳遭難の件数は86件、人数は94人といずれも過去最多となった一方、ほとんどのケースで「登山届」は提出されていなかったということです。