名張毒ぶどう酒事件“死刑執行行政文書開示”訴え退ける

昭和36年に三重県名張市で女性5人が殺害された「名張毒ぶどう酒事件」をめぐり無実を訴えながら89歳で病死した元死刑囚の弁護団のメンバーが、国に死刑執行に関する文書の開示を求めた裁判で、名古屋地方裁判所は「刑の執行に支障を及ぼすおそれがあるなどとして文書が存在するか明らかにせず、不開示とした国の決定は適法だ」として訴えを退けました。

63年前の昭和36年、三重県名張市の地区の懇親会で、ぶどう酒に農薬が入れられて女性5人が殺害された「名張毒ぶどう酒事件」では、死刑が確定した奥西勝元死刑囚が無実を訴え再審を求めましたが、9年前、肺炎のため89歳で死亡しました。
再審を求める弁護団のメンバーの1人は、再審請求の中で、新たな証拠がないか明らかにするため、検察が法務大臣に対し死刑執行の申し立てを行った「死刑執行上申書」などの開示を3年前に求めましたが、法務大臣は文書が存在するかどうか明らかにせずに開示しないと決定し、弁護団が裁判でこの決定を取り消すよう求めていました。
18日の判決で、名古屋地方裁判所の剱持亮裁判長は、「上申書が存在するか答えること自体が個人情報であり、死刑を執行されていない者が精神的安定を失い自殺を図ったりするなどのおそれにつながる。刑の執行に支障を及ぼすおそれがあるなどとして上申書の存在を明らかにせずに不開示とした国の決定は適法だ」として、訴えを退けました。
「名張毒ぶどう酒事件」をめぐっては、奥西元死刑囚の妹が、通算で10回目となる再審請求を行いましたが認められず、弁護団は11回目の再審請求を検討しています。

《弁護団「再審に開示重要」》
判決のあと、弁護団が名古屋市内で会見を開き、鈴木泉弁護士は、「今回の判決は不合理で納得できない。上申書に添付される書類には、これまで検察が裁判所に提出してこなかった、奥西さんに有利な証拠があると思うので、再審のためにそれらを開示させるのは非常に重要だ」と話していました。