伊勢神宮 令和15年に“遷御の儀” 式年遷宮の準備始まる

三重県伊勢市の伊勢神宮は20年に一度社殿などをつくり替える「式年遷宮」をめぐり、ご神体を新しい正殿へ移す最も重要な儀式「遷御の儀」を9年後の令和15年の秋に行うことを目指して準備を始めると発表しました。

およそ1300年前から続く伊勢神宮の伝統行事「式年遷宮」は、20年に一度、ご神体を真新しい社殿に移し替えるもので、「御聴許」と呼ばれる天皇の許可を受けて準備が始まります。
伊勢神宮の久邇朝尊大宮司は9日に記者会見を開き、8日に「御聴許」を受け取ったことを明らかにしました。
そのうえで、令和15年の秋、最も重要な儀式でご神体を新しい正殿へ移す「遷御の儀」を行うことを目指して準備を始めると発表しました。
久邇大宮司は「責任の重さと使命の重大さに身の引き締まる思いがします。国民の皆さまの深いご理解と絶大なるご奉賛を賜るようせつにお願い申し上げます」と述べました。
次の式年遷宮に向けては、中心的な社の内宮と外宮のほか、14の別宮の社殿と、およそ1600点の宝物を一新します。
前回の式年遷宮の費用は558億円にのぼりましたが、今回は、物価高や人件費の高騰で増加するとみられる一方、費用を抑える努力もするということです。

【式年遷宮とは】。
伊勢神宮の「式年遷宮」は20年に1度、社殿や宝物を新しく作り替える行事で、1300年の歴史があるとされています。
中断されたのは、戦国時代のおよそ120年だけで、太平洋戦争のあとは4年、延期されました。
式年遷宮が20年に1度行われる理由は、「木造建築である社殿の尊厳を保つため」、「宮大工などの技術を伝承するため」、「20年は人生の区切りと考えられるため」など、さまざまな説があります。
式年遷宮では、社殿などに使うご用材を運ぶ「お木曳き」や社殿のまわりに敷き詰める石を地元の人たちが運ぶ伝統行事「お白石持ち」など地元住民も参加しながら33のお祭りと行事を9年の歳月をかけて執り行います。
前回は、平成17年から行事が始まり、平成25年に社殿や鳥居など65棟の建物と宝物や装束などおよそ1600点が新調されました。
式年遷宮で最も重要な行事がご神体を新しい正殿に移す「遷御の儀」です。
中心的な社の内宮のご神体は三種の神器のひとつ「ヤタの鏡」で、儀式の日の夜、すべてのあかりが消されて雅楽が演奏される中、白い絹のとばりに覆われて神職によって新しい正殿へと移されます。
【大きな経済効果】。
前回、式年遷宮が行われた11年前、平成25年には全国から多くの参拝者が伊勢神宮を訪れました。
この年の参拝者数は内宮と外宮あわせて過去最高の1420万人あまりを記録し地元に大きな経済効果をもたらしました。

【今後の日程は・・】
9日に準備が始まった次の式年遷宮の重要なお祭りの日程は、天皇陛下の「御治定」呼ばれる指示により定められます。
式年遷宮の始まりを告げる式典は、遷宮で使うご用材の伐採作業の安全を祈る「山口祭」です。
前回の式年遷宮では、「遷御の儀」の8年前に行われ、それにのっとると今回は来年に行われます。
その1か月後、木曽の山奥で行われたのが「御杣始祭」です。
ご神体を納める器を造るヒノキを切り出す行事で、左右にならぶ2本のヒノキを選び、3方向からおのを入れる古くから伝わる技術で切り進めます。
切り出したご用材を神宮へと運ぶ「お木曳行事」は前回は「遷御の儀」の7年前から始まりました。
今回は再来年の令和8年から始まるとみられます。
また、式年遷宮では、社殿だけでなく、五十鈴川にかかる宇治橋も新しく作り替えます。
真新しい宇治橋の渡り初めを行う「宇治橋渡始式」は5年後の令和11年に行われる予定で、令和15年にご神体が移されるまでの間、およそ30の行事や祭典が行われることになります。