“生活保護取消し鈴鹿市の処分違法”車の利用目的を通院に限定

三重県鈴鹿市に住む障害がある親子が、車の利用目的を通院に限定され、車の運転記録を提出しなかったことなどを理由に生活保護を止めた市の処分は違法だとして、処分の取り消しなどを求めた裁判で、津地方裁判所は、訴えを認め、市の処分を取り消す判決を言い渡しました。

生活保護を受給していた、ともに障害がある鈴鹿市の81歳の女性と56歳の男性の親子は、車を所有する条件について、利用目的を通院に限定され、指示されていた車の運転記録を提出しなかったことなどを理由に生活保護を停止した市の処分は違法だとして、おととし10月、処分の取り消しと損害賠償を求めて津地方裁判所に訴えを起こしていました。
21日の判決で津地方裁判所の竹内浩史裁判長は、「親子は通院だけでなく買い物などに車を利用するという指示への違反はあったが、日常生活に不可欠な範囲で利用することは自立した生活を送ることに資するもので、違反の程度は軽微だ。生活保護を停止すれば、医療費などの支出が困難になることは容易に想像でき、生命の危険も生じうる。親子が被る不利益は甚大で、処分は違法だ」と指摘しました。
そのうえで、生活保護を停止する市の処分を取り消し、親子それぞれに10万円を賠償するよう命じる判決を言い渡しました。

《弁護団 “評価の高い司法判断”》
判決のあと、原告の弁護団は記者会見を開き、原告の女性(81)は、「裁判長が『おかしい』と言って訴えを認めてくれたのはすごくうれしいことだ。早く帰って、病室にいる息子に結果を伝えたい」と話していました。
また、芦葉甫弁護士は「裁判所の判断は非常に高い評価をしてよいと思う。司法判断が出て、ほっとしているというよりも、これからだと思っている。判決がきちんと機能するよう、厚労省などに働きかけをしていきたい」と話していました。

《鈴鹿の末松市長 “主張認められず残念な結果”》
判決を受けて鈴鹿市の末松則子市長は、「この判決で原告訴訟人の請求が認められ、本市の主張が認められなかったことは残念な結果であると考えております。今後について、上級省庁、代理人弁護士と協議を行い、判決の内容を精査したうえで対応してまいります」とコメントしました。