富山市の奥田交番襲撃から6年 刑事裁判は地裁で審理やり直し

富山市の交番が元自衛官に襲われ、警察官と近くの小学校にいた警備員が殺害された事件から26日で6年です。
裁判をめぐっては、最高裁判所が被告側の上告を退ける決定をし、今後、富山地方裁判所で裁判員裁判がやり直されることになっています。

6年前の26日、富山市の奥田交番に元自衛官の島津慧大被告(27)が押し入り、警部補の稲泉健一さん(当時46)をナイフで刺して殺害し、奪った拳銃で近くの小学校の校門前にいた警備員の中村信一さん(当時68)を撃って殺害しました。
島津被告は、強盗殺人などの罪に問われ、死刑が求刑されたのに対して、1審の富山地方裁判所は強盗殺人罪を適用せず、殺人と窃盗の罪で無期懲役の判決を言い渡しました。
しかし、2審の名古屋高等裁判所金沢支部は、「1審の判決には明らかな事実誤認がある。強盗殺人罪を前提として刑の重さを判断する必要がある」として、1審の判決を取り消し、審理をやり直すよう命じました。
被告側は、不服として上告していましたが、最高裁判所はことし3月に上告を退ける決定をしたため、今後、2審の判決に基づいて1審の無期懲役が取り消され、富山地裁で裁判員裁判がやり直されることになります。
また、亡くなった警備員の遺族が、事件当時の警察の通信指令課などの対応に過失があったとして県に賠償を求めている裁判では、県は争う姿勢を示していて、裁判が続いています。

《警備員の遺族の思い》
富山市の交番が元自衛官に襲われ、警察官と近くの小学校にいた警備員が殺害された事件から26日で6年となるなか、殺害された警備員、中村信一さん(当時68)の妻が報道陣の取材に応じ、いまの心境を語りました。

中村さんの60代の妻は、この6年について、「年数に関係なく、事件当時のことが脳裏によみがえることがあり、6月はつらくてしんどい。夫のことを『しんちゃん』と呼んでいた孫が、小学6年生になり、先月の運動会で『しんちゃんが見に来てくれるかな』と言っていたのがつらかった。亡くなった夫がいればと思うことが増える時期になってきた」と振り返りました。
そして今後、富山地裁で裁判員裁判がやり直され、裁判が長期化していることについては、「私も年を取ってきているので、できればあまり時間はかけてほしくないという思いもある。夫の思いが少しでも反映され、家族の心にけじめがついて、一歩を踏み出せるような裁判になってくれれば」と話しています。
その上で、被告が裁判で終始沈黙を貫き、動機などに関する証言を一切していないことについては、「被告は私たち遺族と向き合って裁判に臨んでほしい。1番ほしいのは謝罪と後悔のことばですが、私が傷つくことでも何でもいいので、とにかく自分のことばで法廷で話してほしい」と話していました。