保育士なり手不足解消 修学資金貸付条件緩和できないか検討へ

保育士のなり手不足が深刻な状況となる中、鳥取県は関係機関を集めた会議を初めて開き、経済的な理由で短期大学などへの進学が困難な学生を対象に行っている、修学資金の貸付条件を緩和できないか検討していくことになりました。

保育士の資格が取得できる鳥取短期大学の幼児教育保育学科の卒業生は、7割以上が県内の保育施設に就職していますが、この春入学した生徒は62人と、定員の半数以下にとどまるなど、保育士のなり手不足が深刻な状況となっています。
保育士のなり手不足の問題解決に向けて鳥取県は、鳥取短期大学の運営法人や保育所でつくる団体などのトップを集め、どうすれば保育士を志望してもらえるか意見交換する会議を16日に初めて開きました。
会議では、短大の運営法人の理事長が、経済的な理由で進学が困難な学生を対象にして県と国がそれぞれ制度を設け貸し付けている修学資金について、貸し付ける際の条件を緩和したり、県と国の制度を併用したりできるよう改めてほしいと要望し、県も前向きに検討していく考えを示しました。
会議のあと平井知事は「もう一度、保育士を目指す人が増える対策を考えたい。修学資金の貸付制度を見直すことで一致したので、新年度の募集に間に合うよう急いで検討したい」と述べました。

【全国の短大で定員割れ】
短期大学の定員割れは全国で相次いでいます。
文部科学省によりますと、平成5年度に(1993年度)53万人いた全国の短期大学の学生数は、昨年度(R5年度)8万6000人あまりと8割以上も減少。
さらに日本私立学校振興・共済事業団によりますと、昨年度、全国の短期大学の9割以上が定員割れになったということです。
こうしたなか、兵庫県の武庫川女子大学や、岡山県の美作大学などが来、年度から短期大学の募集を停止するなど、近隣の県にも影響は広がっています。
これについて鳥取県は18歳人口の減少や、女性の社会進出に伴って、4年制大学への進学を希望する女性が増えていることが影響しているのではないかと分析しています。
県内では鳥取短期大学の卒業生の多くが保育士として働いていることから、県は将来的な保育人材の確保に向けて短期大学など関係機関と連携し、保育の仕事に魅力を感じた生徒たちに、短期大学に進学してもらえる仕組みづくりを進めたいとしています。

【保育士不足続けば途中入所困難の可能性も】
県内の保育施設からは、今後も保育士が不足し続ければ、年度途中に入園を希望する園児の受け入れにも影響が出るのではないかと懸念する声が聞かれました。
鳥取市にある「むつみこども園」では、0歳児から5歳児まで194人の園児が通っていて、正職員の保育士26人を含む36人で対応にあたっています。
このこども園では、できるだけ手厚い保育ができるよう、国の配置基準よりもゆとりを持たせて保育士を配置しているということですが、西尾紀子園長は「もっと保育士がいればさらに保育が充実すると感じている。今後保育士が不足していくと年度途中の入所を受けられなくなる可能性がある」と話し、保育士を志望する生徒が減っていけば影響は避けられないと懸念しています。
このためこのこども園では、すべての教室にタブレット端末を導入して、子どもの日々の活動状況や園児の出欠連絡など、保護者とのやりとりを端末を通して行うことで、保育以外の勤務時間の短縮につなげたり、年間の休日を120日以上確保した上で、ほかの保育所よりも高い水準で給与を支給するなどして、人材確保につなげようとしているということです。
西尾園長は「休日数の確保や給与形態など働きやすい職場環境を整え、高校生などが進路を決める前の早い段階から学生・生徒に対して、保育士の仕事が魅力的であることを積極的に情報発信していきたい」と話していました。