トスク引継ぎ東宝企業が撤退 なぜ交渉決裂したか

県東部の9店舗すべてを閉店するJA系のスーパー「トスク」。
倉吉市の東宝企業が11日、引き継ぎを断念したと発表し、買い物環境が確保できるのか、先行きが見通せない状況となりました。
なぜ、東宝企業とJA鳥取いなばの交渉が決裂したのか。
取材でその一端が明らかになってきました。

9店舗すべてを9月末までに閉店する県東部のスーパー「トスク」。
「JA鳥取いなば」が引き継ぎ交渉を進めてきたのが、倉吉市のスーパー運営会社「東宝企業」です。
引き継ぎの対象となったのは、鳥取市・八頭町・智頭町・若桜町にある6店舗です。
交渉決裂の引き金となったのは、鳥取市中心部にある「本店」。
JAが今の建物を解体して、土地を東宝企業に売却し、新しい店舗を建設する計画でした。
東宝企業は、この本店を「基幹店舗」と位置づけ、郡部の店舗が赤字になったとしても、この本店で補っていくことを想定していました。
大きな転換点となったのが7月6日。
JA鳥取いなばが臨時の理事会で、東宝企業と進めてきた「本店」の引き継ぎ交渉を打ち切ることを決定。
翌7日に東宝企業に通知しました。
JAが理由に挙げたのが「東宝企業の交渉窓口が代理人弁護士から社長に変わったため」でした。
弁護士どうしでの交渉ができなくなり、交渉が成立する見込みがなくなったと判断したと説明しています。
これについて、東宝企業の代理人は「本店が除外される理由としてはあまりこう、すとんと落ちてくるものではない。即断即決される経営者の立場からすると、熱い気持ちも含めて、いろいろ伝えて、しっかり話をしたいという思いはあった。JAからすると、むしろちょっと警戒する感じだったのかもしれない」と話しています。
東宝企業は、JA鳥取いなばが解体工事のスケジュールや、テナントの退去にかかる費用が想定どおりにいかないことがわかり「本店の土地をより高く売れる別の活用方法を、改めて検討したのではないか」と推測しています。
東宝企業は、本店の交渉打ち切りの通知を受けた7月7日、報道機関向けの文書で「トスク本店において事業を行うことは、郡部の店舗を運営する上でも必要不可欠。JA鳥取いなばの方針転換でこれまでの準備が水泡に帰した」との考えを表明します。
これを受けてJA鳥取いなばは10日、東宝企業に文書を送付し「残った交渉も成立しない公算が極めて高い」として、交渉先を東宝企業に一本化した覚書を解消したいとする意向を示し、回答を求めました。
さらにはこの回答を待たずに、本店以外の5店舗について「東宝企業が受け継ぐ可能性も一応は残しつつ、県と相談しながら引き継ぎ先を検討する予定だ」と伝えました。
そして11日に東宝企業は、JA鳥取いなばに本店以外の5つの店舗についても「交渉を行わない」と回答し、引き継ぎに向けた交渉は決裂しました。
トスクの閉店時期が迫る中で引き継ぎ交渉は白紙となり、JA鳥取いなばは今後、新たな交渉先を探すということです。
また県は、中山間地域の買い物環境の確保へ向けて「市や町・JAとともに協議して支援策を検討したい」としています。