阿南 岩佐市長 “10万円給付 不足分は基金で賄う方針”

7日、初登庁した阿南市の岩佐義弘市長は選挙公約に掲げた全世帯への10万円給付について国の事業費を活用するとともに不足する分は市の貯金にあたる基金で賄う方針を示しました。

阿南市の岩佐市長は11月の市長選挙で現職を抑えて初当選し、任期初日のきょう、市役所に初登庁して多くの職員に迎えられました。

就任式ではおよそ70人の職員に訓示を行い「コロナ禍から続く物価高騰で市民生活は大変苦しい。選挙の公約として出した市民生活の今を守ることを進めて、未来を作っていきたい」と述べ、公約の実行を改めて強調しました。

その後会見に臨み、選挙公約に掲げた、物価高騰対策として市内の全世帯に10万円、18歳未満の子どもに追加で3万円を現金給付する事業の財源について方針を示しました。

それによりますと住民税の非課税世帯などに7万円を給付する国の事業費を活用するとともに不足する分を市の貯金にあたる財政調整基金などで賄うということです。

基金を取り崩すことについて、岩佐市長は、「市から出さなければいけない部分を差し引いたとしても最低限残さなければいけない基金は確保できる」と述べた上で、市議会で議論を進めていく必要があるという考えを示しました。

現金給付にかかる事業費や取り崩す基金の金額については今月中に開会する市議会の所信表明で明らかにすることにしています。

【一律給付公約で当選した事例は全国でも】
市長選挙で一律給付を公約に掲げて当選した事例は全国でも見られ、多額の費用をまかなえるのかが注目されてきました。

愛知県岡崎市では3年前、全市民に一律5万円を給付することを公約に掲げた候補者が初当選しました。

給付にかかる費用は195億円余りにのぼり、当選した市長は、市の貯金にあたる財政調整基金81億円余りを全額取り崩すなどしてまかなう方針を示しましたが、市議会で反対多数で否決されています。

また、香川県丸亀市では全市民に一律10万円の給付を公約に掲げて初当選した市長がその後、財源不足を理由に5万円に減額する方針を示し、最終的には3万円に減額して給付しました。

兵庫県丹波市では全市民に一律5万円の給付を公約に掲げて初当選した市長が財源不足から2万円に減額した上で、商品券を配る案に変更しましたが、市議会が否決。

その後、丹波市では収入が減った世帯などに限定して1人2万円分の商品券を配布することになりました。

【財政調整基金とは】
岩佐市長が、一部を取り崩す方針を示した財政調整基金は、市の貯金にあたり、阿南市の条例では、取り崩す条件として▼税金や交付金などの歳入が減少したり、公共施設の建設などで歳出が増えたりして財源が不足したときや、▼災害が発生したときなどと定められています。

市の財政調整基金は昨年度末時点でおよそ101億円5500万円で直近では令和2年度に新型コロナの影響で税収が減った際に一般会計の総額で6億5000万円を取り崩しています。

今回、岩佐市長が公約に掲げた全世帯に10万円、18歳未満の子どもに追加で3万円の給付は、ことし10月末時点の阿南市の世帯数3万1340と18歳未満の子ども9788人で計算すると給付金額の合計は34億円あまりにのぼります。

岩佐市長が最終的にいくら取り崩すのかは現時点では明らかになっていませんが、市の貯金である基金を物価高騰対策のための給付にあてることについて地方自治に詳しい徳島大学総合科学部の小田切康彦准教授は、「(基金は)基本的には災害や経済事情によって収入が足りなくなった場合に補てんする趣旨で作られることが多く、その意味からすると物価対策で住民に給付をすることが本当にやむを得ない事情なのかがまず問われることになると思う。阿南市の持続的な財政を考えた上で今回の給付がいるかどうかということについては市民としてきちんと考えるべきだと思う」と話していました。