宿泊客回復も人手不足 ホテルは1人2役でサービス維持

【7月オープンのホテル スタッフ足りず】
観光需要の回復を見据えて、徳島市のシンボルである眉山の山頂近くでは、ことし7月、新たにホテルがオープンしました。

元は昭和48年に開業した「かんぽの宿」で、4年前に閉館しましたが、県内や兵庫県などでホテルを展開する会社がコロナ禍後の観光需要の回復を見据えて買い取り、再開しました。

今後は、露天風呂付きの大浴場や食堂も内装などをリニューアルして、来年、本格的に営業を始める予定です。

一方、本格営業には、清掃や食事などのスタッフが5人ほど足りない見込みで、いまも募集を続けています。

今後は、▼外国人の雇用や▼時給の引き上げなども検討しているということです。



【1人2役でサービス維持も】
JR徳島駅近くのホテルでは、求人を出しても応募が少ないため、本来、別々のスタッフが担当する業務を兼務してサービスを維持しています。

入社8年目の久米川巨樹さんは、ホテルの宴会場を担当し、料理の配膳やスタッフの配置、宴会前の備品の最終チェックを行うリーダーを務めています。

その一方で、ソムリエの資格を持ち、以前、ホテルのバーテンダーも務めていたことから、人手不足が深刻になったコロナ禍から、バーテンダーも兼務しています。

宴会場では、大勢のスタッフをまとめ上げて大規模なパーティーなどを取りしきるノウハウが必要な一方、バーテンダーは、お酒の専門的な知識や接客の技術が求められ、本来、別々のスタッフが担当します。

しかし、このホテルでは、久米川さんのほかにも、レストランのスタッフがバーテンダーを兼務するなどして担当の枠を超えた1人2役でサービスを維持しています。

久米川さんは、「宴会では統率のとれたサービスが、バーでは1人1人に寄りそうことが大事なので、気持ちの切り替えを大切にしている。最初は戸惑いもあったが、マルチタスク化を進めているので、自分の体験を部下に教えていきたい」と話していました。

ホテルは、人手不足の長期化に備え、待遇面などでスタッフが働きやすい体制を検討していきたいとしています。

JRホテルクレメント徳島総支配人室の木内利香室長は「人員が不足しているが、サービスレベルを落とすことは考えていないので、2足のわらじで働いている職員もいる。現場がつらい思いをしているので、応募を増やすためにワークライフバランスや賃上げなどを検討していきたい」と話していました。



【専門家「待遇改善を」】
県内の宿泊業界の人手不足の現状について、民間のシンクタンク徳島経済研究所の青木伸太郎上席研究員は「ホテルの清掃業務や調理部門などで人手が少ない。休業日を設けないとシフトが組めないので、稼働率を上げられない状況だ。以前も人手不足だったが、コロナ禍で離職が進み、その傾向が顕著になった。ほかの業界に移った人が戻って来ず、回復には時間がかかる」と指摘しています。

その上で人材の確保に向けては、「生活と仕事のバランスを取れる労働環境にしたり、賃金をほかの業界と遜色ない水準にしたりして、待遇面でのメリットを提供する必要がある。そのためには、客の満足度を高め、施設の収益性を高めるための投資を行う必要がある」と指摘しています。