徳島市長リコール請求の署名偽造などの疑いで11人書類送検

徳島市の内藤市長のリコール・解職請求をめぐる問題で、死亡した人の名前を書くなどして署名を偽造したなどとして、署名活動に関わった男女11人が地方自治法違反の疑いで書類送検されたことが捜査関係者への取材でわかりました。
一方、警察は「組織的な不正はなかった」と判断したとみられ、起訴を求めず判断を検察に任せる意見を付けたということです。

書類送検されたのは、徳島市の内藤市長のリコールを目指す市民団体の署名活動に関わった30代から90代の男女11人です。

捜査関係者によりますと、11人は、去年3月に署名簿が提出されたリコールの活動について、署名集めを担当したり、署名を依頼されたりしましたが、その際、すでに死亡した人や、自分の家族の名前を書くなどして8人分の署名を偽造するなどしたとして地方自治法違反の疑いがもたれています。

内藤市長のリコールをめぐっては、市民団体が7万1551人分の署名を提出しましたが、有効な署名は6万6398人分で、本請求に必要な数を満たしませんでした。

これについて警察は、一部の署名が偽造された疑いがあるとして、署名簿を押収し、市の選挙管理委員会の刑事告発を受けて捜査を進めていました。

その結果、亡くなった人の名前を含む8人分の署名の偽造などに関わった疑いがある人をみつけ、一部は「頼まれたから書いた」とか「署名が多い方がいいと思った」などと話しているということです。

一方、警察は「組織的な不正はなかった」と判断したとみられ、起訴を求めず、判断を検察に任せる意見を付けたということです。

【これまでの経緯】
3年前、全国で最年少の女性市長として当選した徳島市の内藤市長に対するリコール・解職請求の署名集めは、
▼市長給与の50%減額の中止や
▼阿波おどりの運営方法など
市長の市政運営に反対する市民団体が行いました。

去年1月から1か月間にわたり、7万1551人分の署名を集め、去年3月、徳島市の選挙管理委員会に提出。
リコールの本請求には有権者の3分の1にあたる7万660人分以上の署名が必要でしたが、審査の結果、無効な署名は5000あまりあり有効な署名は6万6398人分と必要な数を満たしていませんでした。
市民団体は直後に署名を取り下げ、署名簿の返還を求めたのに対し、内藤市長は同一筆跡の署名など偽造が疑われるものがあると主張するなか、警察が選挙管理委員会に入り、地方自治法違反の疑いで署名簿を押収。
去年5月には選挙管理委員会がすでに亡くなった7人分の署名が含まれていたとして刑事告発していました。

警察の捜査では、亡くなった人を含む10人分の偽造などを調べ、このうち8人分について関わった疑いがある人たちを
みつけたということです。

書類送検されたのは、署名集めを担当したり、署名を依頼されたりしていた男女11人で、
▼知り合いに死亡した家族の名前を、書くよう依頼したり、
▼自分の家族の名前を勝手に署名したりしていたほか、
なかには
▼リコールと違う名目で市民に名前を書かせたりしていたケースもあったということです。

【署名集めを行った市民団体の代表は】
リコール・解職請求の署名集めを行った市民団体の久次米尚武代表は「違反行為をしてはいけないとずっと言ってきた。 防ぎようがないことだが、あってはならないことで、非常に残念だ」と述べました。

【市長コメント】
徳島市の内藤市長は「今後、検察において適切に判断していただけるものと考えています」とコメントしています。

【専門家は】
総務省は去年12月、不正な署名集めを防ぐため、署名簿の様式について、
▽誰が署名を集めたのかを明確にするため、署名を集めた人の名前を記載する欄を設けたほか、
▽署名の偽造について罰則があることを明記するよう変更しました。

徳島市のリコール署名の問題について地方自治法に詳しい
専修大学の白藤博行名誉教授は「組織的に行ったわけではないというが、1つの署名が徳島市のこれからを決めるという
ことへの徹底が足りなかったのではないか」と指摘しました。

一方、白藤名誉教授は不正防止のために、これ以上の厳罰化が進むことについては「こういう事件が重なり、より罰則を重くしたり、書式を難しくしたりしてますます厳格化することが直接請求制度は難しく、住民投票は面倒でややこしいものだとなれば社会にとってマイナスだ。不正がないよう署名を集める受任者が自分でチェックするのは当たり前だが、もう1度、責任者が自主的に点検するなど未然に防ぐ対策が欠かせない」と述べました。