免許返納した高齢者に 電動小型車の講習会

高齢ドライバーによる交通事故が相次ぐ中、免許を返納した人も利用できる電気で動く小型車「電動モビリティ−」の講習会が先週、徳島市で開かれました。

電動車いすや電動アシスト自転車などの「電動モビリティ−」と呼ばれる小型車は運転免許が不要で比較的、操作も簡単なことから、免許を返納した高齢者を中心に買い物や通院などの移動手段として利用が広がっています。

先週、警察や販売会社が徳島市の自動車教習所で電動モビリティーを体験できる講習会を開き、希望した60代から80代の25人が参加しました。

はじめに参加者は、最高速度が時速6キロ以下の電動車いすは歩道での走行が可能で、右側を通行することなど注意点の説明を受けました。

このあと、指導を受けながら教習所のコースを操作して回り、電動車いすに乗った人はレバーを握って発進したりダイヤルで速度を調整したりして傾斜のある坂道もスムーズにのぼっていました。

運転免許を返納し、電動車いすを体験した75歳の男性は「初めて乗ったが操作が簡単でよかった。今は自転車で移動できているが将来、歩くのが不自由になり必要になったら使ってみたい」と話していました。

徳島中央警察署の泉和利交通課長代理は「車以外にも移動手段があることを知ってもらい、車の運転に不安を感じる高齢者が免許を自主返納するきっかけにしてほしい」と話していました。

【進まぬ免許返納】
県内では高齢ドライバーによる交通事故が相次ぎ、ことしは先月末までに起きた550件のうち、およそ4割を占めています。

事故全体に占める割合は近年、増える傾向にあり、先週も小松島市の県道で90代の男性が運転していた車が住宅の倉庫に突っ込み、男性と助手席の女性の合わせて2人がけがをしました。

一方、運転免許の返納は思うように進んでいません。

東京 池袋で高齢ドライバーの車が暴走し、母親と幼い娘が死亡した事故があった2019年には県内で過去最多の3798人が返納しました。

しかし、その後はコロナ禍で外出の機会が減ったこともあって減少に転じ、去年は2285人にとどまっています。

【専門家は】
高齢者の車の利用状況を調査している徳島文理大学保健福祉学部の平島賢一教授は、電動モビリティーについて「移動手段として利用することで外出の頻度が増えたり、友人と交流ができたりと生活の質が上がり、健康の増進につながる」と評価しています。

そのうえで、高齢者だけでなく医療従事者の間でも電動モビリティーの安全性や乗り心地について広く知られていないのが課題だと指摘しました。

平島教授は「高齢者に勧める立場の医療従事者にも乗ってもらい、どのような乗り物なのかを知ってもらえるよう電動モビリティーを知る機会を増やすべきだ」と話していました。